NoName

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3/15/2026, 2:54:27 AM

安らかな瞳

「ユウキーー。」
次は移動教室だと言うのに、先程の授業からぐーすか眠り続けている親友に声をかける。
「起きろー、お前、次移動だぞ。」
ピクリともしないユウキにため息をつきそうになる。
どうして学校の教室というプライバシーの欠片もない場所で、無防備な寝姿を晒すことができるのか。
部活三昧だというのに、授業中に勉強せずにこいつは大丈夫なのか?
俺には理解できそうにない。
顔をまじまじと見てみれば、こいつはそれなりの容姿を持っているのに、なぜモテないのだろう。
ま、それも、こいつの普段の行いだろうな。
「……お前、次理科だぞ。」
「……ぁ……?」
「はよ。〇〇先生に怒られる前に行くぞ。」
「、ぉはよ……、ハルト?」
〇〇先生は面白くいい先生だが、遅刻には厳しく怒るとめっちゃ怖いとこいつも恐れていたはずだ。
重たそうにこじ開けられた寝ぼけ眼が向けられる。
その瞳は、太陽の光を受けて煌めいていた。
……普段からこんだけ静かならモテるのに、勿体ねぇ。

3/14/2026, 3:14:46 AM

ずっと隣で ( 死ネタ注意 )

『お母さん。』
今日も私は、返事の無い母に声をかける。
『お母さん、ほら見て。桜が綺麗だよ。窓のそばの桜の木。』
例年より早く、それであって美しく立派に咲き誇る桜の花。
お母さんは植物を育てることが好きで、庭のある一軒家に引っ越したのもそれが理由だ。
特に桜は、毎年のように私や父を連れて、少し離れた大きな公園までお花見に行くくらい好きだった。
でも、もう、一緒にお花見、できないな……
静まり返ったこの部屋に、コンコンコン、とノックの音が響く。
「……母さん、…久しぶりに、お花見に行かないか。ハナも一緒に、3人で。」
「…………」
「……今日は、ハナの20歳の誕生日だろう? ケーキも買って、いつもの場所でお祝いしよう。」
「…………ごめんなさい。……まだ、怖いの、あの場所が。」
「……母さんがいつまでも暗い顔してたら、ハナも悲しむぞ?」
「怖くたっていい、少し近づいてみるだけでもいい。」
「……5年、経ったんだ。……少しずつでも、前に進まないか、?」
「……そうね、……少し、頑張ってみるわ。」
「ありがとう…。」
そう言って抱き合った両親の目には涙が浮かんでいた。
私もそこに混じりたいけれど、残念ながら私はもういないから。
ねえ、お母さん。
私を守れなかったって、自分を責めないで。
確かに結果はそうかも知れないけど、自分の命を顧みずに守ろうとしてくれたよね。
ありがとう、大好きだよ。
母がやっと前を向けそうで安心した頃、私は春の昼間に溶けていった。

3/12/2026, 6:53:10 AM

平穏な日常

「お前、進路調査何書いた?」
「とりあえず近くの大学。やりたいことねーんだよなー。」
“お前”こと俺・西原ユウキは、この春高校2年生になったばかりの男子高校生である。
いつもは部活に明け暮れている時間だが、入学式である今日は休みとなっていたため、親友である東野ハルトと帰路を並んで歩いていた。
「ハルトは?」
「まだ迷ってる。親が大学行けってうるせーんだけど、俺は就職したいし。」
「まじ? ……そーなん。」
「おー。」
就職したい、ということは、もうハルトの将来像はハルトの中にある、ということなのだろうか。
自分の将来なんて、高校に合格してからろくに考えたことがない。
進路調査は適当にやり過ごしてきた。
すぐそばに居ると思っていた俺とハルトの間には、気付かないうちに大きな距離ができていたみたいだ。
希望の就職先や業種はあるのかとか、聞いてみたかったけど聞きたくなくて、結局聞けなかった。