誇らしさ 少々ギスギス
「わたしは誰よりも優れている!自他共に認める天才とはこのことかしらね!」
「嫉妬の視線ってたまらないわよ。ああ、あなたは感じたことがないから分からないかしらね。可哀想に」
「優秀な人材って参っちゃうわね!どこに行っても必要とされてしまうのだもの!」
「誰にでも、何にでもなれるのよ、この能力。どんなに突飛した才能を持っていたとしてもわたしの力の前では霞むわね、ふふ」
「あら、あなたもわたしが羨ましい?勇利さん」
「虚栄心?」
「っ、なんですって?聞こえなかったわ」
「その能力から考えて、ちっぽけな自分を誇張させていたいのかと思ったのだけれど、」
「それ以上口を開きなさい。喉を潰すから」
「あなた、結構卑屈だし、臆病よね。特に虚栄心は弱い自分を隠すためでしょう。図星?綺麗な顔が引き攣っているわよ」
「……博士の言いつけがなければ存在を消すつもりだったわ。博士に感謝したほうがいいわよ」
「あなたに誇りはないようね。どの言動においても」
夜の海 雑談
「夜の海、綺麗だよね」
「うおマジでビビった」
「やったー」
「なんか用?」
「俺このあたり住んでるんだよ。知らなかった?」
「知らなかった」
「だからパトロールも兼ねてここに来たりもしてるんだ。そっちは?」
「食い過ぎで寝れなくなった」
「珍しいじゃん。いつもは満腹になることすら叶わないのに」
「消費期限?が切れたやつを死ぬほど食わせられた」
「じゃあ煙霧かな?アイツ食品ロスに厳しいもんねー」
「そうそう」
「海好き?」
「普通。貝は美味いと思う」
「普通か〜せっかく海漓って名前なんだから好きになってもいいんじゃない?」
「そう?」
「そそ。……眠れないときとかさ、たまにでいいからここに来てくれない?俺そっちに行けないことが多いし、結構寂しいんだよね」
「いいよ。暇なとき行く」
「ありがと。たまに雨降ってるときあると思うけど、その時は俺の家で話そうぜ」
「おーけー……あ、お迎え来た」
「おっ、帰る?」
「今日は帰る。またな」
「おう、またなー」
「よう」
「あ、昨日の今日で来たんだ。なんか面白いことでもあった?」
「いや?今日も普通だった」
「あれ?じゃあなんでだ?」
「昨日の話の続き。しにきた」
「マジー?嬉しいんだが」
「遠出の許可も取ってきた」
「マジ!?準備万端じゃーん。じゃあ俺ん家行ってサシで話しますか」
「おーけー。家遠い?」
「全然。3分くらい」
「じゃあ歩いていく」
「見てこれ。さっき見つけた夜の海の浜辺にいた奴。海漓にあげる」
「痛。このカニ指挟んできたんだけど」
「じゃあそいつはカニ鍋にでもするか。小さいからじゃんけんだな」
「俺が食う」
「じゃんけんだって。勝った方が食おうぜ」
「ヤバい指取れそうマジで。早く行こう」
「ウケる。取れなきゃいいね」
「いててて……」
自転車(?)に乗って ギャグ
「…………なにそれ」
「杢ちゃん行くぜ、あと7分で予鈴だ。高校遅刻しちまう」
「お姉ちゃん?質問に答えて?なにそれ」
「自転車だけど?」
「どっからどう見てもバイクだよね」
「自転車だけど?というか四の五の言ってられんよ。母さんの借りるしか遅刻しない方法はないんだ」
「退学になりたいの?」
「まあね、そうなっても私は構わない。覚悟とは暗闇の荒野に進むべき道を切り開く」
「パクリだよね?確実にその台詞」
「最後まで言わせてくれや」
「お願いだからバイクはやめて。シンプルにバイクは全面校則違反なんだよ」
「いつか学校は壊したいと思っていたんだ。往年の夢が叶うなんて素晴らしいと思わないか」
「わたし走っていくからね」
「嗚呼、」
遅刻して案の定姉へと飛ばされている怒声をわたしは聞いた。バイクは流石に持ってこなかったらしい。
……一応心配はしているので、落ち込んでいないか、また反省文の内容は大丈夫だったか聞いた。
「こんなんでへこたれない。反省文は丁寧な文法で静かに喧嘩を売れる文を書けるかどうかのギリギリの勝負してた」
多分……いやなんでもない……
とりあえずしばらく関わらないようにしようと心に誓った。
心の健康
「ただいまー」
「おかえ……兄さん、今日も怪我してる」
「マジで階段で五段くらい上から転がっただけだから大丈夫ー。澪和は?学校楽しかったかー?」
「普通」
「普通が一番。よかったよかった」
兄は楽観的だ。不運がつきまとっているかのように、ほぼ毎日体のどこかしらに絆創膏やら包帯やらがある。
「痛くないの」
酷い様子のときもあるため、月に一回くらいはこの質問をしなければならない。
「痛いは痛いけどなーまあしょうがないって感じ」
そう言っているとき顔は大体ヘラヘラしている。しかも本心からしょうがないと思っているようで、私は何も言えなくなる。
嫌なんだよな。兄さんはただ優しく健やかに生きているだけなのに運だけが味方をしないだなんて。
モヤモヤする。不平等だと思う。神様はつい最近までいると思っていたけれど、最近は信じられなくなってきた。
兄さんは優しいから全てを許してしまう。だから私は許さない。
私だけのうのうと生きているなんて嫌だ。でも、兄さんは元気に過ごしてる澪和が大好きだって言ってくれる。
兄さんが言っているのは外ヅラだよね。体調を崩していそうになきゃ大丈夫なはず。兄さんは体の不調。だから、私には心の不調を。
やっぱり兄妹こうでなきゃ。同じ不調の状態でいればもっと思考回路が把握できるはずだよね。
「れいか〜?考え事?偉いなあ本当に。俺も考えなしで行動しないよう気を付けなきゃな〜」
君の奏でる音楽
それがわたしを生き生きとさせる。
大会優勝という目標を掲げ、切磋琢磨した親友。
最高に気分が高揚する。自然と笑みがこぼれる。
今日までやってきて本当によかった。
それがわたしを殺すんだよ。知らなかったよね。
今日それを教えてあげらあ。わたしの親友。
アンタだけ笑って生きさせはしねえから。
今日を忘れられない日にしてあげる。