8/22/2024, 5:24:08 AM
鳥のように
母の激昂した声が頭にガンガンと鳴り響く。
羽が鳥かごを叩く音が脳みそを現実に繋ぎ止める。
心臓が早鐘を打つ。ぽたりと落ちたのは涙か、脂汗か。
もう限界だった。
無我夢中に投げられた包丁を手にし、獣のように変わり果てた母の腹を刺す。
ぶつりと皮膚を破った感覚のあと、スッと勢いと共に鈍色が飲み込まれていく。
気づけば母は倒れていた。
自分の荒くなった息遣いと、鳥籠がはねる金属の音が時間が流れていることを実感させる。
ずっと望んでいたことは、案外呆気なかった。
「シネ!!コロス!!」
母が言い損ねた遺言を喋る鳥。
僕もこの鳥のように、冷たい籠の中で彼女の血を巡らせ生きるんだろう。
目を落とした先の僕の腕は、目の前の鳥と同じ色をしていた。
8/20/2024, 4:42:58 AM
空模様
昼下がりの公園
今日は夏を象徴するような青に大きな白を散りばめた空模様だ。
君は、照りつける太陽にそっくりな笑みを浮かべこちらを見る。
取り繕う僕と、包み隠さない君の素直さ。
きっと君は日焼けなんて気にしていない。帽子だって君の好きな黒。
カラッとした笑顔で前へ向き直る。
何がそんなに楽しいんだろうか。
満足なんだろうか。
無邪気でいられるのか。
僕はじんわりと熱い鎖を掴んでいた手を緩め、無意識のうちに作業とも化していた足を止める。
風は穏やかになり、僕を誤魔化していた疾走感は徐々に失われていく。
心臓が胸を打ち、汗が噴きだし、肌がじとっとしていくのを感じる。この感覚が、僕は嫌いだ。
「気持ちいいな。」なんて。君は何も変わってない。
木陰にいる僕の心はずっと湿って、君へじとっと縋っている。
まだ君は前へ前へと漕いだまま、汗に気づかない。