鳥のように
母の激昂した声が頭にガンガンと鳴り響く。
羽が鳥かごを叩く音が脳みそを現実に繋ぎ止める。
心臓が早鐘を打つ。ぽたりと落ちたのは涙か、脂汗か。
もう限界だった。
無我夢中に投げられた包丁を手にし、獣のように変わり果てた母の腹を刺す。
ぶつりと皮膚を破った感覚のあと、スッと勢いと共に鈍色が飲み込まれていく。
気づけば母は倒れていた。
自分の荒くなった息遣いと、鳥籠がはねる金属の音が時間が流れていることを実感させる。
ずっと望んでいたことは、案外呆気なかった。
「シネ!!コロス!!」
母が言い損ねた遺言を喋る鳥。
僕もこの鳥のように、冷たい籠の中で彼女の血を巡らせ生きるんだろう。
目を落とした先の僕の腕は、目の前の鳥と同じ色をしていた。
8/22/2024, 5:24:08 AM