Saco

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2/6/2025, 10:20:14 AM

静かな夜明け

しんしんと冷たい冬の風が肌を刺す

今日の気温も一桁代 そんなまだ暗い
だけれども確実に夜明けに向かっている
空を見上げて 駅のホームで朝の電車を
待っている。

朝の最初の電車は、まだ人も疎らで 
静かな清涼な空気の中朝の冬の空気から
閉じ込めて守る様に暖房の暖かい暖気が
体を温める。
会社に向かうこの道中が私が唯一
一人になれる時間
冬の静かな夜明けの中で私の心も
太陽が昇る夜明けを待つ様に徐々に
清浄になって行く。

2/6/2025, 4:10:55 AM

瞳をとじての続き

heart to heart

(胸がドキドキ.... する....)シズクは、
此処 数ヶ月 ずっとベッドの上で
布団に包まっていた。

熱は、下がったが ハイネに会うのが
恥ずかしくてバインダー局の事務局に
行けないでいた。

(うう~....)気を抜くと ハイネにキスされた光景が浮かんでしまう....

ハイネの唇の熱 柔らかさ その余韻や
感触が頭の中で蘇ってしまい そうすると
また顔に熱が上がって まっ赤になってしまう

でもいつまでも寝ていたら皆に心配を
掛けてしまう

ハイネも心配してるかも.....
あの後ハイネに何も言わず寮に帰ってしまったので もしかしてハイネを避けてると
思われてしまうかもしれない
無視してると思われたら嫌われてしまうかも.... そんな考えが過りシズクは、
首を振る (そんなの....嫌だ....ハイネに
嫌われたくない.....)

いつの間に そんな風に思う様になったん
だろう.... 前だったら自分なんて
嫌われても仕方ないと思って諦めて
いたのに....

(とにかく.....ハイネに会ったらいつも通り
おはようって挨拶するんだ....)

そう決意したシズクは、心の中でハイネに
会った時の為に挨拶の練習をするのだった




一方その頃ハイネもまたバインダー局の
事務局の中で さっきからソファーに
蹲り一人で自問自答していた。

(俺って奴は、嫉妬に狂ってあんな事するとか.... どんだけ器小さいんだろう俺....
馬鹿....馬鹿.... 俺の馬鹿....)

これがきっかけでシズクに嫌われてしまったらどうしよう.... やっぱり無理矢理だったかなあ.... ちゃんとシズクに了承を
取ってからするべきだったかも....

と そんな事をミーナとナイトに相談した
所....「いやいや わざわざ 今から貴方に
キスして良いですかとか聞かないよ
そんな事言ったら逆にやりづらい」

「それにされる方も返答に困るわよ
それより あんた キスした後シズクを
置いて逃げたってどう言う事よ
ちゃんとフォローしなきゃ駄目じゃない!」


(そうだった.... 俺あの後シズクを置いて
逃げたんだ....) あんな子供じみた捨て台詞
だけ残して..... 

(ああ.....どうしていつも俺は、格好悪い事
ばっかりしちゃうんだろう.....
シズクに会ったら俺どうしてたら良いん
だろう.....)
とりあえずハイネは、シズクに会ったら
緊張せずに話せる様に心の中で
シミュレーションをするのだった。



ひょっこりとシズクは、バインダー局の
部屋の中を覗く(誰も居ないかなあ....)

シズクは、おずおずと部屋の中に入る。
すると後ろから....「シズク!大丈夫?
熱は、下がったの?」とミーナの心配そうな声が聞こえシズクは、振り向く

「ミーナ....うん.....大丈夫だよ!
心配してくれてありがとう」とシズクは、
ミーナにお礼を言うがなんと無く
落ち着かなかった。

それを察したミーナは....
「ハイネなら別の部屋に居るわよ呼んで
来ようか?」

シズクは、ミーナのせっかくの気遣いに
まだ心の準備が出来ず思わず
「ううん 大丈夫....だよ」と 咄嗟に
断ってしまう....

(どうしよう~挨拶の練習したのに~
ハイネの名前が出ると どうしても緊張してしまう~)シズクは、自分が情け無くなって気付けば涙が流れていた。

それを見たミーナが「どうしたの?シズク」と声を掛けてくれるのでシズクは、
混乱した気持ちが重なり涙腺が決壊して
思わずミーナに泣きついた。

「どうしよ~ミーナ ふぇっ うっ うっ
私....ハイネに嫌われちゃったらどうしよう~ うわああん~」とシズクは、ミーナの
腕の中で泣きじゃくったのだった


そうしてシズクは、ミーナに事情を伝えた
(と言ってもミーナは、ある程度ハイネに
事情を聞いたので本当は、知っているのだが.....) そうしてシズクがある程度落ち着いた所でミーナは、シズクに声を掛ける

「シズクは、ハイネにキスされて嫌だったの?」とミーナの問いかけにシズクは、
鼻を鳴らしながら首を振る。

「嫌....じゃ....無い....嬉しかった....
でも.....何か.....恥ずかしいの....」

シズクの目からまた涙が零れる
「ハイネと上手に喋れる自信が無い
本当は、ひっく っく 前みたいに....
普通に....喋べりたいのに....」

シズクは、また涙が止まらなくなる
そんなシズクの手をミーナは、優しく握り
「シズク..... シズクは、今 相反する
矛盾した気持ちを抱えて混乱してるだけよ
大丈夫 ハイネは、そんな事でシズクを嫌ったりしないわ」寧ろハイネがシズクに
片思いしてる時から二人を見ている
ミーナから言わせればハイネがシズクを
嫌う事は、不可能と言っても良い

そんな事は、あり得ないとナイトだって
にこにこ顔で言うだろう

ハイネがどれだけ長くシズクへの想いを
拗らせて居たか当のシズクだけが知らないのだ

(もう~これと言うのもハイネが意地を
張って自分の気持ちを中々口にしないから)
とミーナは、心の中でハイネに抗議する

しかしシズクには、にっこり笑って
ミーナは、言う

「だから大丈夫 今のシズクのありのままの気持ちを言えば良いの それでシズクの
事を嫌う様な男なら私があいつをぶん殴ってやるわ!」とミーナがハイネに対して
物騒な事を言うのでシズクは、涙を引っ込めて 目を丸くする。

そうして全力でシズクは、首を振る

「ミーナ.....ハイネの事 殴っちゃ駄目...」

そうしてシズクは、決意しハイネが居る
部屋に向かう



ハイネは、はぁっとため息を吐いた

シズクが顔をみせなくなって数ヶ月
自分がまいた種とは、言えそろそろハイネの心は、限界だった。

本当は、すごくシズクに会いたい
だけど顔を合わせたらなんて言えば良いんだろう..... まずは、キスをした事を
謝って それから..... それからどうすれば

さっきからシミュレーションを何回も
頭の中で繰り返しそれでも上手く喋れるか
自信が無かった 意地っ張りな自分の
性分がまた邪魔をしそうで怖かった
シズクが離れて行って また戻って来た時は、嬉しくて 嬉しさの余り素直に自分の気持ちが溢れて言葉が零れて両思いに
なれたのに 両思いになって自分の元に
戻って来てくれた途端また自分は、
意地っ張りの性分に戻ってしまった。


(本当 自分が嫌になる....何やってん
だろう俺....)

格好悪い 好きな奴にこそ格好良く見られ
たいのに....

そんな何度目かの自問自答をしている時
ふいにコンコンッとノックの音が
聞こえる。

「ハ....ハイネ....」その微かな控えめな声に
ハイネの肩は、びくりと上がる。

おずおずとシズクが顔を覗かせて.....
「あっ....あの.....その...入っても良い
ですか?....」シズクが頬を赤らめさせて
ハイネに尋ねる。

その顔を見てハイネは、あんなに決意したのに....「っ.....だから一々言って来るんじゃねェ 入りたきゃ勝手に入れよ!....」
やっぱりハイネは、意地っ張りの性分が
出てしまう....

ハイネからの許可を得てシズクは、
ポスンッとハイネの隣のソファーに座った。

「あっ....あの....ずっと休んでてごめんなさい....心配掛けたよね....」

「別に.....心配なんかしてねェ」ハイネは
心の中で(もう俺の口黙れ!)と思っていたが口から出る言葉は、止まらない

とにかくキスの事を謝らなきゃと思い口を
開くが出て来た言葉は、思っていた事とは、逆の言葉だった。
「謝らないからな.... 俺は....キスした事
たとえお前に嫌われても 俺は....あの時
した事を間違ってるって思いたくない
あの時の気持ちを間違いだったなんて
思いたくない....」

そうだ俺は、あの時凄く恥ずかしくて
だけど心臓が痛くて 痛くて 爆発しそうで.... だけどこの痛さも恥ずかしさも
相手がシズクだからって思ったら嬉しくて

そうシズクだから俺は、恥ずかしくても
苦しくて痛くてもそれでも俺は、この気持ちを抱えるのが嬉しくて嬉しくてたまらないんだ だって好きなんだどうしようも無く止められないんだ

だからあの時の気持ちを間違いにしたくない きっかけは、ただのつまらない嫉妬だったとしても それでも俺は、.....


そんなハイネの思いを包み込む様に
気付けばハイネの手にシズクの小さな手が
添えられる

「もしかして....ハイネもあの時凄く
恥ずかしかったの?.....恥ずかしいのに
私にキスしてくれたの?」

シズクのその言葉にハイネは、顔が赤くなり「悪いかよ~ 悪かったな!こんな格好悪い男でっ....」とハイネは、悔しくなり
鋭い目付きでシズクを睨む

シズクは、そんなハイネの表情に
にっこりと笑い安堵するようにクスクスと
笑い声を上げる。

「私と....ハイネおんなじだったんだね....
嬉しくて....だけど....恥ずかしくて....
顔を合わせられ無くて....」

シズクは、可笑しくて笑いが止まらなくなった。
「笑うんじゃねェ 馬鹿シズク!」
ハイネは、軽くシズクの頭を叩く

それでもちっとも痛くないので
シズクは、また笑ってしまった。

こうしてシズクとハイネのギクシャクした
雰囲気は、解け いつも通りの日常に
戻ったのだった。






2/4/2025, 10:47:19 AM

永遠の花束

氷漬けにされた 永遠に枯れない一束
の花束 君に送るはずだったその花束を
僕は、氷漬けにしてしまった。

そして君の住む村も 君の家族も
君自身さえも....僕は....

生まれつき 高い氷属性の魔力を持っていた僕.... そんな僕を村の人達は、
優しく迎え入れてくれた....

なのに..... ある日僕の魔力は、暴走した
自分で 止める事が出来ず 気付けば
見る間に何もかも氷漬けになった

君にプロポーズしようと選んだ花束も

ごめん ごめんね....僕が皆の優しさに
甘えてこの村をでて行かなかったから

皆を傷付けた.... 償いになるかは、
分からないけど 僕は、一生を掛けて
この魔法を解く方法を見つけるよ

待ってて   そうして僕は、自分の
故郷を旅立った 必ずこの村の氷を
溶かすと心に決めて....


そうしてこの村の氷が溶けた時
僕はもう其処には居なくても良い
皆が....君が....また笑ってくれるなら
僕は、僕自身の居場所を放棄する


そんな決意を僕は、永遠と言う時間の中で
咲き続ける氷の中の花束に誓ったのだった

    ( END)

2/3/2025, 11:26:20 AM

やさしくしないで

「何よ!馴れ馴れしくやさしくしないでよ!」と彼女がキッと眉を釣り上げる

僕は、それに対して「はい はい」と
軽く流す。

一緒に日直をする事になった
女子 小山内 静(おさない・しずか)
名前とは、正反対の強気で意地っ張りで
負けず嫌いな少女だ。

僕と彼女は、隣の席なので一緒に
職員室から次の授業の教材や資料を
クラスの教室に運んでいた。

席替えをしない限り僕と彼女は、ずっと
日直のペアなのでこのやりとりも毎回の
事だ 最初は、彼女の態度にムッとして
腹を立ててた僕だけれど 彼女は、
変に負けず嫌いなだけで他意は無くこの
態度は、通常運転なのだと分かってからは、こうやって軽く流す事を覚えた。

「この位 私一人で持てるのに~」
と彼女は、悔しそうに地団太を踏む
「でも一人で持つと高く積みあがって
安定感が無いよ こうやって二人で
半分ずつ持てば進行方向も塞がないし
安定感もあるし 一石二鳥でしょ」と僕が
ナイスアイデアみたいに言うと

彼女は、はたと動きが止まって
「その位 私だって気が付いてたし
自分の手柄みたいに言わないで!」

「はい はい それはそれは出しゃばりましてどうもすみませんでした」と僕が素直に謝ると彼女は、フンと鼻を鳴らし
不機嫌な顔で「でも先に持とうとしたのは
私だからね」なんて率先して自分が先に
荷物を持った事を殊更 強調して来る

こんなやり取りが教室に着くまで
続いた

僕は、まさか小山内さんの意固地な
意地っ張りが教室に着くまで続くとは
思わずなんだかそんな小山内さんの態度に
顔には、出さず心の中で爆笑していた。

僕は、暫く席替えが無ければ良いのにと
思っていた。....

2/2/2025, 11:17:18 AM

隠された手紙

あの人が 定位置としていつも座っていた
書斎の机の引き出しに隠されていた手紙

封筒の封を開けると そこには、不器用な
文字で書かれた私宛てのラブレターが
綴られてあった。

頑固者で意固地で私の言う事なんか
一つも聞いてくれた試しが無いあの人

そんなあの人が私に向けて柄にも無く
愛の言葉を囁いているその手紙は、
最初は、別人の様で信じられなかったが
長年連れ添った私には、あの人の言葉だと
言う事が頷けた。

「全く こう言う事は、生きている間に
言って下さいよ!」

私は、苦笑し 仏壇の写真の中で仏頂面を
携える あの人の遺影をやれやれと
見つめたのだった.....。

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