すれ違い
もう2時間も待ち合わせ場所である
オブジェの前で待っている。
電話を掛けても繋がらない
彼女に何かあったのだろうか....
もう2時間も待ち合わせ場所で待ってるのに
彼が来ない 電話を掛けても話し中で
繋がらない もう私とのデートの日に
一体誰と話してるのよ!!
女友達とかだったら許さないからと
私は、頬を膨らませもう一度彼に電話を
掛ける。
僕は、彼女が心配でもう一度電話を掛ける
(やっぱり繋がらない....)
私は、僕は、ため息を吐く
この時 彼と彼女は、同じ所に居た
正確には、振り返れば すぐ側に....
オブジェの右側と左側
オブジェの前と後ろ
全く同じタイミングで電話を掛ける
気の合うカップル
気が合い過ぎて 何の神様の悪戯か
さっきからお互いがお互いに全く同じ
タイミングで電話を掛けているせいで
ずっと話し中のアナウンスが鳴り止まないのだ....
お二人さん あともうちょっとだよ!
ほら 電話にばかり気を取られてないで
お互い後ろを振り返って!!
気が合い過ぎて 中々出会えず
すれ違ってばかり居る残念なカップル
二人が出会えたのは、この30分後だったと言う....
ある意味 仲が良すぎるカップルだった...。
秋晴れ
暑さも和らぎ 涼しい風と共に
空も青く澄んでいる。
こんな日は、洗濯物もよく乾く
外出するのにも良い気候だろう
私は、窓辺のベランダにある
ロッキングチェアーに座り読みかけの
小説を開く
散歩道を通った時にはらりと落ちた
綺麗な色の落ち葉を何の気なしに
栞にしてみた。
黄色と緑のコントラストが鮮やかに
目に焼き付いていつまでも見ていたいと
思ったから....
私は、その栞が挟んであるページを
開いて小説の続きを読み始める
ラミネート加工されて鮮やかな色を
いつまでも主張する木の葉にページを
教えられ私は、物語の世界に没入
し始めた。
鮮やかな物語の景色が私の思考を
埋め尽くすまで いつまでも いつまでも
ページを捲り続けた。.....
忘れたくても忘れられない
ドンっと響いた音に最初は、何が何だか
分からなかった。
気付いた時には、血飛沫が飛び散り
腕や顔に朱く広がる。
目を見開くと君の大きな背中が壁になって
僕の所に後ろから倒れかかる
弾が飛んで来た方向には震えて泣き叫んで そうして現実から目を背ける様に背を
向けて逃げて行った一つの影
弾を撃った拳銃は、道端に放り出されて
いた。
後に残ったのは、僕に寄り掛かって
血溜まりを広げて行く君と君の体を
受け止めて何とか出血を止めようと
意味も無く抗う僕だけが残る。
僕は、一生懸命君の出血を止めようと
君の傷口に自分の手を宛がう
頭の奥では、もう無駄だと分かっているのに体は、君を助け様と傷口から手を退ける事をやめない
声をさっきの銃声よりも大きくして
君の意識を繋ぎ止めようと必死に君の名前を呼び君を旅立たせない様にする。
そんな僕の声を遮る様に君の弱々しい手が
僕の頬を触る。
そうして僕の目尻に溜まった涙も一緒に
拭く様に君の体温が徐々に僕の涙の温かさに包まれて冷たくなって行く
僕の涙の雫がぽろぽろと君の顔に落ちる
そうして最期に僕に見せた君の笑顔が
淡く儚く僕の脳裏に刻み付く
そして君は、微かに口を開き
「無事で....良かった....」それを最期に
君の腕が下に落ちる
僕は、泣いた これ以上無いって位に
泣いて泣いて泣きまくり涙が枯れる位に
泣いた。
最期に見せた君の笑顔を思い出すと
心臓を強く鷲掴みにされたみたいに
苦しい
だけど君との思い出を薄れさせたくなくて
最期に僕に見せてくれた君の笑顔が
忘れたい程苦しいのに 忘れたくなくて
何度でも思い出そうとしてしまうんだ
あの時 君が僕を庇って守ってくれたのは
僕が弱いからだろうか....
それとも....君は.... 僕の事を少しは
認めてくれていたのだろうか
今となっては、その真意を聞き出す事は、
出来ない....
君を思い出すと涙が止まらなくなるけれど
胸が苦しくて痛いけれど....
だけれどもこの君との記憶も思い出も
手放したくないと君の笑顔を思い出すたび
強く決意する様に忘れるもんかと
思うんだ....。
やわらかな光
ぽかぽかと降り注ぐやわらかな光
縁側で丸くなって自分の体毛に光を集める
太陽光で温められた自分の毛皮が羽毛布団
みたく光で温められ ふわふわとする。
顔を上げて欠伸を一つすると長い舌と共に
喉の奥が丸見えだ。
上半身が起き上がり周りをきょろきょろと
見渡すと四つん這いになり大きく伸びをする。
尻尾が陽の光に向かってピンと立つ
ふいに耳に「タマご飯だよ!」と言う声が
聞こえる
縁側の丸い光から離れお皿の中の魚の風味の匂いを嗅いで魚のすり身を口の中に入れ
自分の歯で噛み魚の食感と濃い味を味わう
お皿の縁にある物まで舐めとって
新品のお皿みたいに綺麗にすると
舌で毛づくろいをしながら
「ニャアー」と鳴き 大きな手が頭の上を
撫でてくれる。
そうして今度は、縁側に座ったその膝の上に乗りまた丸くなり膝の上を自分の毛皮で
温めながら 今度は、太陽の暖かなやわらかい光と微睡みを誘う様な柔らかな膝の上で 大きな手で撫でられながら
また再びぽかぽかの眠りに付いた。
鋭い眼差し
隣の席に座る君がさっきから目を吊り上げて うんうん唸っていた。
「なぁこれ何て読むんだ?」君は、自分の
教科書を僕の方へ押し付ける。
その光景を見て 僕は、ため息を吐く
「ねぇ 今日は、もう早退しなよ!
そんな状態じゃあ授業もままならないでしょ!」
「そうだけど...」君は、少し逡巡する様に
視線を彷徨わせ 「分かったよ....」と
渋々頷く そうして席を立ち
「職員室行って来る!」
こうして視力が悪くいつも眼鏡をしている
友人が 今日は、眼鏡を誤って壊してしまい裸眼で登校してきた。
予備の眼鏡は、持っておらず
コンタクトは、目がゴロゴロするとかで
性に合わず今までその一回しか嵌めた事が
ないらしい....
なので今日の午前中の授業は友人はずっと
目付きを窄めて眉を吊り上げていたので
唯でさえ友人は、元々の容姿が吊り上がった目元の為事情を知らない第三者からは
四六時中 怒っている様に見える
友人にそんなつもりが無いのは重々承知なのだがクラスメート達が友人と目が合うたび びくりと肩を震わせるので
さすがに友人も周りの状況に気付いたらしく「今日 一日 裸眼で頑張る」と言っていた友人も 早々にその決意を諦め
午後は、早退し新しい眼鏡を作りに行くと
言う事だ.... しかし友人は、顔に似合わず
学校 大好き人間で 今まで無遅刻
無欠席 無早退だった為 踏ん切りが
付かなかったらしい....
(全くしょうがないなあ....)僕は頬杖を
付きながら窓から正門から出ていく
友人の後ろ姿を見ながら思う
(そう言う所が彼の可愛くて面白い所だよなあ....)と自慢の友人の事を思い僕は
午後の授業に戻った。