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忘れたくても忘れられない

ドンっと響いた音に最初は、何が何だか
分からなかった。

気付いた時には、血飛沫が飛び散り
腕や顔に朱く広がる。

目を見開くと君の大きな背中が壁になって
僕の所に後ろから倒れかかる

弾が飛んで来た方向には震えて泣き叫んで そうして現実から目を背ける様に背を
向けて逃げて行った一つの影
弾を撃った拳銃は、道端に放り出されて
いた。

後に残ったのは、僕に寄り掛かって
血溜まりを広げて行く君と君の体を
受け止めて何とか出血を止めようと
意味も無く抗う僕だけが残る。

僕は、一生懸命君の出血を止めようと
君の傷口に自分の手を宛がう
頭の奥では、もう無駄だと分かっているのに体は、君を助け様と傷口から手を退ける事をやめない

声をさっきの銃声よりも大きくして
君の意識を繋ぎ止めようと必死に君の名前を呼び君を旅立たせない様にする。

そんな僕の声を遮る様に君の弱々しい手が
僕の頬を触る。
そうして僕の目尻に溜まった涙も一緒に
拭く様に君の体温が徐々に僕の涙の温かさに包まれて冷たくなって行く


僕の涙の雫がぽろぽろと君の顔に落ちる
そうして最期に僕に見せた君の笑顔が
淡く儚く僕の脳裏に刻み付く
そして君は、微かに口を開き
「無事で....良かった....」それを最期に
君の腕が下に落ちる

僕は、泣いた これ以上無いって位に
泣いて泣いて泣きまくり涙が枯れる位に
泣いた。

最期に見せた君の笑顔を思い出すと
心臓を強く鷲掴みにされたみたいに
苦しい
だけど君との思い出を薄れさせたくなくて
最期に僕に見せてくれた君の笑顔が
忘れたい程苦しいのに 忘れたくなくて
何度でも思い出そうとしてしまうんだ

あの時 君が僕を庇って守ってくれたのは
僕が弱いからだろうか....

それとも....君は.... 僕の事を少しは
認めてくれていたのだろうか

今となっては、その真意を聞き出す事は、
出来ない....

君を思い出すと涙が止まらなくなるけれど
胸が苦しくて痛いけれど....
だけれどもこの君との記憶も思い出も
手放したくないと君の笑顔を思い出すたび
強く決意する様に忘れるもんかと
思うんだ....。

10/18/2024, 6:08:45 AM