Saco

Open App
10/5/2024, 12:41:58 AM

踊りませんか?

「踊りませんか?」そう声を掛けられ
一瞬身を固くする。

そこに居たのは 冷徹と噂される
侯爵子息だった。

私は、差し出された手に視線を置き
こわごわとその大きな手に自分の細く白い手を置く

そうして広いダンスホールまで手を引かれ
広い空間に誘導される。

オーケストラの楽団の人達が自分の担当の
楽器を構え そうして曲が始まる。
最初はバイオリンの音色から始まり
高らかに響き周りの人達がターンや
ステップ そうしてくるくると回り
曲に合わせて それぞれのダンスが
思い思いに始まった。

何故 侯爵が私の手を取ったのかその
怜悧な青い瞳の中にわずかな皮肉が
混ざっており口元も意地悪く口角を
上げていた。

「笑みが引きつっていたぞ あまり不自然に笑っていると口元に皺が増えるぞ!」

「あら侯爵様 女性の容姿を揶揄するのは
失礼に当たりますよ 寛大な私で無ければ
気分を害する所ですわ!」

「よく言う早く帰りたいと表情に出ていたぞ 俺が声を掛けなければ しつこい
令息の話しを切り上げられず いつまでも
聞いているハメになっていたぞ!」

令嬢は、ムッと口元を引き結んだ
それは、事実なので言い返せない....

しかし声を掛けるにしてもいきなり
何の脈絡も無くあんな冷めた目で話し掛けたら他のご令嬢なら怖くて逃げたして
しまうだろう

「貴方こそ女性をダンスに誘うなら
もう少しにこやかにスマートに誘えませんの あんな真顔でまるで戦地に立つ兵士の
様に威圧し過ぎですわ!」
令嬢は、不満を露わにする。

「ああ それは、すまなかった.....
他の令嬢は、可愛らしい方が多く自然と
口元が緩んでくるんだが お前の吊り上がった高慢な表情を見てるとどうも笑う気に
なれなくてな....」

令嬢は、その言葉に怒りが頂点に達し
令息の足をステップを踏む振りをして
わざと踏もうと画策するが
令息は、彼女の行動などお見通しの様に
軽やかなステップを踏んでそれを回避する

高慢令嬢と皮肉屋令息 彼女と彼は、
社交界のダンスパーティーに参加する
たびに言葉の応酬を繰り返している

その応酬が始まる合図は必ず....
「踊りませんか?」と言う令息からの
問い掛けから始まる。
そうして手袋を放る様に令嬢が令息の手に
まるで挑戦を受けるかの様に体を震わせ
武者震いをさせて 戦場と言う名のダンスホールに赴く
組み手をする様にお互いの手を重ね
ダンスの曲が終わるまでにお互い皮肉の
言い合いを始める。
それは、最早 お互いだけの恒例行事に
なっている....
それに 果たして 令息と令嬢が気付いて
いるかどうかは 最早 神のみぞ知る所と
なっている....。

10/4/2024, 12:18:11 AM

巡り会えたら

また駄目だった また君を救え無かった。

何度 何度 この同じ時を巡り巡っても
君を救う事が出来ない

でも僕は、諦めない 諦められない

どんなに辛く 苦しくてもまた君に
巡り会い 笑い合える時に行き着くまで
僕は、この時間のループの波を止める事が
出来ない....

君にもよく言われていたっけ....

「諦めが悪いのが 君の短所でもあり
長所でもある.... もちろん私は君のその
性分を長所だと思っているけどね....」

そんな風に苦笑して 僕に呆れていたけれど 決してそんな僕の性分を否定しなかった。

君が長所だと言ってくれた僕の諦めの悪さを奮い立たせ 僕は、また時のループの波の中に自分を沈める。

君の手を必ずこの手に摑む為に
僕は、また時の流れの波に飛び込み
また巡りの旅にこの身を埋める。

10/3/2024, 4:59:57 AM

奇跡をもう一度

遠い国の 遠い地で誰かが言った
「奇跡は二度は起こらない」と
また誰かがこうも言った
「奇跡は起きるものじゃない起こすものだ」と この世に奇跡なんてものが
存在するとしたならそれは神の御業か
はたまた人の努力の結晶か

一度目の奇跡が神の気まぐれなら
二度目の奇跡は人の馬鹿力か....
神は乗り越えられる試練しか与えないとは
よく言ったもので.....
この世の天変地異が神の奇跡なら
その天変地異に立ち向かいあらゆる災害や
水害から人命を守るのが人の手によって
創られた奇跡なのかもしれないと....
地震跡地に立ち尽くして思う
今あるこの命が奇跡だと....
災害救助隊員の皆様 本当にありがとう
ございました。!!

10/2/2024, 5:18:36 AM

たそがれ

空に朱色と藍色が混ざり淡いグラデーションが掛かる頃 私は、学校からの帰り道を
ひたすら歩いていた。

不気味な程 黒く 暗くは無く
かと言って心から安心出来る程明るくも
無いそんな淡い黄昏時なら 私達の中に
私達じゃ無い者が私達の振りをして
混ざっていても不思議じゃ無い
そんな幻想的な妖しい者を呼び寄せる様な
そんな空を見上げながら 私は一つの
好奇心と不安 恐怖と期待を胸の中に
抱えながらいつも通っている通学路を
ドキドキしながら歩いて行く

何かが起こって欲しい様な 起こって欲しくは無い様な相反する気持ちがせめぎ合い
ながら 一歩 一歩 足を踏みしめて行く
家に着くまで 私の心は前のめりになり
落ち着かなかった。.....

10/1/2024, 6:05:08 AM

通り雨の続き

きっと明日も

今日は、いつものメンバーで遊園地に
来ていた。 事の発端は....

「ハイネとシズクが両思いになったお祝いに四人でWデートしようよ!!」

「あ~此処まで長かったわ~やっと長年の
夢が叶うのね~」とミーナとナイトの二人の提案だった。
「はぁ~そんな事言ってお前ら遊びに
行きたいだけだろう って言うかそんな事
祝うんじゃねぇ恥ずかしいだろう....」
(って言うか長年の夢って何だよ俺の
恋愛成就は、そんな長年待つ程 希少な物みたいに言うんじゃねぇよ....)
はぁ~とハイネはため息を吐く
そして隣に座っているシズクを横目で見ると何故だかシズクは、考え込んでいた。
(何考え込んでんだこいつ....)ハイネが
シズクに声を掛ける。
「シズクどうしたんだ....」
「あっ....あのね....友達同士が両思いになったらお祝いするなら ミーナとナイトの事もお祝いしなきゃ 二人両思いなのに私
お祝いしなかった....今からでも間に合うかなあ....」とズレた返事をよこして来たので
ハイネは、更にため息を吐く
するとナイトが見計らった様に
「だから僕達のお祝いも兼ねて四人で
遊園地に行こう!」とナイトがシズクに
呼びかける
するとシズクが目をキラキラさせて
「うん!」と頷く と三人で盛り上がって来ていたので 嗚呼 これは行く流れになって来てるなあ面倒くさいなぁと思わなくもないが....シズクがにこにこして嬉しそう
なのでその笑顔を見てるとハイネ自身
(まぁ良いか....)と言う気持ちになるのだった。

そうして 今に至る....
「....ハイネ....見て....見て....!!」
シズクがミーナと動物の耳が付いた
カチューシャを被りハイネとナイトに
ミーナと一緒に見せに行く
どうやらお店で買ったらしい.....
ミーナは、猫耳 シズクは兎耳の
カチューシャだった。

「ミーナ凄く可愛いよ 似合ってる!」
「ありがとうナイト」ミーナとナイトの
二人の間に恋人特有の二人だけの世界みたいな雰囲気が流れる。

「ハイネ!!兎さんだよ!!」とシズクが
嬉しそうにハイネに顔を綻ばせる。
ハイネ「っ・・・」と言葉を詰まらせる
両思いになってもシズクに面と向かって
可愛いと褒める事が出来ないハイネだった。
無難に「ああ・・・」と一言返すだけで
留める。
シズクは、そんなハイネの言葉が嬉しくて
照れた様にもじもじしていた。

しかし当のハイネは....(俺って奴はどうして素直に可愛いって言えないんだろう....)
もう泣かせたくないのに.....
離れたくないのに....
もっと もっと喜ばせたいのに....
結局 告白も意気込んで決意した割に
最初に言い出してくれたのはシズクから
だったし.... 俺 もしかして彼氏らしい事
全然シズクにしてない....
その事実に思い至りハイネは、内心
落ち込んでいた。

暫くして四人は、乗り物のアトラクションやレストラン ショッピングなどを堪能して帰る頃になった。

「楽しかったわね!」「うん!」
シズクとミーナが話している後ろで
ハイネは、落ち込んでいた。
それを見て取ったナイトがハイネに
声を掛ける。
「ハイネどうしたの?」ナイトがハイネを
覗き込むナイトの問いかけにハイネは、
ぶっきらぼうに...
「別に....唯 俺っていつまでも格好悪いなあって思っただけだよ...」
「ふ~ん ハイネも自分の事に関しては
鈍いんだね!」
「はぁ....どう言う意味だよ!」ハイネの
問いかけにナイトは、答えず
「じゃあ僕達は、此処で失礼するね!」
「ハイネちゃんとシズクを送って行きなさいよ!シズクじゃあまたね!」
こうしてミーナとナイトは、手を繋いで
先に自分達の家へと帰って行った。




シズクは、今日は、凄く楽しかった。
皆と居られて.... ハイネと居られて....

だから今シズクは、最高に幸せだった
このまま寮に着かなければ良いのに
そう思ってしまう程....
シズクは、ちらりとハイネの顔を見る。

私の大好きな人は、普段は、ぶっきらぼうで意地悪で厳しいのに 私が本当に困っている時や助けて欲しい時は、いつも一番に
駆けつけて私の事を助けてくれる
ヒーローみたいに格好良くて大好きな人です シズクは、ハイネの顔を見て
くすくすと笑う
「はあ~何笑ってんだよテメェは」ハイネ
バツが悪そうにシズクを睨む
シズクはその睨まれた顔すら
初対面の時は、あんなに怖かったのに
今は、全然怖くない ハイネが色んな表情を自分に見せてくれる事が心から嬉しい
「....ハイネ大好き!」シズクは、満面の
笑顔をハイネに見せる。
それを見てハイネは...「ばっ馬鹿 うるさい こんな公衆の面前で好きとか言ってんじゃねえ うぜえんだよ ほらもう
さっさと行くぞ!」「うん....」
こうして二人は、並んで歩き出した。
きっと明日も大好きな人に会えます様に
二人は、心の中でそう同じ様に願っていた。....。

Next