Saco

Open App
9/5/2024, 11:12:34 AM

貝殻

「そっちは、どうだい?」貝殻を耳に
当てて僕は、君に問いかける。
「変わらず青く透き通っているわ
貴方のおかげね!」

水質は、元に戻りつつある。
君の故郷を汚すわけには行かないからね

僕と君が出会ったのは、僕が小学生の頃
君は、海の上に顔を出して船の上で
釣りをしていた僕を見上げていた。
両親は、釣れずに粘っている僕を
遠くで見守っていたが君の存在には
気づいていなかった。

上半身を貝殻の水着で隠し
そして下半身である鰭をちょっと持ち上げて僕だけにその姿を見せてくれた
人魚である君
それ以来秘密の友達である君に僕は、
ちょくちょく会いに行った。

しかしある時 君が僕に言った。
観光客が増えて住処にしていた海の
水質が落ちて人魚である私たちが
住めなくなった事
私たち種族は、繊細な生きもので水質が
一定以上汚れると生きて行けないと
言う事
僕は、離れたくなくて思わず君に
問いかけた。
「もう会えないの?」
君は、困った様に苦笑して
僕の質問に答えてくれた
「水質がまた元通りになればまた戻って
来られるんだけど....」と君は、そう答えてくれた。
その言葉を聞いて僕は、幼心に決意して
君に宣言した。

「僕が大人になったら海を元通りにして
君の故郷を取り戻してあげる」とそう拳を
握り締めて君に約束した。
君が幼かった僕の言葉を何処まで信じてくれたかは、正直分からない。
しかし君は、僕を馬鹿にするでも無く
呆れるでもなく僕の小さな手に
手の平大の巻き貝を握らせた。
君は、言った。

「この貝殻を耳に当てると私が別の海に
行ってしまっても貴方の声が聞けるから」

遠くの海に行ってしまった君と繋がる
唯一の連絡手段を僕の手の中に残して
君は、仲間と共にこの海を去った。


それから十五年君との繋がりは、まだ
続いている。
青く透き通った海の景色を眺めながら
君との電話が中々切れずに居る

この仕事が終わったら僕は、もう一度
秘密の友達の君に会いに行く....

9/4/2024, 10:19:53 AM

きらめき

このきらめきも夜だけの特別な明かりだ
街灯の道を指し示す明かりも
今夜一夜だけの特別を演出する
艶やかなネオンも闇夜に映える星々も
この夜を目撃した一握りの特別な人達へ

どうかこのきらめきを思う存分眼に
焼き付け一夜の夢をどうぞ御堪能
下さい。.....。

9/4/2024, 6:02:54 AM

手を取り合っての続き

些細なことでも

ハイネ ミーナ ナイトの三人は、
目的の建物に着く 空が暗く澱み
周りの雰囲気が沈んでいた。

暗く黒い影の靄が建物を囲んでいた。

「なんか嫌な雰囲気ね....」
「この黒い靄 絶対危ないよ!」

ミーナとナイトが警戒心を露わにする中
「そんな事どうでも良い!」
ハイネ達三人とタマは、玄関口の重い
扉を開けるとバンッと建物に通じる扉を
ハイネが蹴破る。

そこには、うじゃうじゃと黒い靄が束に
なって巨大化し三人に襲い掛かる。
ナイトが銃を構えミーナがレイピアで
黒い靄を薙ぎ払う
ナイトが銃の引き金を引きながら声を
上げる。
「この靄どんどん湧き出てきてきりがないよ!」

「穢れが凄く溜まって堆積してるんだわ!」

(くそっ くそっ!)ハイネはイライラ
していた。
早くシズクの所に向かいたいのに 中々
前に進まない。
(シズク....)ハイネは、最後に別れた
シズクの笑顔を思い出す。
あの時「じゃあまた」と言って去った
シズクは、もう会えない事を知っていたんだろうか....
あの時シズクは、どんな気持ちで自分に
笑顔を向けていたんだろう.....

(クソッ 分かりづれェんだよ馬鹿シズク)
普段は、泣き虫で弱虫のくせに
自分が本当に辛い時に限って笑ってやがるから些細な事でも本当に心からの笑顔で
笑うから....見逃してしまう....
気付かない....

何時だって守られてるのは、自分の方で....
(シズク....もっと我が儘言えよ!
辛い事があったら泣き叫んで罵倒しても
八つ当たりしても良いから....
一人で泣いたり無理して笑うなよ....
っ....好きだ....シズク....お前が好きだ
大好きだ.....)

『ハイネ少年この先に片割れの気配を
感じる きっともうすぐだ....』
タマがそうハイネに呼びかけるが
穢れの集合体に道を阻まれる。
ハイネは、鎌を思いっきり振って穢れを
一気に浄化するがそれでも間に合わない
(クソッどうすれば....)ハイネが
迷っているとナイトがバンバンッと銃弾を
連続で穢れに撃ち込む
ミーナもハイネの前に出てレイピアで黒い影に切り込む。
「ハイネ先に行って!」「たまには、僕たちも前衛で斬り込みたいし....」

二人の声掛けにハイネは、一瞬立ち止まり
「はぁ~何言ってんだテメェらだけじゃ..」

「あら いつも一番に飛び込んで穢れに
斬りかかって行く人のフォローは
誰がしてると思ってんの!」
「そうそう 見くびってもらっちゃ困るよね!」ナイトが笑いながらミーナが呆れながらハイネを促す。
「それよりシズクに何かあったらそれこそ
許さないからね!」ミーナが眉を吊り上げて
ハイネを指差す。

「此処は、友達としてハイネに花を持たせてあげるよ!」ナイトが肩を竦めて
ハイネに言う。

ハイネは、二人を見返して.....
「やられんじゃねェぞ!」と二人の肩をポンッと叩きタマを連れてハイネは先に進む

ハイネを見送ったミーナとナイトは....
「さあて 友達の恋路を邪魔する
悪い奴には....」
「たっぷりお仕置きしてあげなくちゃね!」
ミーナとナイトは、背中合わせになって
それぞれの方向に駆け出した。




そして先を進んだタマとハイネは.....
タマが気配を感じた扉を開ける。
するとそこには....

「やあ君か!来てもらって悪いけど
ちょっと遅かったね!」そこに居たのは
不敵な笑みを浮かべるルークと
ベッドに静かに寝かされるシズクの姿が
あった。
「シズク....」ハイネはその光景を目の当たりにして心臓がどくんと脈打ち
背中に冷たい汗が流れ込む
ハイネは覚束ない足取りでシズクに近づく
そしてシズクの体を持ち上げシズクの首元に指を添える。
ハイネはその感触に愕然とする。
「シ....ズク」シズクの脈が感じられない....
ハイネの瞳から自然と涙が溢れていた。
『ハイネ少年しっかりするんだ!
ハイネ少年』タマは、ハイネに呼びかけるがハイネに反応は無い。

「さあもうすぐ姉さんに会える」ルークが
鳥籠を取り出してその中に入っている物に
手を伸ばす。
そのルークの行動を目撃したタマの魂の
姿は黒く変色していた。
そうして今まで消失していたタマの記憶が
蘇る。

「ルーク君!」ルークは、黒く穢れた
タマを振り返る。
「あれ?もしかして君義兄さんかい?
あの時消滅させたと思ったんだけどなあ
残念だよあの時邪魔しなければ義兄さんも
僕の計画に組み込んであげたのに....」

「これ以上ティアを冒涜しシズクを傷つけるなら いくら君でも僕は、許さない!」

タマの魂の質量が上がる。
透き通っていた魂の色は、黒く澱み
ルークに牙を剥く。

タマ 本名イクスファーラムは
愛する妻と娘を守る為 義弟に暗い
憎しみの炎を向ける。

9/3/2024, 1:13:15 AM

海へ(番外編)⑳の続き

心の灯火(番外編)21

●灰色猫ハイネの受難

灰色猫ハイネは、買い物に行って来ると
シズクちゃんに留守番を頼みました。

「俺が帰って来るまで家の鍵を開けるなよ
部屋から出るなよ!分かったな!」
とシズクちゃんに言い聞かせました。
シズクちゃんは「うん!」と元気良く
頷きました。

(返事は、いつも良いんだけど....)とハイネは少しの不安を残しシズクちゃんを
置いて買い物に行きました。



買い物を終えたハイネ
(思ったより早く帰れそうだ良かった...)
ハイネは、急いで家に向かっていました。
するとそこに.... 「おい お前」と
ハイネに声を掛ける者がいました。
「久しぶりじゃねぇか最近見ないから
死んだと思ってたぞ!」

ハイネがその声に振り向くと
猫耳と尻尾を生やした男が立っていました。
(あ~こいつは....)ハイネが記憶を呼び
起こすとハイネが野良猫だった時に
よく話していた野良仲間でした。

「あ~お前か~」ハイネは久しぶりの
仲間に挨拶をします。
すると野良仲間がハイネが持ってる
買い物袋を指差します。
「お前それまさか自分で買ったのか?」
「ああ今は、人型になって人間と一緒に
仕事をしてお金を稼いでるんだ 
俺の飼い主がまだガキだから俺が代わりに
稼いでるんだ!」ハイネは、隠す必要も
無いので正直に今の現状を説明します。

それを聞いて野良仲間は、目を剥きました
「お前 今 人間に飼われてるのかあ
驚いたあんなに誰かと居るのを面倒くさがってたお前が!人間に拾われたからって
お前が大人しく飼われてるとは俺には
思えねぇんだが.... どういう風の吹き回しだ」
野良仲間が揶揄う様にハイネを見ます。
ハイネは、視線を逃がす様に
「まぁいろいろあって....」と誤魔化します

「まぁお前の事だからその内飽きたら
出ていくんだろうがよ!
まぁ好きにやんな じゃあまたな!」と
野良仲間は、ハイネに手を振りその場を
去ります。
「ああ...」とハイネも手を振り返し
その場を後にしました。

家に帰って荷物を置くと何故か
シズクちゃんの姿が見当たりません
(鍵が開いてる....あいつ外に出たのか....)

ハイネは、外に出て声を出して
呼んでみました。
「お~い!」と大きな声で呼びかけると....
「あっハイネ!」とぴょこりと
シズクちゃんが庭の裏手の方から駆けて
きて「おかえりなさい!」とハイネの
胸に一目散に飛び込みます。
ハイネは、シズクちゃんを抱き上げて
「お前~外に出るなって言っただろう」
とハイネは、シズクちゃんにやんわりと
注意しますがシズクちゃんは、首を
傾げて「外に出てないよ!ちゃんと
お家のお庭でお花を摘んだもん!」
とシズクちゃんにとって家の敷地内にある
庭は、お家の中だと認識しているのです。

ハイネは、深く溜息をつきました。
「まあいいや 昼飯の準備するから
家の中で遊んでてくれ」
シズクちゃんは、ハイネの首元に抱き付き
「私もお手伝いする!」シズクちゃんは
元気良くハイネに立候補しました。
ハイネは、それを見越した様に
「はいはい じゃあご飯が出来たら
皿とかスプーンとか箸とか並べてくれ」
「うん!」シズクちゃんは、嬉しくなって
またハイネの首元に抱き付きました。
こうして二人は、仲良く家の中に
入っていきました。

ハイネは、野良仲間に『お前の事だから飽きたら出て行くんだろう!』と言われた
言葉を思い出します。

でもハイネはシズクちゃんと暮らし始めて
自分の心にぽっと灯りが灯るのを自覚して
から自分から出て行きたいとは思えなく
なっていました。

どんなにシズクちゃんに振り回されて
大変になろうともシズクちゃんが自分と
離れたいと思うまではシズクちゃんの傍で
過ごしたいとハイネは思うのでした。

9/1/2024, 10:52:19 AM

開けないLINE

開けないLINE 未だに赤いピンマークが
刺さっているLINE 君からのメッセージだと
分かっているから余計に開けない

笑顔の君の写真をロック画面にしている
僕にとって 君の泣き顔のスタンプを
見るのは、忍びない

朝から並んで限定30個のメロンパンを
買いに出た君 午前中には、売り切れると
SNSに書いてあったそれを早朝5時から
うきうきで家を出た君

そうして『買えたら報告するね!』と
僕にとびきりの笑顔を見せて意気揚々と
出かけていった君

スマホの♪♬~と言う音楽と共に
画面の上の方には報告と言う文章と
共に↓のマークが表示されていた。

これは、....と僕は予感がした。
彼女が買えなかった場合
次は、同じ地方に行って買いに行くのは
多分僕だ....
僕は、彼女が帰って来るまでLINEに
気付かない振りをして無視を決め込もうと
決めた下手に開いて既読なんて付けよう
ものならそれが決定事項になってしまう
彼女が帰って来るまでに彼女の気が
変わっているかもしれないと言う
一分の望みに懸け僕は、彼女が帰って
来るまで無駄な抵抗を続けるのだった。

Next