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海へ(番外編)⑳の続き

心の灯火(番外編)21

●灰色猫ハイネの受難

灰色猫ハイネは、買い物に行って来ると
シズクちゃんに留守番を頼みました。

「俺が帰って来るまで家の鍵を開けるなよ
部屋から出るなよ!分かったな!」
とシズクちゃんに言い聞かせました。
シズクちゃんは「うん!」と元気良く
頷きました。

(返事は、いつも良いんだけど....)とハイネは少しの不安を残しシズクちゃんを
置いて買い物に行きました。



買い物を終えたハイネ
(思ったより早く帰れそうだ良かった...)
ハイネは、急いで家に向かっていました。
するとそこに.... 「おい お前」と
ハイネに声を掛ける者がいました。
「久しぶりじゃねぇか最近見ないから
死んだと思ってたぞ!」

ハイネがその声に振り向くと
猫耳と尻尾を生やした男が立っていました。
(あ~こいつは....)ハイネが記憶を呼び
起こすとハイネが野良猫だった時に
よく話していた野良仲間でした。

「あ~お前か~」ハイネは久しぶりの
仲間に挨拶をします。
すると野良仲間がハイネが持ってる
買い物袋を指差します。
「お前それまさか自分で買ったのか?」
「ああ今は、人型になって人間と一緒に
仕事をしてお金を稼いでるんだ 
俺の飼い主がまだガキだから俺が代わりに
稼いでるんだ!」ハイネは、隠す必要も
無いので正直に今の現状を説明します。

それを聞いて野良仲間は、目を剥きました
「お前 今 人間に飼われてるのかあ
驚いたあんなに誰かと居るのを面倒くさがってたお前が!人間に拾われたからって
お前が大人しく飼われてるとは俺には
思えねぇんだが.... どういう風の吹き回しだ」
野良仲間が揶揄う様にハイネを見ます。
ハイネは、視線を逃がす様に
「まぁいろいろあって....」と誤魔化します

「まぁお前の事だからその内飽きたら
出ていくんだろうがよ!
まぁ好きにやんな じゃあまたな!」と
野良仲間は、ハイネに手を振りその場を
去ります。
「ああ...」とハイネも手を振り返し
その場を後にしました。

家に帰って荷物を置くと何故か
シズクちゃんの姿が見当たりません
(鍵が開いてる....あいつ外に出たのか....)

ハイネは、外に出て声を出して
呼んでみました。
「お~い!」と大きな声で呼びかけると....
「あっハイネ!」とぴょこりと
シズクちゃんが庭の裏手の方から駆けて
きて「おかえりなさい!」とハイネの
胸に一目散に飛び込みます。
ハイネは、シズクちゃんを抱き上げて
「お前~外に出るなって言っただろう」
とハイネは、シズクちゃんにやんわりと
注意しますがシズクちゃんは、首を
傾げて「外に出てないよ!ちゃんと
お家のお庭でお花を摘んだもん!」
とシズクちゃんにとって家の敷地内にある
庭は、お家の中だと認識しているのです。

ハイネは、深く溜息をつきました。
「まあいいや 昼飯の準備するから
家の中で遊んでてくれ」
シズクちゃんは、ハイネの首元に抱き付き
「私もお手伝いする!」シズクちゃんは
元気良くハイネに立候補しました。
ハイネは、それを見越した様に
「はいはい じゃあご飯が出来たら
皿とかスプーンとか箸とか並べてくれ」
「うん!」シズクちゃんは、嬉しくなって
またハイネの首元に抱き付きました。
こうして二人は、仲良く家の中に
入っていきました。

ハイネは、野良仲間に『お前の事だから飽きたら出て行くんだろう!』と言われた
言葉を思い出します。

でもハイネはシズクちゃんと暮らし始めて
自分の心にぽっと灯りが灯るのを自覚して
から自分から出て行きたいとは思えなく
なっていました。

どんなにシズクちゃんに振り回されて
大変になろうともシズクちゃんが自分と
離れたいと思うまではシズクちゃんの傍で
過ごしたいとハイネは思うのでした。

9/3/2024, 1:13:15 AM