鐘の音(番外編)⑯の続き
麦わら帽子(番外編)⑰
●シズクの夏の過ごし方
じりじりと灼ける様な夏の日差しに
肌が灼ける様なアスファルトの
照り返し シズクの白い肌にも玉の
様な汗が流れる。
シズクは、頭を日差しから守る為に
大きな麦わら帽子を被っていた。
ミーナ ナイト ハイネの三人は、
魂狩りの仕事の為バインダー局を出て
外に行っていた。
マリアとハロルドは、事務処理や
書類仕事に追われて忙しそうだ。
その間にシズクは、自分の出来る事と
題して 庭の草むしりや 暑い中
皆が帰って来るので 差し入れのお使いに
行ったりしていた。
ちなみにこれは、別に誰かに頼まれた
とかでは無く 皆忙しいので一番暇な
自分が率先して、雑用位はしなくちゃと
シズクが自発的にやっている事だった。
軍手をして、草むしりをするシズク
(うんしょ うんしょ!!)シズクは、
一生懸命 草を抜く
手で抜きにくい所は、鎌を使って力を
入れる。
(ふぅ~)シズクは、息を一息吐く
シズクは、ゴミ袋を結びゴミをまとめ
ゴミの集積所にゴミ袋を運ぶ
(うんしょ うんしょ!)
ゴミ袋を集積所に置きシズクは、
はっと思い出す。
(水分補給しなきゃ....) 熱中症で倒れたら
皆に心配を掛けてしまう....
シズクは、首に掛けている水筒を外し
自分で入れた麦茶を飲む
冷たい麦茶がシズクの喉を潤す。
ゴクンと喉を鳴らしシズクは、また水筒を
首に掛けると(そろそろ皆帰って来るよね)と皆を出迎える為にバインダー局に
戻り自分が作った麦茶を皆に用意しなきゃとシズクは、早足になる。
途中(あ....)と走り過ぎた為シズクは、
バッターンと転んでしまう。
(う~痛い~)シズクは、膝を擦り剥いてしまったがこの位なら自分の治癒術で治せるのでシズクは、治癒術を使い自分の怪我を
治し地面に付いた土を払い
マリアやハロルドに心配を掛けない様に
怪我の事は、シズクからは、言わなかった。
そうして麦茶を用意し皆を待っていると....
「暑い!」と言いながら三人が帰って来た
シズクは、皆に麦茶を配る。
「「ありがとう」」とナイトとミーナに
お礼を言われてシズクは、嬉しくなった。
最後にハイネに麦茶を配るシズク
「はい....ハイネ....」とシズクは、ハイネに
麦茶を差し出す。
ハイネは、にっこり笑っているシズクを
一睨みし シズクが被っていた
麦わら帽子をシズクの目元まで下げる。
「きゃあ!」シズクは、びっくりして
小さく悲鳴を上げる。
ハイネがぼそっとぶっきらぼうに
「テメェまた無茶しやがって馬鹿シズク」
「え?」シズクは、ハイネの言葉に
目を丸くする。
ハイネは、シズクの麦わら帽子を見て
(暑い中一人でまた無茶したなこいつ)と
思っていた。
シズクは、(無茶って何の事だろう?)と
首を傾げる。
そんなハイネとシズクのやり取りを
見守っていた他の面々も苦笑していた。
シズクの一人の頑張りをちゃんと見ててくれる他のメンバー達....
こうしてシズクは、今日も皆の笑顔の為に
自分の出来る事を精一杯頑張るのだった。
終点
気が付けば、知らない駅に着いていた。
どうやら 電車の中で寝過ごしてしまったらしい
終点の駅まで着いてしまった私は
途方に暮れる。
いや でも此処でじっとしていても
仕方が無い
私は、覚悟を決めて ええい!ままよと
思い切って 風の向くまま
気の向くまま 体を立ち上がらせて
終点の駅に降りてみる。
降りてみると 私が住んでいる町とは、
趣が違い 朴訥とした古風な家が
疎らに並んでいる。
人は、少ないが 果たして今夜泊まれる所はあるだろうか 所持金が足りれば良いが.... 幸い明日は、仕事は休みだ
独身の身の上故 自宅には、帰りを
待ってくれる人も居ない為
心配を掛ける事も無い
私は、駅から右側の道に行くか
左側の道に行くか 一瞬迷い
逡巡し 建物が疎らに建っている
右側の道を行く事にした。
地元の人に話が聞ければ良いが.....
私は、右側の道を歩き始めた。
果たしてこの選択が 孤独な男に
どんな出会いを齎してくれるのか
今の男には、全く何も分からないのだった....。
上手くいかなくたっていい
失敗しても、それが積み重なって
成功に繋がるなら無駄じゃないって
思うんだ。
君は、失敗したら恥を掻く
皆を落胆させるなんて言うけど
そんな事ないよ!皆ちゃんと貴方の
頑張りを見ていたよ
そんな人達が貴方が失敗した位で
落胆するわけない
だから さぁ行っておいで!
躊躇う君の背中を押し 私は
君の身体をステージへと押し出した。
蝶よ花よ
「お嬢様 お待ちください」そう声を掛け
私は、お嬢様を追いかける。
あの頃のお嬢様は、何にでも興味を持ち
好奇心旺盛で、じっとして居られず
野原や花畑を掛け回り
綺麗な服を良く泥んこにしていた。
気に入らない事があると良く癇癪を起こし
手足をジタバタとさせ 我が儘を言っては、周りを困らせた。
しかし 喜んでくれると花の様な笑顔を見せてくれ 私達もその笑顔にほだされ
ついつい甘やかしてしまう....
こうして、幼少時に蝶よ花よと大切に
大切に育てられた お嬢様は、
成人すると 我が儘は、どこへやら
すっかりなりを潜め 立派なレディーへと
成長を遂げた。
こうして 貴族の子息の元へ嫁いで行った
私達のお嬢様は、一男一女を設け
妻として、夫を支え 立派に家を盛り立てた 大人になったお嬢様だが
あの花の様な笑顔だけは 幼少の時から
変わる事無く 私達や周りの人達の
心を何時までも 何時までも和ませている。
最初から決まってた
最初から決まってた 分かっていた事だった。
僕が、振られるのは、ずっと前から分かっていた事だった。
君が僕じゃ無くあいつを常に見ている事には 気付いていた。
それでも、僕は、この想いを君に
告白した。
返事は、思った通りの....
「ごめんなさい....」だった。
こうして、僕の恋は、呆気なく
終わってしまった。
不思議と告白した事に後悔は無い
悲しく無いと言えば嘘になるが
しかし胸の中にもやもやも溜まらず
寧ろ清々しくすっきりとした気持ちだった。
だって、あいつが良い奴だって
親友の僕は、知っている。
ちょっと調子に乗ってしまう所は、
あるけれど 優しく気の良い奴だって
僕は、知っている。
それに 僕は、あいつの事を話す
あの子の笑顔が一番好きだと
失恋してから、気づいてしまった。
だから 僕は、この結果に心から満足
していた。
数日後 あいつとあの子が 仲良く
手を繋いで歩いている姿を見掛ける。
僕は、「おはよう!お二人さん!」と
親友の肩に腕を伸ばし親友の肩を組む
二人は、僕に気づいて
「「おはよう!」」と声を揃えて
挨拶してくれた。
この日を境に僕達三人の友情が
育まれる事になるとは、
さすがの僕も予想外だった。....。