これまでずっと(番外編)⑨の続き
空を見上げて心に浮かんだこと
(番外編)⑩
●ふわふわした物
ぽかぽかとした陽光の中ハイネは
ふわあと欠伸をした。
そうして窓の外をぼーっと眺めていた。
そこには、大きな青い空とその空に
流れるふわふわな白い雲
ハイネは、何の気なしに考え
(あの雲何かに似てるなあ....)
ふわふわした何かを心の中で考えていると
ハイネの頭の中でふわふわした映像が
流れる。
ハイネは、はっとして、首を振って
その映像を頭の中から消す。
(余計な事考えた....)
ハイネは、溜息をついて心の中を
リセットする。
そうして心の中を無にしていると....
「シズク可愛いね!」と言うナイトの声が
聞こえた。
「ミーナが....やってくれたの....」
シズクが嬉しそうにナイトに見せる。
「シズクの髪長いからアレンジの
し甲斐があるわ!私も髪伸ばそうかしら?」
「そうしたら....髪 お揃いに....出来る...」
シズクとミーナが嬉しそうに盛り上がって
いた。
ハイネは、うるせーなぁと思いながら
皆に視線を向ける。
するとハイネは立ち上がり手を伸ばした。
そうして引っ張る。
「いっ....たい.... ハイネ 痛い...」
シズクのいつもの二つ結びに三つ編みの
編み込みが出来ていた。
ハイネは、そのシズクの三つ編みを
引っ張る。
「痛い....嫌....」シズク一生懸命ハイネに
抗議する。
「ハイネ止めなさいよ!」ミーナも
ハイネに文句を言う。
ハイネは、無言だったがしばらくすると
我に返った様にシズクの三つ編みから
手を離す。
そうしてまた座り込んだ
「ちょっとハイネ シズクに謝りなさいよ」ミーナが眉を吊り上げてハイネに
注意する。
ハイネがちらっとシズクの方を見るが....
「変な髪型....」とハイネはボソッと呟く
「ハイネ!」とミーナがハイネに怒るが
それっきりハイネは、黙ってしまう
(掴みやすいけど....いつもの結び方の
方が....フワフワしてるのに....)
それは、髪の毛がボワッと広がってしまうのがコンプレックスなシズクの為に
ミーナが気を利かせて髪の毛が広がらない
結び方をしたからなのだが....
ハイネにはそれが気に入らないのだった。
ハイネが雲を見て最初に心に浮かんだ
フワフワな物が今日此処にない事が
ハイネには、ちょっと不満だった。
三つ編みの髪型が嫌な訳では、
決して無いのだが....
シズクにとってのコンプレックスが
ハイネにとってはお気に入りである事を
シズク本人は、知らない....
そうしてハイネ自身もそれを決して
言えないのだった。....
二人の気持ちのすれ違いは、
今日も続くのだった....。
終わりにしよう
(終わりにしよう)僕は、そう心の中で
唱え ガラスケースの棺の中の君を見つめる。
(ごめんね、僕は、何も変えられなかった)
君の死を無駄にしてしまった。
あんなにこの国の為に声を凛と張り上げて
戦ってくれた君 最期の最期まで
この国の行く末を憂いていた君
病弱な体に鞭打って方々を駆け回ってくれた君
結果的に体を壊して、死期を早めたけれど
最期まで、恨み言の一つも言わず旅だって
行ったね
だけど この国は、もうすぐ終わる
あんなに争う事は、愚かだと声を
上げたけど誰も頷かなかった。
他国への被害より自国の利益を優先した
僕達の国....
そんな国に、僕は、疲弊を感じていた。
僕は、君みたいに強く無いから
君の居ない世界で、頑張って来たけど
もう限界みたいだ....
だから.... 一足先に終わりにしても
良いよね.... 君は、向こうで僕を怒る
かもしれない 詰るかもしれない
それこそ、初めて恨み言の一つも言うかも
しれない.... それを全部覚悟した上で
僕は、自分を終わりにする。
僕は、ポケットから小さな小瓶を
取り出す そうしてそこに入っている
琥珀色の液体をゆっくりと自分の口元に
持って行きこくんと喉を上下させてその
液体を飲み干した。
僕は、静かに目を閉じて 君が眠る
棺のガラスケースに背中を凭れさせ
君が待つであろう世界を夢見て
君の元へ旅だった。....
この道の先にの続き
手を取り合って
ミーナ ナイトは、ハイネが連れて来た
魂に目を丸くする。
「ハイネ....これは、一体....」
『やあやあ初めましてだね 美男美女君
良かったらお名前を教えてくれるかい?』
しかしミーナとナイトには、魂の声は
聞こえ無いらしく固まったままだった。
仕方なく、ハイネが通訳する。
「名前を教えろってさ!」
「この魂喋るの!」ナイトが更に目を丸くする。
二人は、魂をまじまじと見て
自己紹介する。
「ナイトジェッツです!」
「ミーナリースです!」
『ナイト少年にミーナ少女だね!
よろしく頼む 僕の事はハイネ少年に
賜ったタマと呼んでくれ』
ハイネは、タマの言葉をそのまま二人に
伝える。
二人に「タマは、ちょっと安直すぎない」
とか「もうちょっと考えれば良いのに」
とか言われたが ハイネにとって名前なんて呼びやすければどうでも良いのだった。
タマ本人も気にして無いのでとりあえず
お互いの自己紹介を終え
ハロルド局長とマリアにもタマを紹介する
為に局長室に向かう。
二人はタマの姿を見ても驚いた様子も無く
そうして合点が行ったと言う感じで
頷き 深刻な顔で三人に話し出した。
「丁度 三人を呼び出そうと思っていたんだ 今バインダー局は、慌ただしくてね
大勢のバインダーの人達が魂狩りに
駆り出されているんだ。」
「そう言われるといつもより人の出入りが
激しかったような...」ナイトが建物内の
様子を振り返る。
「魂の穢れがあちこちで、発見されて
いるんだ こんなに魂達が一斉に穢れる
のは、かつて無かった事だ。」
「調べた結果 偶発的な物では無く
誰かが意図的に魂達を魂の道から外れさせている可能性が高いの!」
そうしてマリアが一枚の資料を皆に
見せる。
その資料には、フードを被った怪しい男が
映っていた。
「穢れが発生した現場の監視カメラを
調べたらこのフードを被った男が悉く
映っていた。
この男の足取りを調べた所 ある建物に
辿り着いた。」
マリアがもう一枚の資料を皆に見せる。
そこには、豪奢な洋館の写真が載って
いた。
「その建物と土地の所有者を調べた所
ある名前が浮上した
ゼノファーラム」その名前に三人は
目を丸くする。
「ファーラムって....」ミーナが呟く
ハロルド局長が机に肘を突き
両手の指を組んで答える。
「シズク君のおじい様の名前だよ!」
「これがその建物の住所です」
マリアがそれぞれの端末に座標を表示する
シズクと言う言葉にハイネは、
居ても立っても要られずバインダー局を
飛び出した。
『ハイネ少年 待ちたまえ』
自分を呼ぶ声にハイネは、足を止める。
『僕も其処に連れて行ってくれないか!
予感がするんだ 僕の片割れは間違い無く
其処に居る』タマがふわふわと浮きながら
ハイネを呼び止める。
ハイネは、無言で頷き今度こそ歩き出そうとした時.... 「「ハイネ!!」」
今度はミーナとナイトの揃った声がした。
「一人で突っ走らないでよ!」ナイトが息を吐きながらハイネに言う
「そうよ!一人で格好つけてずるいわよ
私達だって シズクの事が心配なのに...」
ミーナが泣きながらハイネに訴える。
「それに僕達は、チームでしょう!」
ナイトがポンとハイネの肩を叩く
ハイネはナイトの言葉に目を丸くし
すいっと視線を横にずらし
ぶっきらぼうに言う
「二人とも遅れたら置いてくからな
足手まといは、いらねェ」
「誰に言ってんのよ!」ミーナが怒った
様に眉を吊り上げ
ナイトがハハッと笑いながら....
「じゃあ行きますか 僕達のお姫様を
救いに....」と最後にナイトがハイネに
そう悪戯っぽく笑って、
三人は、駆け出した。
こうして三人の手に手を取り合っての
お姫様(シズク)救出作戦が始まった。
届かぬ想いの続き
優越感、劣等感
僕は、優越感の塊で劣等感の塊だ。
僕は、勉強も運動も人より特出して
出来るけれど 僕は、唯の凡人だ。
人より予習 復習して テストの出題範囲を予想して 運動テストも平均記録を
少し超えるか超えないかをキープして
あまり目立たずけれど凡人よりは少し上を
何とか装おっているだけの張りぼてだ。
本当の僕は地味で根暗で コミュ障で
人と関わるのが苦手で 集団行動が出来なくて 一人が楽と思っている
冷たい人間だ なのに....
「また 負けた~」と僕の隣で項垂れる
僕の友達
彼は、眉目秀麗この言葉をそのまま体現
した様な美少年で勉強も出来て
運動も出来る そして誰もが彼に憧れて
いて仲良くなりたいと羨望の眼差しと
期待をいつも向けられて居る。
そんな彼が 何故僕なんかに拘るのか
永遠の謎である。
彼はいつも僕と比べたがるけれど
一位と二位の差なんてほんの僅差だ
それに彼は真面目にいつも勉強しているけど 僕は、テスト前位しか勉強していない
こんな不真面目な僕に勝ったからって
何だって言うんだ。
君は、いつも真っ直ぐで優しくて
本当は、人気者になれるのに
僕なんかと一緒に居なければ....
「おい!聞いてるのか!」
僕は、はっと我に返り
「あっごめん何?」
彼は、僕が上の空なのが気に食わないのか
不機嫌になる。
「間違った所見直してるのに....
お前全然聞いて無いだろう」
「いや 聞いてたけど....
君のは間違いと言うか言葉が足りなかっただけで 構成は僕より全然良いじゃない
それに点数の差だって僕のはプラス
加点されただけで君の答えは間違いでは
無いんだし....」しかもほぼ ほぼ
先生の問題の作り方の文章の違和感を
指摘しただけだ。
半ば 脅しと近いかもしれない
百点満点のテストに無理矢理プラスして
105点にして貰ったこじつけの点数だと
言うのに....
僕は、唯ひねくれているだけ
君の様に純粋に問題と向きあえてたら
また違うんだろうな....
「それでも、負けは、負けだ!」
君は、ぷくっと頬を膨らませて
口をへの字にする。
その顔を見て僕は、苦笑する。
僕は、自分の事が嫌いだ だから常に
劣等感の塊で.... でも君が僕を
追いかけて来てくれるから
いつでも優越感の塊も僕の中に燻っている。
僕の何がそんなに良いのか....
僕自身には、さっぱりだけど
君が僕を手放さ無い限り僕は君の友達で
あり続け様と思うんだ。
ありがとう 僕の友達と
僕は、君を宥めながらそんな事を
思っていた。
七夕(番外編)⑧の続き
これまでずっと(番外編)⑨
●シズクの苦手克服大作戦
シズクファーラムと言う少女には、
苦手な物が沢山ある。
虫 怖い話 露出の多い服を着る事
初対面の人と喋る事 大きな声を出す事
等々 数を上げればキリがない程
苦手な物が多い
中でも一番接する機会が多い苦手が
運動だった。
シズクは、運動が苦手だった。
体を動かすのは、嫌いではない
寧ろそれ自体は、楽しい
しかしシズクは、運動音痴だった。
球技系のスポーツは、ボールを投げると
遠くへ飛ばないし ボールを受け取ろうと
すると強い力に弾かれ取りこぼすし
体をボールにぶつける事も多い
プールや海に行くと浮き輪は、手放せない
必需品になっている。
おまけに顔を水に付けるのが怖くて潜る事も出来ない
これまでずっと運動は、避けて来た
皆がやるのを見てるだけで十分だった。
しかしそれだと周りの皆もシズクに
気を遣って楽しめない
だからシズクは、決意した。
一つだけでもちゃんと出来るスポーツを
増やそうと頑張るシズク
そうして季節は冬
ウィンタースポーツの定番はスキーや
スノボー等々
と言う訳で今日は皆でスケートに来ていた。
そうしてシズクは、最初に言った通り
運動音痴なので、スケート靴を履いたまま
上手く歩けない歩くと転ぶ転ぶ
なのでミーナとナイトに手を繋いで貰っていた。
「ごめんね....ミーナ...ナイト....」
シズクは、申し訳無さそうに謝る。
「良いのよ初めてなんだから最初は皆
こんな物よ」
「そうそう 寧ろちゃんと歩けてシズクは
偉いよ!」二人は、優しくシズクの手を
取って褒めてくれる。
シズクは、二人の優しさに胸が暖かくなり
「ありがとう」と二人にお礼を言う
こうして三人で手を繋ぎゆっくりと滑り
三人の中で穏やかな時間が流れる。
シズクも楽しくなって思わず笑い声が
漏れる。
しかし世の中は、そんなに甘くは無かった。
世の中は、アメ(優しさ)とムチ(厳しさ)で
出来ている。
シズクは、(アメ)優しさ代表の二人に
褒められて嬉しくなってすっかり忘れていた。
苦手を克服すると言う目的を....
このまま二人に手を繋がれながら滑るのも
もちろん間違いでは無い
しかしそれでは、皆を自分のペースに
合わせてしまう
何より出来るスポーツを一つ増やすのが
シズクの最初の決意だった。
そんなシズクの目的を思い出させる様に
ムチ(厳しさ)がやって来た。
「テメェら チンタラチンタラ滑ってんじゃ
ねェ!」吊り上がった鋭い目を険しくして
ハイネが三人を睨む
「何よ良いじゃない別に...」とミーナが
ハイネを睨み返す。
「テメェら二人シズクに甘すぎだろう!
シズク テメェもミーナとナイトに
甘えてないで自分で滑れる様になれ!」
とハイネの叱咤にシズクは、ハッとなり
「うん....頑張る....!」とシズクが片手で
小さく拳を握る。
シズクのその言葉にハイネはニヤリと笑い
「よし!その言葉に嘘は、ねェなぁ!
だったら俺が今日中に滑れる様にしてやる」
「よろしくお願いします。....」
シズクはハイネの言葉に素直に頷いた。
二人のやり取りにミーナとナイトは
心の中で(大丈夫かなあ...)と思っていた。
こうしてハイネとシズクのマンツーマンの
特訓が始まった。
すると....「きゃあああーっ」シズク
ドッテンバッタンと転ぶ転ぶ
ハイネはミーナやナイトみたいにシズクに
手を貸さない 正にムチの指導だった。
「ほらどうした!!もう終わりか!」
「う~....痛い~.....」シズクが涙目になって泣きそうになって思わずミーナとナイトが駆け寄ろうとすると....
「お前ら駆け寄るんじゃねェ
邪魔だ向こう行ってろ!!」
ハイネが二人を睨む
ミーナが「ハイネあんたやり過ぎよシズクが可哀想じゃない」と抗議しても
「うるせー俺のやり方に口出しすんじゃねぇ!」ハイネが二人に怒鳴る。
「シズク下向くな真っ直ぐ前見ろ!
軸がぶれてんぞ!」
シズクがハイネの言う通りに前を向いて
姿勢を真っ直ぐにすると奇跡が起きた。
バランスが取りやすくなりすーっと体が
前に進んだ。「で....出来た...」シズクは
嬉しくなり思わず皆の方を見る。
「シズク危ない!」ミーナとナイトが
揃ってシズクに大声で叫ぶ
シズクが前を見ると眼前に壁が迫っていた
しかしシズクはまだ曲がるのが上手く
出来ないこのままじゃ顔面を壁に
ぶつける。
シズクは怖くなって目を瞑る。
しかしシズクの体が壁にぶつかる事は
無かった。
シズクの体をしっかりと前面で受け止める
ハイネの体があった。
シズクは涙目でハイネの顔を見る。
ハイネは呆れた様にシズクを見て
「ったく 調子に乗るんじゃねェよ!」
そんなハイネの言葉にシズクは安堵して
ハイネにしがみつきながら
「ごめんなさい....」とハイネの胸に自分の
顔を埋める。
ハイネはシズクの顔を自分の方に向かせて
シズクの泣き顔を見ながらシズクの耳元で
「馬~鹿」と囁いた。
シズクはそんなハイネをキョトンと見上げる。
そんな二人を見守るミーナとナイトは....
「あ~あハイネったらあんな幸せそうな
顔しちゃってあれ多分自覚ないよ!」
「何がシズクを甘やかすなよ自分が
一番甘やかしてるじゃない!」
ミーナとナイトの視線の先には
普段の鋭い目つきを緩ませて
幸せそうに口元を笑ませるハイネの笑顔が
あった。
その笑顔に他にスケートをしていた
女性達が見惚れて居るがハイネは
気付かない
こうしてシズクの苦手克服大作戦は
今日中にとはいかなかったがスケート靴で
ゆっくりとだが補助無しでも滑れる様になったのだった。
これまでずっと(番外編)⑨その2
●ハイネのムチ(最終的にはアメ)
今日は、四人でスケートに来ていた。
ハイネは、別にスケートなんてどうでもよかったがいつもの如く押し切られ
流される様に付いて来た。
そうしてスケートリンクの上を楽しそうに
滑っている人を横目に眺め
自分の連れの三人を眺めていると....
「....ごめんね....ミーナ....ナイト...」
「良いのよ初めてなんだから最初は
皆こんな物よ」
「そうそう寧ろちゃんと歩けて
シズクは、偉いよ!」
などとふんわりとした暖かい空気を
纏いだす三人
シズクの笑い声まで漏れてきて
楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
ハイネは、そんな空気を目にして
(温ィ~)と思っていた。
(あの二人シズクに甘くないか....)
何より現状に満足して楽しそうにしている
シズクの笑顔がハイネには気に食わなかった。
「テメェらチンタラチンタラ滑ってんじゃねェ!」
「何よ良いじゃない別に....」
ミーナがハイネに文句を言うが
ハイネは言葉を続ける。
「テメェら二人シズクに甘すぎだろう!
シズクテメェもミーナやナイトに
甘えてないで自分で滑れる様になれ!」
ハイネの言葉にシズクは、何かを思い出した様にハッとなり「うん....頑張る....」と
答える。
シズクのその言葉にハイネはニヤリと笑い
「よし!その言葉に嘘はねェなあ
だったら俺が今日中に滑れる様にしてやる」
シズクは、ハイネの言葉に小さく拳を
握り「よろしくお願いします....」と
答えるのだった。
その後シズクは、バランスを崩しそうに
なり悲鳴を上げながら何度も転んだ。
「ほらどうした もう終わりか!」
途中ミーナが駆け寄りそうになったが
ハイネが大声を出してそれを止める
「お前ら駆け寄るんじゃねェ邪魔だ
向こう行ってろ!」
「ハイネやり過ぎよシズクが可哀想じゃない」
「うるせー俺のやり方に口出しすんじゃ
ねェ」ミーナを一喝しハイネはシズクへの
指導を続ける。
「シズク下向くな真っ直ぐ前見ろ
軸がぶれてんぞ」
シズクの姿勢が真っ直ぐに伸びた時
シズクの体が補助無しで前に進んだ。
シズクは、嬉しくなり
思わずミーナとナイトの方を見る。
その瞬間(あの馬鹿...)とハイネはスケート靴のまま滑り駆けた。
気がつくとハイネは、シズクの小柄な体を
抱き締めていた。
「ったく調子に乗るんじゃねェよ!」
呆れた様にシズクを見ると
「ごめんなさい....」と泣きながら縋る
様にハイネにしがみ付いていた。
ぐずっ ぐずっとハイネの胸に自分の顔を
埋めて泣きじゃくるシズクの声を聞いて
ハイネは自分でも良く分からないが
シズクの泣き顔を見たい衝動に駆られる。
シズクの顔を自分の方に向かせると
涙の跡がシズクの白い頬に筋を作って
いた。
丸い大きな瞳から大粒の涙の雫をいくつも
溢れさせるシズクの顔が可笑しくてたまらない 思わずハイネはシズクの耳元に
「馬~鹿」と囁く
シズクはそんなハイネをキョトンと
見上げる。
そんなシズクの表情がハイネには可笑しくてたまらない
ハイネは自分では気付かぬ内に
優しい笑顔になっていた。
何だかシズクの泣き顔をいつまでも
眺めていたいと思うハイネだった。