また明日
「また明日」そう言葉を交わし合える
一日一日がとっても幸せな事なんだと
また明日が来る事がとても恵まれた事なんだと君の存在を失ってから
初めて気付く
ありがとう僕と友達になってくれて
僕の隣に居てくれて
ごめんね
君の気持ちに気付いてあげられなくて
君にとっての明日は恐怖でも
あったんだね
『また明日』この言葉は君にとって呪いで
あり おまじないであり
自分を奮い立たせる言葉でもあった
そんな君の事を僕は、何も分かって
いなかった。
僕は君の支えになっていたのかなあ....
自信は無いけど最期に会った君は
陽だまりの様な笑顔を浮かべていたから
君の人生は幸せだったと僕は思うんだ
僕は時々君を思い出す そして君の分まで
精一杯生きて行く。
透明
透明度100%みたいなクリアなガラス
向こう側が透けて見える様な鏡面
その鏡面の向こう側に微かに儚げに
映るもう一人の私じっと向こう側を目を
凝らす様に覗くと.....
「ねぇ 私と交換しましょ?」
空耳かと思う程小さな声で
声が聞こえた。
私は、訝し気に鏡を覗き込み
鏡面に手を付いた。
すると するするすると体がガラスを
通り抜けた。
向こう側を覗くと私が立っていた。
もう一人の私はにやりと口角を歪め
私を見ていた。
私の口元ももう一人の私を真似る様に
にやりと歪む
あれ 可笑しいなあ別に笑いたい訳じゃ
ないのに....口元が上がるのが
止められない まるで体が自分の意思を
無視して動いている様な
体のコントロールを誰かに乗っとられた
様なそんな感覚で私は鏡の向こう側を見る
もう一人の私は最後通告の様に私に告げる
「貴方と私いずれどっちが本人かだったなんて忘れる位 貴方はそっち側に馴染むわ
そしてそれは 私も一緒 貴方の口調も
癖も好みも私は寸分違わす真似る事が
出来る だって私は貴方なんですもの
ずっとずっと貴方を余す事無く見てきたん
ですもの だから大丈夫 心配しないで
上手くやるわ 誰も貴方と私が入れ替わった事に気付かない位に上手くだから
貴方はそっち側で私を見ていて永遠に」
もう一人の私の言葉に私は拒絶反応を
示したいのに体が言葉がもう一人の私を
真似る様にもう一人の私が言った言葉を
繰り返す。
頭の中では警報が鳴っているのに
抗えず何も出来ず拒絶する事も出来ず
私は透明なガラスの中に溶けて行く
そして数年後 私は鏡の中に閉じ込められた事実をすっかり無くし鏡の中の自分に
何の疑問も抱かず寧ろ最初から鏡の中に
居たかの様に鏡の向こう側を見ていた。
同時に私を鏡の中に閉じ込めたもう一人の
私も鏡の中から来た事実をすっかり忘れ
初めから自分が本人だったみたいに
私が当たり前に過ごしていた日常を謳歌
していた。
もう一人の私が鏡の中を覗き込み
私に近づく私は何の気無しに
口角を上げて言ってみる。
「ねぇ私と交換しましょ?」
果たしてどちらが本物でどちらが偽物だったのか一番最初に鏡に閉じ込められたのは
本当はどちらだったのか.....
その答えは、不透明だった....。
理想のあなた
今までは君の理想に近づこうと気を張って
肩肘を張って 息をつけなかった。
そんな僕を君は見透かして
「理想は理想であって あくまでタイプの
話しであって 理想のタイプと
好きになる人の事は違うからね
あなたは あなたのままで居てくれないと
私が困るから 変に理想を意識しないで
あなたは あなたのままで居てね」
そんな君の言葉で僕は ほっと息を
吐けたのだった。
突然の別れ
僕が病院に駆けつけた時には君の顔には
白布が掛けられていた。
まだ仄かに暖かい君の体温この体温が
徐々に冷たくなって行くのが信じられ
無かった。
昨日別れた時の君の笑顔がまさか最期に
なるなんて予想出来る訳無いだろう
眠っているかの様な君の寝顔が
もう二度と起き上がら無い死に顔だなんて
そんな事思いたく無かった。
突然の事に涙も出なかった。
ただ君の白い肌を撫でいつまでも君の体温をこの世に留め様と必死に自分の手を
動かし君の肌を摩っていた事に僕が
気づくのは、しばらく立った後の事だった。....
初恋の日の続き
恋物語
不遇の扱いを受けた主人公がお城の王子様と結婚する。
身分違いの恋 幼馴染みとの恋
遠距離恋愛 年の差の恋
世の中には、色々な恋物語が溢れている
ロマンス小説 恋愛映画 ドラマ
そんな恋物語を見るのが
シズクファーラムと言う少女は好きだった。
確かに恋が叶わない失恋の物語もあるけれど きっと恋は楽しい事ばかりでは
無いのかもしれないけど でも仲間である
ミーナやナイトの仲良しぶりを見ると
心が温かくなり微笑ましくなる。
二人の幸せを心から願いこれからもその
幸せがずっと続く様に祈る。
シズクにとって仲間達が幸せそうにして
居るのが大好きだった。
いつまでも皆と一緒に居たいけれど
でもいつかは皆と一緒に居る時間は
終わってしまう事もシズクは
分かっていた。
ミーナとナイトはきっとこれからも一緒に
居るだろう
ハロルド局長やマリアさんも帰る家や
帰りを待つ家族が居るだろう
そしてきっとハイネにもいつかずっと居たいと思える人が現れるのだろう
その時シズクは実家に帰らなければ
ならなくなるだろう
シズクはそれを思い気持ちが沈んだ。
実家の事を思うとシズクは
申し訳無い気持ちになる。
『ごめんなさい.... ごめんなさい
お父さん お母さん 弱くてごめんなさい』
治癒術を使えても大きい怪我は治せない
力は弱いし戦う力も無い
いくら術の練習をしてもシズクの力は
それ以上 上がる事は、無かった。
私は、いつも誰かの足でまといにしか
なれない
それでも自分の出来る事を頑張ろうと
決意したばかりなのに....
また気持ちが揺らいでしまう....
『君は誰かを不幸にする君に向けられた
好意を台無しにする だから君は
誰も好きになってはいけないよ
特別を作ってはいけないよ』
シズクは頭を振る。
(私は....皆が....好き.... 皆が....幸せ...
なら.....私も....幸せ)
恋と言う物はまだ分からない
いつか分かる日が来るのかも知れ無い
けど.... でもそうなっても私の恋は
叶わなくて良い.....
そんな事をシズクが考えて居たら....
ドアが開く音が聞こえた。
「あんた こそこそしてないでいい加減腹決めなさい!」
「そうだよ せっかく此処まで来たんだから会いに行けば良いじゃない!!」
ミーナとナイトの声が聞こえる
何だろうとシズクが首を傾げていると
ミーナとナイトに押されて前に出て来たのはハイネだった。
シズクはいきなり目の前に現れた
ハイネに目を丸くする。
何だかハイネと会うのは久しぶりな気がする。
体調が良くなったみたいでシズクは
ほっと安堵した。
「ハイネ....良かった....元気に....なって...」シズクはハイネにそう声を
掛けたがハイネは無反応だった。
しかも目を逸らしたままだった。
しかしシズクにとってハイネのそんな
態度はいつもの事なので特に気にしてなかったのだが
ハイネの腕が自分の頬に伸びて来た
元気になったのは良いがまた頬を
つねられたり髪の毛を引っ張っられたり
意地悪をされるのかと思ったら
シズクの肩はびくんと上がり
身構えた。
しかしシズクの予想に反してハイネの手が
シズクの頬をつねる事はなかった
それどころか優しく髪の毛を指先で梳き
頬にそっと手を添えられる。
「テメェ何で泣いてんだよ!」
「え....」そう指摘されシズクは初めて
自分が涙を流している事に気づく
そうしていつの間にかミーナとナイトの姿は無くハイネと二人きりだったと言う事にも....
「な....何で....だろう 分から...無い
目に....ゴミが....入ったの....かなあ....」
「ちっだったらもっと大声で泣けよ
分かりづれェんだよ!」
ハイネにそう言われてもシズクは大声では泣けなかった。
しかし意識してしまった涙は拭いても拭いても流れてきて止められなくて
シズクはどうすれば良いか分からなくなって居た。
するとハイネに突然腕を引っ張っられ
引き寄せられ気付けば自分の体がすっぽりとハイネの体に包み込まれていた。
シズクがびっくりしてハイネを見上げると
ハイネは口元を上げてしてやったりの笑顔を浮かべた。
「お返し」とハイネが呟く
シズクはお返しって何の事だろうと
疑問符を浮かべたが ハイネの暖かな
腕の中に居る今だけは何も考えず
ただ自分の涙が止まるまでハイネの腕の力は緩む事は無くシズクはハイネに自分の身を預けたのだった。
シズクファーラムと言う少女の恋物語は
まだ始まってはいない
いやもしかしたらこれから始まるのかも
しれないそれは誰にもシズク本人にも
まだ分からない事だった。
恋物語②
ハイネは久しぶりにバインダー局に顔を
出したもののさっきからロビーの辺りを
うろうろしてるだけで一向に中に
入れなかった。
(やっぱり辞めよう....)と心の中で何回も
思ってそれでも踵を返す事が出来ず
立ち止まってはうろうろを繰り返していた。
(いきなり入って顔を合わせたらどうしよう....) いやでもだいたい部屋に入ってる
だろうし 出入り口で本人に会う確率なんて低いはず.....
そう思いなけなしの勇気を奮いドアを
開けるハイネ
其処には目を吊り上げ腕組みして
怒ってるミーナと苦笑してやれやれと首を振るナイトの姿があった。
ハイネは、二人の表情を見てたじろぐ
「あんた一ヶ月も休んで何やってんの!」
「まぁだいたい休んだ理由も想像付くけど
シズクも心配してたよ....
何回も様子を見に行った方が良いか
聞いてきたし まぁ今シズクに会うのは
ハイネには酷かなあと思って大丈夫だよって言って止めといたけど.....」
「今シズク呼んで来るからちゃんと
シズクにも顔見せなさい心配してたんだから!」ミーナがシズクの部屋に行こうと
したのでハイネはミーナの腕を引っ張り
止める。
「呼ぶな....」それを聞いたミーナは
「はあ!っ💢」と声に怒気をはらむ
しかしハイネはもう一度懇願するように
「よ....呼ばないで下さい お願いします...」
それを聞いて二人は呆れる。
此処まで来といて何言ってんだこの男は
最早恋愛下手を通り越してただのヘタレだった。
二人はハイネに任せていたら埒が明かないと二人でハイネの腕を引っ張り
「あんたこそこそしてないで良い加減 腹
決めなさい」
「そうだよせっかく此処まで来たんだから会いに行けば良いじゃない」
二人でシズクの部屋のドアを開け
ハイネを押し出しドアを閉める。
二人に押し出され出るに出れなくなったハイネ
おまけにドアが閉まり際に二人に
「ハイネ 君そろそろ....」
「シズクに告白しなさい!」
なんて言われたものだから
ハイネの心は落ち着か無かった。
「ハイネ.....良かった....元気に....なって...」
シズクの声が聞こえハイネの体は
びくんと固まり何も返せなかった。
目線もうまく合わせられなかった。
(はぁ....っ こっ告白とか なっ何言ってんだあいつら....)
ハイネは、シズクの表情に少しだけ
目線を合わせた。
するとシズクのその表情を見て....
ハイネは思わず腕を伸ばす。
シズクの髪の毛に指先をかけ優しく梳く
様に髪の毛を撫でる。
そうしてそっとシズクの頬に手を添える。
「テメェ何で泣いてんだよ!」
「え....」ハイネの指摘にシズクは今自分は
気づいたみたいに目尻の涙を自分の手で拭く 「な....何で....だろう....分から....
ない....目に....ゴミが....入ったの....かなあ....」
そんなシズクの言葉に何だかハイネは胸が
痛くなり腹が立った。
(何だよ今まで一人で泣いてたのかよ...
今気づいたみたいに分からなかったみたいに言うなよ 無自覚で泣くなよ
何でこいつはいつも人の事は嫌になる位
心配するくせに自分の事は無頓着なんだよ)
「ちっ だったらもっと大声で泣けよ
分かりづれぇんだよ」
そうハイネが声を掛けてもシズクは涙を
拭いて静かに泣くだけだった。
(もっと俺がお前を泣かす時みたいに
大声で泣けよ 嫌いでも馬鹿でも良いから
俺を拒絶した時みたいにわがままでも
やつあたりでも良いから俺を捌け口に
しろよ クソっ馬鹿シズク)
ハイネはたまらなくなりシズクの腕を
引っ張り自分の体でシズクの小柄な体を
包み込んだ。
あんなにシズクに触るのを躊躇していたのに....
(何だかあの時と逆だなあ....)
シズクに優しく抱きしめられたあの時と....
ハイネは思わずしてやったりの表情を
浮かべ「お返し」と呟いた。
シズクは混乱した様に目を丸くしていたが
そんなシズクの顔を見てハイネは抱きしめた腕に力を込めた。
シズクが泣き止むまでハイネの腕の力が
緩む事は無かった。....
ちなみにハイネは結局シズクに告白は
できなかった。
しかしシズクの部屋に入る前と後では
入った後の方が明らかに落ち着いていて
無言だった為 何か良い事があったなと
察したミーナとナイトは 今日の所は
ハイネをこれ以上急かすのを辞め
またいつもの様に二人を見守るのだった。