ところにより雨
「今日の天気は 晴れ時々ところにより雨
でしょう」天気予報から流れるそんな予報を聞き一応 折りたたみ傘を鞄に入れて
おいた。
予報は見事に当たり途中から雨が
ぽつり ぽつりと降って来た。
僕は傘を持って来た事に安堵して
これ以上雨脚が強くなる前に
家路へと急いだ。
特別な存在
「レディ&ジェントルマン お集まりの
紳士淑女の皆さん今宵はこの私のステージに足を運んで下さりありがとうございます。」私は腕を胸に当て深々とお辞儀を
する。
「さて今宵見せますステージは観客席の
皆様の協力が必要です。
今からステージの協力者をランダムで
選びたいと思います。」
そうしてステージのスポットライトが
前列 真ん中 後列 2階席と順々に
光って行く。
そうして いきなりバッとライトの光が
一点に集中する様に光った。
そうして光の中に一人の男性が目を白黒させながら 何が起こったか分からない感じで周りを見ていた。
私はステージの上から即座に大きな拍手を
する。
そうして大げさな程 声を大きくし
身振り手振りを激しくした。
「おめでとうございます 貴方は選ばれた
特別な存在です。
どうぞステージの方へお越し下さい!」
私の拍手につられる様に観客からも
大きな拍手が鳴り響く
選ばれた男性は、最初はおっかなびっくりと ステージに上がってからは誇らし気に
笑みを見せて観客の拍手に応える
私はそれを見て小さく笑みを浮かべる
さあて本番は此処からだ
私の役目は如何にして彼を輝かせるかに
思考がシフトする。
彼に特別感を与えたからには此処からは
彼のステージだ。
協力者など名ばかりの口実に過ぎない
今からは彼が主役
私が彼のサポート役だ
さあ 観客を彼の魅力に引き寄せる
イリュージョンを開始しよう。
バカみたい
教室の自分の席で頬杖を突きながら
俯瞰した視点で教室内を眺める
バカみたいにふざけ合って
バカみたいに他愛も無いお喋りをして
バカみたいに笑い合うそんな光景を
バカみたいに一人眺めて心の中で羨ましい
と思っている自分が一番バカみたいな
存在なのに.....
今日も今日とて ぼっちを気にして無い振りをしてバカみたいに一匹狼を気取る
そんなバカみたいな自分が一番バカみたいだ。....。
二人ぼっち
荒廃したこの世界で君と二人だけの世界
二人ぼっちの世界
一つ良い事があるとすれば一人ぼっちでは
無い世界だと言う事 一人きりでは無い
世界だと言う事
君と二人でこの世界を回り
君と二人で食事を取り
君と二人でお風呂に入り
君と二人で就寝する
この世界でたった二人きり
でも君が居ればどんなに寂しくがらんどうの世界でも 私は生きて行ける
君もそうだったら良いなあと願いながら
今日も貴方と私二人だけの日常が
始まる。....。
夢が醒める前に
気が付いた時には、視界が霞みがかった
みたいにぼやけて居た。
霧状の靄が僕の周りを覆っていた。
僕は視界の不安定さから逃れようと
叫びだそうとした。
しかし声は声にならず言葉は言葉にならず
僕は誰かの名前を叫ぼうとしたのに
思いだせない
この不安定な世界で僕はたった一人きり
ふとその時 音が聞こえた。
耳の中ではっきりと
僕は音の出所を探そうと霧がかった視界の
中 足を前に踏み出した。
懸命に懸命に前へ進んで するとしばらく
して ぽっかりと闇みたいな穴が空いて
居る所に出た。
僕はその穴を視界に捉え今まで順調だった
足並みを止めた。
何となくあの穴の中に入れば外に出られると頭の中で過った。
外? 此処は何処なの?
不安に駆られ今度は足を進ませる事を
躊躇した。
今度は逆に此処に居たいと外に出たくないという思考が過った。
穴の中に入りたくないだってあの中は....
僕の手足は震えて来ていた。
何故かは僕にも分からないのに不安が伝わって瞳からも訳も分からず涙が出た。
怖い 怖い 怖いよ....
僕は不安に押し潰されそうだった。
その時 僕の耳元で何かが囁いた。
(大丈夫だよ!)その声が何かは僕には
分からない
だけどその声は僕を励ます様に
(さぁ勇気を出して!)と僕の背中を押す
様に声を掛ける。
僕は足に力を振り絞って その声を導にして穴の中に力いっぱい飛び込んだ。
次に気が付いた時 僕は仰向けに地面に
横たわっていた。
瞳から涙の雫が頬を伝っていた。
横に伸ばした腕をふと上げてみると
手の平に赤い液体が付いていた
横を見ると地面に赤い絨毯を広げた
様に目を瞑って眠っているかの様な君の
姿があった。
嗚呼 嗚呼と僕は悟った。
あの声は君だったのだと 君は必死に僕を
引き上げ様と僕に呼びかけて手を伸ばして
くれて居たんだね.....
でも僕は....あの声が君だと分かって居たら
僕は現実に戻る事を躊躇しただろう
あの世界が夢だと分かっていたら
僕は夢から醒める前に君に駄々をこねて
君を困らせていただろう。
君は夢だと僕が気付かない内に僕の意識が
ぼやけている内に強引に僕を促し
背中を押した。
全く酷いよ君は.... 夢だと気付かせない
なんて..... せめて最期にさよならを
言う時間位くれたって良いのに....
「っ.....うっうっうわああああーん」
僕は泣いた仰向けになりながら血塗れの手で自分の目を覆いながら 力の限り
声が枯れるまで泣いた。
頭の中で君が笑いながら
「そんなに大きな声で泣けるなら
君はまだ生きられるね良かった」と安心する様に笑顔を見せる君の顔が浮かんだ。
何が良かっただ 君の居ない現実で僕に
生きろって言うのか 勝手だ 勝手だよ
夢から醒める前にさよならさえ言わせて
くれない君の事なんかを....
僕が嫌いになれない事も知っているくせに
.....。