大好きな君への続き
胸が高鳴る
ハイネクラウンと言う少年の胸が高鳴る事は一つしか無かった。
幼い頃から魂の色が見えていたハイネ少年は普通の生活は出来なかった。
両親はそれなりに良くしてくれたが
手のかかる子供には変わりなかった。
そんな少年に転機が訪れたのは
バインダーと言う仕事を紹介されて
適正を見抜かれた時だった。
以来 家族と離れて一人暮らしをし
魂狩りと言う行為に嵌まって行った。
胸が高鳴りワクワクして心臓の高鳴りを
感じるのが心地良かった。
魂を狩って 狩って 狩り尽くし専用の
武器で薙ぎ倒す爽快感は堪らなく高揚した。
たまにこっそりバインダー局に提出する分の余った魂の味も最高だった。
一つ一つ 一人一人の魂の色が澄んだ色で
あればある程美味だった。
そんな順調だったハイネの生活に
もう一つの胸の高鳴りがやってきた
のは四人一組になってチームを組まされた
時だった。
ハイネとしては一人で充分だったが
ある程度一人で戦う経験を積んだら
チームワークを学ぶのが決まりらしく
強制的に組まされた。
そうして組む事になったのが今の三人である。
どうしてこの三人と組まされる事になったのかは未だに理由は分からない。
ミーナとナイトは出会った当初から
相思相愛だったので愛だの恋だのが二人の
周りを飛び交っていて最初の頃はうざいと
しか思っていなかったハイネ
シズクに至っては第一印象では
おどおどびくびくして泣き虫で怖がりで
何でこんな奴がこんな仕事をしているのか
疑問しか無かった。
正直最初の第一印象では三人の中で一番嫌いだった。
しかし怖がって居る割には決してこの
仕事を辞めようとせず 戦闘要員には
なれなくても 治癒術という能力で
他人の怪我を治す事に従事している
シズクの姿を見て弱いだけだと思っていた
印象が少しずつ変わり口では決して認めないハイネだが だんだんと ただ弱い訳では無いと認めて来ていた。
月日は流れだんだんとチームで居る事に
慣れて来た頃 人見知りが激しいシズクも
ミーナやナイトには心を開く様になってきていた。
しかしハイネには未だにびくつく事が
多かった。
それがハイネには気にくわなかった。
自分の目つきが悪い事は自覚しており
今までにもシズク以外にびくつかれる事も
多かった だからそんな反応にも慣れて居た。
だからいつもみたいに気にしなければ
良いはずなのに何故かシズクにそんな反応をされるとむかっ腹が立って仕方が無かった。
だから八つ当たりの様にシズクの事を
苛めていたら益々距離を取られた。
それにシズクがミーナやナイトに笑顔を
向けるのを視界に映すたび胸が苦しく
高鳴る事が増えて行った。
この高鳴りは、魂狩りに勤しんで
バッタ バッタと穢れを浄化して味わう
爽快感や高揚感とは違い苦しくて痛くて
不快な物だった。
早くこの高鳴りを手放したくて仕方無かった。
とうとうこの正体の分からない苦しい
高鳴りに耐えられなくてミーナやナイトに
この苦しい高鳴りについて柄にも無く相談
してしまった。
しかも詳細を事細かく シズクを見ると
高鳴りが強くなる事まで言ってしまったのがいけなかった。
二人はそれを間髪入れず恋心だと断定した。
ハイネは最初それを認め無かった
愛だの恋だのうざいだけそんな甘ったるい
もん反吐が出る。
そう思っていた為自分がそんな物を
抱く事自体信じられなかった。
しかしその高鳴りに蓋をして気のせいだと
思えば思う程シズクを苛めて遠ざける程
自己嫌悪に陥る事も多くなり....
そんな経験を経てハイネは口では決して認めないが・・・・
心の中では認めざるを得なくなった。
こうしてハイネ少年は 初恋を拗らせ
未だに胸の中の高鳴りに決着を付けられずに居るのだった。....。
不条理
使い捨てられ ボロボロにされやっとの
思いで辞めた会社から電話が掛かって来た
「すまない 今までの事は謝る
謝罪として 戻って来てくれたら
給料を前の倍払おう」
その言葉で俺の心は益々沈んだ。
「社長 謝罪は受け取りました
しかしその申し出は結構です私は当社に
戻る気は一切ありません 失礼します」
そう言って俺は一方的に電話を切った。
がんじがらめだった心の鎖が
不条理を叩き返した事で全て断ち切られた。
俺は自分の机に戻り 今している新しい
仕事の続きに戻った。....。
泣かないよ
「泣かないよ」そう言っていた君が今僕の
目の前で泣いて居る。
今まで堪えて来た分涙が後から後から
止めどなく雫となって君の頬を流れて行った。
僕は君の隣でそっと君の手を握る事しか
出来なかった。
煙突から煙がモクモクと空に上って行った。それを見て僕は君の手を握る手に
力を込めた。
怖がり
「お兄ちゃんいる?」
「居るからさっさとすませろ!!」
と俺はトイレのドア越しに叫ぶ
と俺は今弟のトイレに付き合っている
昼間テレビ画面に何の気なしに流れていた
心霊番組の幽霊スポット特集や
心霊写真特集をたまたま側に居た弟も
一緒に見てしまい今になって怯えて
しまい一人でトイレに行けなくなって
しまったからだ。
俺は弟とは正反対でそのての番組に夢中に
なっていたので怖がって居る弟に気付け無かった。
弟の怖がりの性格は、俺なりに熟知して
居たので遠ざける事も出来たのだが
気づいた時には、もう遅く弟は
完全に固まり隣のテレビが無い別の部屋に
逃げ込むと言う考えも思い浮かばず
ましてやテレビから視線を逸らすと言う
簡単な方法すら思い浮かばないらしく
番組が終わるまでテレビを凝視ししていた。
そうして今に至っているのだが.....
弟がもう一度トイレのドア越しに
心配そうに聞いて来る。
「お兄ちゃん居る?」
「だから居るからさっさとすませろって」
「お兄ちゃんが幽霊って事ないよね?」と
弟が唐突に馬鹿な事を聞いて来た。
「此処まで手を引いてトイレまで連れて来てやっただろう? 幽霊は生身の人間には触れないだろう?それが答えだ」
それを言うと弟は安心した様に
「そうだよねぇよかったあ~」と水を流した音と共にトイレから出て来た。
そうしてまた安心させる様に俺は弟の
手を引いて自分達の部屋に戻る為
暗い廊下を歩き始めた。
途中暗い廊下にぼわっと軽く仄かに薄く
火の玉みたいな物が俺と弟を取り巻いて
いたが それを弟に言うと今度はトイレに
行けなくなる所か眠れなくなるので
俺は静かに黙って弟を部屋へと連れて行った。....。
星が溢れる
広いベランダでプラスチックのテーブルと
椅子を広げて ガラスのグラスで炭酸系の
お酒を飲む色は透明その透明の液体の中で
炭酸の泡がシュワシュワとグラスの上に
上って行く。
ふと視線を上に向けると夜空に満天な星々が溢れんばかりに並んでいる。
グラスをその星空に向けるとまるでグラスに星を閉じ込めたみたいに炭酸の泡と一緒にグラスの上に上ってグラスから溢れるみたいに光を放ち輝きを主張する。
星の輝きをうっとりと見つめながら
私は、グラスの縁に口を付け星を飲み込んだ。
お酒のほんのりと甘くそして後からやってくる苦みも加わり顔から熱が上って来る。
溢れる程の星達がそんな私を輝きながら
見守り そして少し可笑しそうに笑っている様だった。....。