1000年先も
また いつか そう約束した言葉も
私達 長命種(エルフ)にとっては、
気軽な再会をする言葉だった。
またどこかで会えたら食事でも そんな風な 挨拶程度の言葉だった。
だけど私は 分かってはいなかった。
私達 長命種にとっては、十年 百年
千年など たったの数ヶ月に過ぎなくても
短命種(人間)にとっては、長い 長い
月日だと言う事に....
また いつでも会える そう思っていた
けれど それは、間違いだった。
私達と違って 人間にとっては、
百年 千年は、途轍もなく 果てしない
時間だと言う事を分かっていなかった。
姿が私が見ていた人とは、変わってしまうと言う事に 面影は、確かにある。
だけど私が知ってる 君とはやはり姿は
変わってしまった。
それでも中身まで変わってしまった訳では
ない...
あの頃の優しい君は、確かに私の側に居る。
それは、私にとっては、とても嬉しい事だった。
やがて 君との間に終わりが来た。
ゆっくり ゆっくりと 葬列が流れて行く
棺に入れられた君の身体
その表情は、穏やかで 満足そうだった。
私は、君の棺に手向けの花を入れて
君に向けて、にこりと笑う
そうして 小さく君の耳元に呟く
「忘れないよ....」この先 100年
200年 1000年先... 果てしなく
続く時の中で、私は、立ち止まり ふと
君の足跡を見つけるだろう....
そのたびに君を思い出す
だから 君は、いつまでも私の中で
生き続ける。
これからも ずっと共に....。
勿忘草(わすれなぐさ)
小さく寄り集まって 咲いている花を
お花屋さんで見つけた。
何て言う花ですか? と店員さんに
聞いたら 勿忘草です と言う答えが
返って来た。
勿忘草?聞いた事は、あるが あまり
身近に見掛ける花かと聞かれれば
多分 私は、首を振って否定を返すだろう
この小さい花弁が勿忘草と言う花だとは、
私は気付かないからだ。
見ると色も ブルー ピンク ホワイトと
三色あった。
店員さんは、嬉しそうに私の顔を見て
勿忘草の花言葉も教えてくれた。
花言葉は、色によって それぞれ違うらしい....
【勿忘草の花言葉】
ブルー 真実の愛 誠の愛
ピンク 真実の友情
ホワイト 私を忘れないで らしい...
私は、何となく その三色から
ホワイトの勿忘草を買った
勿忘草の名前と花言葉が何となく近い感じがして らしいと思ったから
後でその事を 恋人に話したら
君らしいね と笑われた。
私を忘れないで
いつか私が 皺くちゃのおばあちゃんに
なって 亡くなっても ふとした時に
私を思い出して 心に留めてくれます様に
なんて事を思ってわざわざ買った訳では
無いけど
貴方なら私が皺だらけのおばあちゃんに
なっても 最期まで愛してくれる...
それだけは、確信を持って思えるから
だから私は、ホワイトの勿忘草を
二人で鑑賞できる 窓辺の台の上に花瓶に
入れて置いた。
私を忘れないで もちろん私も貴方の事を
最期まで愛してる....。
ブランコ
公園のブランコに乗りたいのに いつも
先を越される。
「次貸してね!」って言ってるのに
なかなか貸してもらえない
しまいには、横入りされ
別の子がブランコに乗ってしまう
私は、泣き出して、
「次は、私だもん! ずっと並んでたのに」と 乗っていた子を突き飛ばして
転ばせた。
その子は、膝を擦り剥いて 鼻血を出して
泣き出した。
その内 大人の人が寄って来て
突き飛ばした 私を責めた。
どうして? 私が怒られるの?
代わってくれなかった子が悪いのに...
私はずっと待ってたのに....
理不尽だ 誰も分かってくれない
大人なんて嫌い!!
【20年後】
私は、大人になり二児の母親となった。
今 当時と全く同じ状況が目の前で
繰り広げられていた。
私の娘 はなちゃんが よその家の息子さんのたっくんをブランコから
突き飛ばしたのだ
当然 たっくんママは、激怒していた。
私は 深く深く頭を下げたっくんママに
謝罪した。
公園から家に帰る道すがら 娘は一言も
喋らず俯いていた。
「はなちゃん」と私は、呼び掛けてみる。
が返事はない
当時の私も不貞腐れて 一言も喋らなかったっけ....
親子だなあ...
私は、娘の頭を撫でる。
「はなちゃん 偉かったね! ちゃんと
順番守って 並んで 誰にでもできる事じゃないよ! 偉い 偉い!」
私のその言葉に娘は顔を上げて
大きな丸い瞳から 大粒の涙を零す。
私は、泣きじゃくる娘を優しく抱き締め
明日 幼稚園でたっくんに怪我させた事を
謝ろうと娘を諭す。
娘は、泣いて モヤモヤがすっきり
したのか 素直に頷いた。
「へえ~そんな事があったんだぁ~」
夫は呑気に晩酌をしながら昼間あった
出来事を説明する私に相槌を打つ
私は笑いながら...
「ねぇ 今思うと何であんなにブランコに
執着してたんだろう... 他にも公園の
遊具なんて いっぱいあったのに...」
「でも分かるかも 子供の目線からだと
ブランコって まるで空を飛んでいる
みたいになって 気持ちいいんだよなあ!」
「私に順番を譲りたくなくなる位
楽しかったんだあ!」と私は悪戯っぽく笑う
すると 夫は、バツが悪そうに
「あの時は、楽しすぎて 周りの声が
聞こえ無くて.... 悪かったと思ってるよ
でも あの時突き飛ばされたんだから
おあいこだろう... すげーあの時痛かったし...」
「そうだね...」私は嬉しそうに笑う
そう あの当時私は、ブランコを代わって
くれなかった男の子が大嫌っいだった。
それなのに 何の因果か 今は
一番大好きな人に変わっている。
大人にならないと今の気持ちが分からない
様に 子供の頃の私達だって 今の私達には分からないだろう...
なにせ 子供の頃の気持ちを大人になるまで持ち続けるのが難しい事なんだと...
正面のテーブル席に座る夫を見ながら
私は、しみじみと思ったのだった。
旅路の果てに
魔王を倒す聖剣を抜いて、旅立って十年
ついに魔王を打ち倒し 平和を取り戻した
我々パーティーは、王都に帰りたくさんの
人に感謝された。
馬車で国中を周り凱旋パレードをして
都の人達に恭しく挨拶をされ
握手を求められ
一日が終わりに近づいた夜は、
酒や食事や踊りを供され
ささやかな宴の中心になった。
この日を我々パーティーは、
待ち侘びていた。
長年 混沌に苦しんでいた
都の人達は、肩の荷が降りた様に
安堵の息を吐き笑顔を見せていた。
これで、我々の冒険は、終わった。
この宴が終わったらパーティーは
解散し また新たな道をそれぞれに見つけ
旅立つだろう...
旅路の果てに得た経験を財産に
また新たな旅路を進め
それぞれの安住の地の果てを見つけて
辿り着くまで...
我々パーティーのそれぞれの冒険は、
続いて行く。 .....。
あなたに届けたい
赤いポストから手紙を回収する。
僕の仕事は手紙を届ける事
さまざまな人からの手紙をさまざまな国へと届ける仕事に僕はやり甲斐を感じている。
皆の思いが詰まった手紙を僕の手で届ける。
遠い地で別々で暮らす家族
離れた距離で愛を育む恋人
引っ越してしまって会えなく無った友達
その人達の思いを届け 縁を結ぶ
これっきりの出会いにしない為に
別れの時を再会の時に繋げる為に
僕は、今日も手紙を届ける
あなたにこの思いを届ける為に
あなたに届けたいから
僕は、今日も 相棒のカブを走らせ
どんな悪路でもひた走る
手紙を出した人の思いを届ける為
出された人の笑顔を見る為に...
だから僕はこの仕事が辞められないんだ
いつまでも.... ずっと。