Saco

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11/26/2023, 4:02:21 AM

太陽の下で

「絶対に だめだよ!
日の光を浴びたら
貴方は・・・」

そんな 仲間の制止を
振り切って 私は
あの人に
会いに行った。

あの人との 最期の 逢瀬を
重ねる為に


あの人と 会うのは、いつも冬だった
人気の 無いしんと静まった夜だった。

だけど貴方が・・・


「木漏れ日の下で 日向ぼっこすると
気持ちいいんだ!!
君と 草の暖かさを感じて
寝転べたら 幸せだろうな!」

そんな風に 太陽みたいに笑うから
太陽に 焦がれるみたいに
手を伸ばしたくなった。




だから 貴方が望むなら
叶えてみたいと 
貴方と暖かさを感じてみたいと
思う様になったんだ


貴方は、私が 頑なに冬にしか
会えないと 言ったら
理由も聞かずに その通りにしてくれたね


だから私も 貴方の 願いを
叶えたくなったんだ。

君の姿が見えて 私は、思いっ切り
手を振る。

君は、嬉しそうに 私の傍に寄り
手を繋いだ。

私は、君の手を取り
「ピクニック日和だね!
お弁当を作って来たよ」

と 笑い合った。


公園の 芝生に寝転がり
私は初めて 太陽の光を浴びた。
これが 暖かいと言う事なんだと
胸の中に 何かの灯りがポッと 
灯った。


お昼になり
私は 初めて自分で 手作りした 
お弁当を 貴方の前に広げる

ドキドキ 緊張したけど
貴方の顔を盗み見ると

「とっても美味しいよ!」と
顔を綻ばせた。



帰り際になり 私は
貴方に キスをねだった。
普段 私はこんな事はしない
こんな恥ずかしい事
自分の口から言うのは凄く
躊躇われるけど・・・

私は、どうしても 貴方の
温もりを覚えて居たかった。

貴方は、最初 戸惑い 沈黙したけど
最後は 頬を染めて はにかんで
私の唇に自分の唇を合わせてくれたね

貴方は、啄む様に軽く触れるだけだったけど 私は、名残惜しくて 貴方の頭を
引き寄せ 深く 深く キスを重ねた。
舌を絡ませ 熱く 熱くなる程に

そうして、お互い 一歩引き

貴方は、「じゃあまたね!」と手を振って
私に 笑顔を見せて去って行った。



私は、それを 見えなくなるまで
見送って そうして 自分の手を
見上げた。

「そろそろ時間ね・・・」

私の手は、透明化していた。
それが 全身に回るのも
もうすぐだろう・・・


私は 幸せだった。
急に居なくなった私を
貴方は、責めるかもしれないけど・・・

それでも私は、幸せだった。

貴方との最期のキスを思い出す。

熱く 熱く溶ける様な
このまま溶けてしまっても良い様な・・・
そんな 甘い一時を 私は過ごした。

だからこの一時を絶対に太陽のせいになんかしない

私を蕩けさせるのは、貴方
貴方のキスで私の全身は
蕩けるの

だから・・・

私が溶けて亡くなるのは、
貴方のキスのせい!!
そうして 私の全身は、溶けて無くなった

世界一 幸せな 雪の精の恋物語
それは、語り継がれ
世界中に広まり
皆の憧れの的になる事を
本人は、知らない・・・

11/24/2023, 10:50:49 AM

セーター

ころころ 毛糸玉が転がる
赤.青.朱色.黄色.緑.黄緑.紫.桃色

ご主人様は、何色を選ぶの?
私は知っている。

ご主人様は、大好きな あの人に
セーターを編むのだと


「こら タマ邪魔しないの!」



別に邪魔するつもりは無い
ただ丸い物を見ると とびつかずには
居られない 猫の悲しい性なだけだ


あっちにころころ こっちにころころ
どうしても 追いかけ回す事をやめられない


ご主人様の 指や目も忙しなく動いている。

毛糸を 編み棒で 一目 一目
曲がらない様に
大好きなあの人の好きな色を
喜ぶあの人の顔を思い浮かべながら
セーターを完成させて行く

ご主人様の その姿を
私は毛糸玉を追い掛けながら
じっと見ていた。

窓辺の星空の輝きと
暖炉の暖かな灯りと共に・・・

11/24/2023, 3:53:56 AM

落ちていく

フワフワと 痺れる様な
浮遊感が 押し寄せる。

ゾクゾクする 快感が
背筋を這う

「先輩!」
気が付けば 意識が遠のいていた。
呼ばれて浮遊する。

目を開けると 満面の笑顔を
俺に向ける顔があった。

さらさらと 歩くたびに揺れる髪が
太陽に反射して 輝いている。

長い睫毛に 光を溜めて笑う顔に
思わず手を伸ばしそうになるが
寸前で 堪える。

「うるさい!」
俺は、そっぽを向いて答える。
「お仕事の 資料持って来たよ!」
俺の 顰めた顔を気に留めず 其奴は
「はい!」と 俺に資料を渡す。

俺は、横目で 一瞥し片手を上げて
資料を受け取る。


20××年

殺戮兵器 
2FG
その個体は、少女の様な姿で
帝国軍の兵士を薙ぎ払い 屠った。
その少女が通った 戦場は、血の跡が、
点々と続き屍の山が積み上げられたという



そんな混沌とした時代を跨ぎ
落ち付いた現在

俺は、未だにあの時の感覚が忘れられないでいる。



次の資料を纏めホチキスで、黙々と
留めだした 少女を見る。

あの時 対峙した少女は、そんな悲惨な
事態を 自分が創り出した事など
覚えては、いないだろう...

まるで 人形のように 無表情に
淡々と敵に向かって行く姿
容赦のない斬撃
慈悲すら微塵も無く人の体を
真っ二つに切り裂く刀


あの ひりつく様な 切迫詰まった
思い出すだけでゾクゾクする
命のやり取りを
俺は、もう一度体験したいと
夢見ている。


今 隣に居る少女に かつての様に刃を
向ければ あの時の 感覚を
呼び覚ます事が出来るだろう....



けど 同時に...

「先輩 お仕事終わったよ!
休憩しよう!私 お茶入れてくるね!!」

この フワフワした
陽だまりみたいな感覚を
永遠に失う事になる。

この太陽みたいな笑顔に 一生会えなくなるのだ。

それを思うと 夢見ているのに
踏み出せない

あのゾクゾクした快感をまた
味わいたいのに壊せない


相反する気持ちと 俺は今日も
闘って 抑えているのだ。



そう、初めて会った
あの時から....


俺は こいつに落ちていく。

11/22/2023, 11:01:19 AM

夫婦

「ねぇ 知ってる 11月22日は、
いい夫婦の日なんだよ!!」

「ふう~ん」と貴方は、新聞を
読みながら素っ気な無く返事をする。


恋人だった頃は、そんな態度に腹が立って
ばっかだったけど 今は、そんな態度が 
貴方らしいと思える。


それに...
「じゃあ 何かお祝いするか?」
   「うん!!」

結局 貴方は、聞いていない様でいて
大事な事には、ちゃんと返事を
くれるから...

これも 夫婦になってから
だんだん分かって来た事
長年連れ添って来た 勘というか...
癖というか...

貴方の言いたい事が 私には、
分かるのが嬉しい
私の言いたい事が分かってくれるのが
嬉しい


これからもよろしくね
愛しの旦那様

11/22/2023, 2:09:02 AM

「どうすればいいの?」
と 僕は、後ろの椅子に座ってる人物に
投げ掛ける。

「どうすればいいの?ってまずは
書いて下さい 話はそれからです。」

後ろにいる人物は、にべも無く言う

「無理だよ~ 締め切りもうちょっと
延ばせない~」

「これ以上は、無理です
最低限の 譲歩ですよ これは」

「だって何も思いつかないよ~
そもそも何で 僕は、
恋愛小説家で 売り出してるの~
恋愛なんて まともにしたことないのに~
未だに独身なのに~ 
たまたま出してヒットした 
小説が恋愛小説だっただけなのに~」


「まともにという事は、した事は
あるんですよね
じゃあそれを書いて下さい」

「綺麗にまとめられないし...
いつも 振られる側だし..」

「失恋も恋愛の内ですよ 先生...」

そんな 身も蓋も無い事を言って不安を
煽る編集

締め切りに 追い込まれる僕

第三者に問いたい一体僕は、 



どうすればいいの?

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