キャンドル
暗い 石造りの回廊を進んで行く
途中にある 燭台の ロウソクに
一本 一本 火を灯して行く
それが 私の仕事
毎月一回 神様の祭壇に
捧げものを持って行く
村の人の為に
迷わないように
躓かないように
キャンドルライトの道を作る
一つ一つの ロウソクが
煌々と 輝いて 神様の祭壇を
厳かに見せる。
村の人が置いて行った 食べ物や
飲み物が 光の粒に 当てられて
神様の口に 入るのに相応しい
豪奢な物になる。
今月も 実り多い 豊穣を
ありがとうございます!!
お礼に 供物を捧げます。
たあんと 召し上がれ
たくさんの想い出
たくさんの想い 感情が、溢れて来る。
【喜】
くだらない 他愛のない事で
笑って 大笑いして、
お腹が、痛くなって
笑いが 止まらなくなったね
【怒】
些細な事で 喧嘩して
傷つけて 傷つけられて
でも、意地になって
仲直りには、何日も
時間を掛けたね
ごめんね
【哀】
先生や親に叱られた時
努力した事が 報われ無かった時
大切な者を亡くした時
流した 涙が
自分を強くしたね
【楽】
貴方と笑い合っている時
君と手を繋いでいる時
そして キスをしてる時
この時間が一生続けば
良いと 想えるんだ!
ありがとう 私にたくさんの想いを
くれた 想い出たち
冬になったら
「寒い~」私は、ブルブルと震える。
マフラー 耳当て 手袋 冬用ブーツと
防寒具で 身を固める。
「お前って 寒いの苦手だよな
名前 冬美(ふゆみ)なのに...」
「うるさ~い 名前は、関係ないでしょ!」
私は、手袋の拳を握って抗議した。
「自分だって 夏樹(なつき)って名前なのに暑いの 苦手じゃん」
「夏は、楽しいイベントが 盛り沢山だから まだ 乗り切れる!!
今年は、楽しかったなぁ~
海に山にプールに 夏祭りにも
行って 花火も見たし!!」
夏樹が隣で、夏のイベントを
指折り数え出した。
私は負けじと 対抗意識を 燃やしてしまい...
「冬だって 楽しい イベント沢山
あるもん!! クリスマスでしょ
お正月でしょ!
二月には、バレンタインデーもあるし
夏樹 女の子から毎年沢山 貰うでしょ!」
「全部 義理だけどな!」
私は、その言葉を 聞いて 人差し指を
横に振った。
「チッチッチ 分かってないなあ~
夏樹は、義理とか言って 本音は
本命で 渡したい女子なんて
いっぱいいるんだから!!
君は、自分がモテる事を自覚したほうが
いいよ!」
「そりゃあ~自覚してるけどよ」
「何それ 今の嫌み~」
「お前が 先に言ったんだろう!!」と
夏樹は、少しムッとする。
冬美は、それを見て 笑う
「なんか 冬 楽しみになってきたなあ~」
私は、大きく伸びをする。
「まずは、クリスマスだね!!」
「いや まずは テストだろう!!」
「え~夏樹 硬い真面目~」
「お前が 不真面目なんだろう」
夏樹は、ため息を吐く
その顔を見て私は くすくすと笑う。
冬になったら 家族と 友逹と
一緒に 楽しい事をしよう!!
もちろん その時は、夏樹も
一緒にね!!
はなればなれ
はなればなれになったら困る物
靴下.箸.眼鏡 など...
靴下や 箸は、まず 対(つい)になって
いないと 機能を果たさないし、
眼鏡は、掛けている者にとっては
どこに 置いたか分からなくなって
はなればなれになると
それだけで困る。
かく言う 私も 今 眼鏡を探している。
なかなか見つからないので
私は、妻を呼んだ。
「叶恵 私の眼鏡を知らないか?」
「お昼までは、掛けてたでしょう?」
叶恵(かなえ)は、食器洗いの手を止めて言う。
そうだ! 確かにお昼までは、掛けていた。
では、その時に どこに置いたかが
問題だ
それが、思い出せないから困っているのだ
完全に手詰まりだ 途方に暮れるしかない
物というのは不思議なもので
普段そこにあると思っているものは、
なかなか意識しない
ほとんど 無意識の状態だ。
そして 不意に存在を 意識すると
途端に 手放した事を 思い出せない
どこで 手放したか その場面すら
思い出せない...
有るのが 当たり前になっている。
だから無くなったと 思うと
不安になるのだ。
探している時だけその物に
時間を掛けて 有り難みを知るのだ。
私が、お手上げ状態で うんうん唸って
いると...
妻から 声を掛けられた。
「和室の タンスの上にあったよ!」
なぜ そんな所に 全く覚えがない
探していた所とは、全く見当違いの
所から 出て来た。
いやはや はなればなれにならないと
分からないものもある。
子猫
子.丑.寅.卯.辰.巳.午.未.申.酉.戌.亥
年賀状を 書いてて 私は、思う
猫年も、あったら良かったのにと
よく聞く十二支の 物語で
神様の宴に 招待された
動物達が その宴に来た順番で
干支を 決められたって
その際 宴を開く日付を 鼠に
間違われて、教えられ、
猫は、宴に、来られ無かったって、
だから 猫は、鼠を追い掛ける様になったとか何とか...
「でも...十三支じゃ語呂が悪いよね...」
そんな意味の無い事をぐるぐる考えていると 「ニャア~」私の膝の上に
飼っている 子猫が乗って来た。
そうだ! と私は、閃いた。
丁度 今年は、子年だ
だったら... 私は、子猫の右前足を
朱肉に 乗せる そして...
年賀状の上に ピタッと猫の前足を
貼り付け 離す。
「できた!っと」年賀状には、
見事な猫の肉球スタンプが、出来上がっていた。
子年に 横入り
これで ささやかな猫の復讐が 出来たかな? なんてね!
私は、可笑しくなって 子猫と
顔を見合わせた。
子猫は、丸い 大きな目を私に
合わせて 首を傾げるばかりだった。
ハッピーニューイヤー
今年もよろしくね!!