高校の入学式の日。私はあなたに恋をした。
それから1年半。誰よりも、ずっとあなたを見つめていた。
あなたがどんな風に笑うのか。
あなたの好きなものはなんなのか。
あなたのことならなんでも知りたくなった。
あなたが困っていると手を差し伸べたくなるの。
そう、これが恋。
「いや、それストーカー」
「世が世ならそうだったかも」
「今の時代がアウトだわ、このバカ」
「坂本くんのことが好きで、止まらなくなっちゃうの」
「いや、相手が気づいてたらドン引き案件だからね」
「大丈夫。私物には手をつけてないもの。坂本くんの使い捨てのつま楊枝なら持っているけど」
「今すぐ捨てろ。大馬鹿野郎」
「ぐすん。捨てなくたっていいじゃない」
「捨てるわ。速攻捨てるに決まってるから。あとヤバイことしてないでしょうね」
「坂本くんが脱いで置いておいた制服のボタンが取れかかってたから直してあげたの」
「普通にホラー案件」
「ホラーじゃないもん。置き手紙に『ボタンつけました byこびとさん』て書いたから、こびと案件だもん」
「そんな案件生み出すな」
「あ、坂本くん」
「なんかボタン触って話してるわね。あんたが気持ち悪いって言ってるんじゃない?」
『気づいたらこびとさんがつけてくれたんだぜ。スゴくね!!』
「坂本アホか!!!!」
なんだかんだ、ずっと何かしら妄想してる。
なんだかんだ、ずっと小説を読んでいる。
なんだかんだ、文章を書くのを再開している。
忙しいくせになんだかんだとやめられない。
飽き性なくせに、誰かのためになるわけでもなく、何の身にもならないものだとわかっていて。
物語を紡ごうとするのを、下手だとわかってて書き続けることを、ずっとずっとやめられない。
これからも、ずっと。
「夕日は沈むもんだろうが! 沈まない夕日があるなら持ってこい!!」
「夏井先生かお前は」
俺は君にとても甘いと思う。
本当は君にとってもよくないことだとわかっているのに、君に甘えられるとどうしてもその要求に応えたくなってしまうのだ。
あぁ、今日もだ。
君の目を見つめると、うるうるとした目で俺に寄りかかってくる。
君にとって俺は甘やかせてくれるだけの存在。それ以上にはきっとなれない。
でも、やっぱり君には勝てないのだ。
「にゃー」
「くそう、チュールだろ! わかってるよ!」
ーー人は死んだら星になるんだって
「つまりいつだって私は織田信長に見守られてるってことね」
「おい、やべーぞ。偉人にときめきメモリアルできねーぞ私は」
「いや、二人ともそういう話じゃないから」
胸を押さえ頬を染める喜代に芹那が返し、さらに実奈が二人に言った。そして実奈は右上に視線を向けながらかつての言葉を思い出していた。
「私が死んだおばあちゃんっ子だったからか、お母さんがそう言ってたなって。おばあちゃんが死んじゃったとき、めちゃくちゃ泣いてたから」
「なるほどね。つまりあの星のどれかひとつは実奈のおばあちゃんなわけね。私のおじいちゃんはあれかしら」
「んじゃ、あれが私の死んだばあちゃんかもな」
喜代が星空の1つを指した。続けて芹那が指をあげる。
「「老人会かな」」
喜代と芹那の言葉が重なった。
実奈が「夢がない!」と叫ぶ。
「もっと感動する話とか素敵な話にしようよ。なんで老人会って話になっちゃうの!?」
「なんでって、そういう話じゃなかったのかよ」
「私としては織田信長と、渋沢栄一の大河ドラマverに見守ってもらえればそれで」
「演じた俳優は星になってないからね。ってそうじゃなくて!!」
実奈はもー! と2人に不満そうだ。
「私が言いたかったのは、もし死んでも星になるなら、その、2人と死んでも一緒にいられるって、思ったからで」
徐々に言葉が小さくなる実奈の顔は真っ赤だった。
喜代と芹那は顔を見合わせ小さく笑う。
「それはとても素敵ね。確かに死んでも一緒にいたら楽しいわ」
「だな。この3人ならどんだけ一緒にいてもしゃべり足らないしな。どうせならカッコよさそうだからオリオン座とかいいな」
「私はベガとかデネブとかがいいわね」
「「「…………」」」
「「季節真逆じゃん(じゃない)」」
「2人のバカーーーーー!!」