「あたし、青年雑誌でエロ漫画書いてるんだけど」
「まさか、久しぶりに会った真っ昼間のファミレスでそんなこと言われるとは思わなかったわ」
愛美は向かいでメニュー表を開く祐希奈につっこんだ。
「毎回ネタに困るんだよね」
「えっ、続行するのその話」
「愛美は大きいのと小さいのどっちがいい?」
「え、あ…女の方のこと?それとも男の方?」
「は?パフェのことだけど」
「今の流れで何故メニューの話になった!?」
「ファミレスでパフェの話するのは普通だと思うよ。うーん、パフェはやめてカツ丼定食にしようかな」
「そこじゃないし、悩むメニューのチョイスが全然違うんだけど」
愛美は頭を抱えてジト目を向ける。
「ネタに困るっていうからてっきりその話かと」
「まあねー。困ってるよ。おっぱいからビーム出すか、目からビーム出すか」
「待て、それは本当にエロ漫画か?」
「主人公のペットをコモドオオトカゲにするかウーパールーパーにするか」
「心底どうでもいい設定だから。ってか犬とか猫にしようよ」
「でも飼ってるペットの擬人化エロとか定番じゃない」
「コモドオオトカゲじゃ別の意味で食われそうで怖いわ」
うーん、どうしようと悩む祐希奈に愛美はため息をついた。
「私にはよくわからないけど、そんな奇をてらわなくていいんじゃないの?」
「だってありきたりになっちゃうし」
「祐希奈が好きなものでいいんだよ」
「好きなもの、かあ」
「うん、それでいいんだよ」
祐希奈はしばらく悩んだ素振りをしてから「うん、わかった」と決心する。
「カルボナーラ食べる」
「だからメニューの話じゃないっての」
「あとおっぱいからビーム出す」
「書きたいものそれなんかい」
「1つだけ、買ってやるよ」
部活帰りのコンビニ。先輩がそう言ったので、ペットボトルの水をとった。
「そんなんでいいのか」
「今日、俺んち唐揚げなんで」
「あぁ、なるほど。そりゃ唐揚げ優先だわ」
そして先輩は唐揚げ棒を買った。俺の話を聞いて食いたくなったようだ。
コンビニから出てすぐ唐揚げを頬張る先輩に声をかける。
「次、来るときはもっと高いもん買ってもらう」
「何当たり前のようにおごってもらおうとしてんだテメーは」
呆れながら先輩は続ける。
「俺は今日で引退すんだから、次はねえよ」
聞きたくなかった言葉。
俺はまだ部活を続けるのに先輩はもう部活に来ないのだ。なんという理不尽な世界。
「ある。また来て」
「引退したやつがそうホイホイ行けるかよ。なんだったんだ、今日の涙の引退式は」
「だって先輩、」
「いーんだよ。おしまい。最高の青春だった」
なんでそうやって終わらそうとすんだ。
上手い先輩だった。楽しそうにボールを追いかける先輩だった。誰もがまだやめるには早いと思うのに本人だけがすっきりしてやがる。
「楽しかったぜ」
満足そうに先輩が笑う。
水のペットボトルが俺の手で少し歪んだ。
「大切なもの」
それで思い浮かぶのはロードオブメジャーだ。
借りたCDをMDに入れて登校中によく聞いたものだった。凄いファンだというわけではなかったが全曲借りて聞いていた。
どういう人が歌っているのか一切興味なく、ただひたすらに曲を彼らの音楽を聞いていた。
私の青春のひとつだったかもしれない。
悔やむのは、あまりにも人に興味がなさすぎて
メンバー本人だと気づかずロードオブメジャーのライブ会場を聞いてしまったことである。
多少は顔覚えておこうぜ、自分。
くそみそテクニック、アニメ化今日だって
幸せとは何か。
美味しいものを食べること?
家族がにこやかに笑ってくれること?
好きな本やテレビを見ること?
すべて幸せ。楽しいと思えることをやれるのは幸せ。
久しぶりに文章書いてみた。
くっっっそ幸せだな、そう思える。
悩んで悩んで一文字一文字打つのが楽しい。
さて、楽しくない家事をこなすかな。