ほねこ

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10/20/2023, 6:11:15 AM

「すれ違い」

 ふと鼻腔を掠めた香りに、遠い記憶を呼び覚まされる。我が青春の日々だ! 大いなる希望と少しばかりの不安とを抱えた、あの日々。
 あの頃わたしの隣にはいつだって彼女がいた。わたしたちはふたりでひとつだなんだと言われていた。それを聞いて彼女がどう思ったかは知り得ないが、少なくともわたし自身もそう思っていた。どこまでも、一緒なのだと。そう信じてやまなかった。彼女さえいればわたしはなんだってできると感じていた。
 だが、別れというのは案外あっけないものだ。わたしと彼女は進む道を違えてからというものの、すっかりと疎遠になってしまった。ドラマチックな決別というものもなく、単純に進むべき道が変わり、我々は互いに遠くへと言ってしまった。今考えてみれば、わたしたちの出逢いというのは、交差点のようなものでしかなかったのかもしれない。

 振り返り、香りの主の姿を探してみる。しかし、そこには思い当たる姿がある訳でもなかった。まあ、所詮、こんなものなのだろう。

10/18/2023, 9:17:17 AM

「忘れたくても忘れられない」

 この季節になると君のことを思い出すよ。微睡みながらゆっくりとまばたきをする君のことを。
 でもあの頃には既に僕達の関係は破滅へと向かっていたね。季節が少しずつ冬へ向かって移ろいゆくように。僕と君は、あの夏のような情熱を遠くに置き去りにしてきてしまった。
 それにも関わらず僕に縋ろうとする君は、まるで醜かった。君ではないと思いたいくらいに。だから僕は君が、君であるうちにお別れをしたかった。急いで、急いで、急いで。今すぐに!
 そうして、あの時君に触れた感触が、今も僕の手にべったりとまとわりついて離れないんだ。

10/17/2023, 9:36:16 AM

「やわらかな光」

 あなたは輝いていた。
 あなたは美しかった。
 あなたは唯一だった。

 これまで出逢った何者ともあなたは違っていた。
 あなたはあなたのことを考えていなかった。
 あなたの優しさを他人に分け与えることに躊躇などしなかった。

 春の陽のようなあなた。
 ずっと傍にいたかった。
 そうするつもりだった。
 そうできたらよかった。

 欲張りな私はそうするだけでは満足できなかった。
 今はもう一筋の光も見えない。

10/5/2023, 4:32:55 AM

「踊りませんか?」

 アン・ドゥ・トロワ
  リズムに乗って
   くるくる回る

 アン・ドゥ・トロワ
  わたしはここで
   ひとりで踊る

 アン・ドゥ・トロワ
  できることなら
   あなたと再び

 アン・ドゥ・トロワ
  アン・ドゥ・トロワ
   アン・ドゥ・トロワ……

10/4/2023, 12:18:34 AM

「巡り会えたら」

 またここで会いましょう。
 その時にはもう、わたしとしてのわたしじゃないかもしれないし、
 あなたとしてのあなたじゃないかもしれないけれど。
 それでもいいよね。

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