「元気かな」
そっちは暖かいかな?
ここは随分と春めいてきたよ。きっとそんな風に思っている内に、すぐ暑くなるんだろうね。
次に長い夏が来て、短い秋になって、葉が落ちるのを見ながら冬に変わっていくんだ。
そしてどんどん時が経ってふたりはいつか再開できるのかな。できないかもしれないね。それでも、いっか。
ねぇ、あなたは今何をしているの?
どんな表情をしているの?
笑ってくれていたら、いいなぁ。
わからないけど。わからないけれど。
この言葉が必ず届くと信じて、あなたの穏やかな日々を祈ります。
「遠い約束」
あの日の小指のぬくもりを私は忘れてしまいました
あの日交わしたことばすら私は忘れてしまいました
けれどあの日ふたり誓い合った
その記憶が私を励ましてくれるのです
「フラワー」
腕いっぱいの花束を、私からあなたに。
捧げます、捧げましょう。
あなたは喜んでくれるでしょうか。
照れたように笑うでしょうか。
想像します、想像してみます。
何色の花が似合うでしょうか。
包みはどんなのがいいでしょうか。
最後のプレゼントを、私からあなたに。
「一輪の花」
そこにあるでしょう、美しいものが。私が手折ったの。どうしても手元に置いておきたくて。毎日水を変えているわ。その度にふわりと舞う香りに、私はますますあれを気に入っていく。でもね、でも。駄目みたい。もうじきお別れをしなくては。少しずつ元気が失われていくのを、見て見ぬふりをしていたけれど、そうもいかなくなってしまった。悲しいけれど、何事もそういうものよね。残念だわ。そうそう、違う話も聞いてくれる? 今日、綺麗な花を見かけたの。それはうっとりとするほど可憐で、可愛らしかったわ。
「あなたは誰」
真っ白な部屋で眠るあなた
安らかな寝息を立てるあなた
私をも眠りに誘うあなた
少しだけ微睡みを
私は駆ける どこまでも
あなたを探して どこまでも
あなたが見つからず いつまでも
私は孤独でした いつまでも
目を覚ましたあなた
不安げに慌てたあなた
私を射るように見たあなた
何故そんなことを言うのですか
これならいっそ助からなければよかったのに
そんな風に思う私は、なんて、醜いのでしょう
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい……