新年だからと何が変わる訳でもなし。溜息は白く烟り、煙草の煙と共にふんわりと夜空に消えた。好きでもないその味は未だに噎せるけれど、肺を犯すこの毒があんたは好きだったんだよなと思い出す度にもう一本とやめられなくなっていった。年末は大変だったなぁ。元旦から仕事かぁ。俺の休みどこ?祝日にかこつけて遊び呆けるこいつらも呑気なものだ。いいご身分だな。ぐるぐるともやもやと、やるせなさに苛まれまた1本。コンビニで買ったあたたかい缶コーヒーはとっくにアイスコーヒーになっちまって口をつける気にもならない。こりゃ帰ったら牛乳と砂糖をぶち込んでレンチンするしかない。くだらないことばかり。世間から置いていかれる間隔。何も成せないでまたひとつ年号が進んでしまった。去年に取り残されている。何が新年だコノヤロウ。もう少しゆっくり進んでくれたっていいじゃないか。吸ったヤニが変なところに入って盛大に咳き込む。ああ、だから好きじゃないんだよ。吸うのへたっぴなんだから。ヤケクソで唯一の光源を踏み躙ろうと指を開いた。まだ火をつけたばかりの一本がするりと落ちて
誰かの手に拾われた。
勿体ないから寄越せって。禁煙してるくせに。
あけましておめでとうだなんて呑気なやつだ。
新年だからって別に、何も変わらない。今日も疲れたか体を引きずって帰って、こうやって管を巻いて世間を自分勝手に呪ってお前に物騒だなとか笑われてまた今年も終わるんだろう。俺はそれだけで充分だ。
どうしても欲しいものがある
それは別に特別な物なんかじゃなくて、とてもありふれていて何時でも手に入るもの。だけど別段好きなわけじゃない。どちらかといえば優先順位は低くて、無くても困らないものだ。なのに気が付けば手に取ってしまう。
好きになれないのに
好みとは掛け離れていて、ある方が持て余すとわかっているのに。捨てることも出来ずまたひとつ。
嫌いになれないんだ
君が好きだって言ったものは尽く僕の好みの真逆をいくのがなんだかおかしくて。でも、僕が持ってると嬉しそうにするから、今日も好きになれなくて嫌いにもなれないものを増やす羽目になる。
それは決して幻なんかじゃなくて、確かに在った現実だった。掛け違えたボタンを直せないまま我々は離れ離れになってしまったけれど、全力で走り抜けた時代が間違いだったなんてことは絶対に思わない。今は君の手を離すけど、いつか、いつか先の未来で再びその手を取ることが出来るように僕らはこの街の片隅で頑張るから。君と見た景色を、正直思い出せずにいる。思い出したら苦しくなってしまう。それは君も同じであってほしい。苦しくて、悲しくて、酷く後悔していればいいとさえ思う。この選択に後悔がなかったかといえば、嘘になるね。もっといい方法が、誰も苦しまない解決策がきっとあったんだろう。結論の先延ばしになってもそうすべきだったのかもしれない。けれど、あの時はきっとこれが最善だった。
だからさよならだ。
いつか、君と見た景色をちゃんと思い出せるように今を走り続けなきゃ。
先ず、深く深く深呼吸をしますでしょう
それからあなた様のお顔を思い浮かべます
選ぶ便箋は取っておきのもの
万年筆だってあなたが贈ってくれたものです
インクも封を開けたばかりですよ
あなたはお忙しい御人
長ったらしい文章でお時間を取らす訳にはいきません
だから察してくださいね
短い文で、少ない言葉で思いの丈を綴ります
あなたならきっと相変わらずだって笑ってくださる
1文字1文字丁寧に
心を込めて
最後にお気に入りの香水をひと吹き
あなたに届きますように
便箋をそっと折り畳みます
折り畳みます
折り畳んだら
紙飛行機の出来上がり
よく晴れたソラへそっと差し出せば
風がきっと運んでくださるでしょう
手紙の行方?
それは誰にもわかりません
幸せとは
他人の不幸の上に成り立ってるものだろう
そういうもんだって割り切った方が
いきやすいぜ