幸せとは
他人の不幸の上に成り立ってるものだろう
そういうもんだって割り切った方が
いきやすいぜ
長く続いたこの日々もようやく終わりを迎えようとしている。あんなに長く感じたのにいざその日が来ると、こんなにも呆気ないものだったか。住み慣れた部屋をもう一度振り返って眺め渡す。掃除は行き届いているはず。心残りは何も無い。窓の外を見れば、旅立つにはうってつけのかいせいだ。祝福されているようだ、なんてちょっとくさいことを思ってみたりなんかする。名残惜しいが時間が無い。引き戸に手を掛けてカラカラと音を立たせる。さよならは言わないでおこう。その方がかっこいいだろう。浮遊感と頬を切る風が心地良いなって、笑ってしまった。
真夜中の公道が好きだ。
家々の灯りは落ち、煌々と五月蝿い店の明かりもない。
ただ電柱の無機質な白と信号機の赤黄青。
その他はだだっ広い暗闇だけ。
人も獣も車も無い。できれば濃霧だと尚良い。
私の車だけがヘッドライト光らせて、やや法に触れる速度でアスファルトを轢き殺していく。
夜を独り占めしたみたいなスリルが堪らない。
夜明けまで幾許もない夜を謳歌しなければ。
眠りにつく前に、今日を思い出す。
何か良かったことが1つでもあればいい。
それさえあれば、ふんわりとした心地で眠りにつける。
哀しい事はあっただろうか。
耐え抜いた自分を褒めちぎって目を閉じよう。
起きたらきっと元通り。
雨音が一緒にあるといいと思う。
窓硝子に叩きつける水玉の音は何となく心音に似ていて
落ち着く気がする。
眠りにつく前にもう一度だけ、誰かの姿を思い出す。
集めた宝石達を手元に閉じ込めて
箱庭を創る
喜ぶ顔が見たくて
怒るやつもいるだろうけれど
哀しいことはできるだけ生じないように
楽しいことで溢れかえればいい
広くて狭い理想郷
どうか此の掌から擦り抜けていかないで