ショートピース

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長く続いたこの日々もようやく終わりを迎えようとしている。あんなに長く感じたのにいざその日が来ると、こんなにも呆気ないものだったか。住み慣れた部屋をもう一度振り返って眺め渡す。掃除は行き届いているはず。心残りは何も無い。窓の外を見れば、旅立つにはうってつけのかいせいだ。祝福されているようだ、なんてちょっとくさいことを思ってみたりなんかする。名残惜しいが時間が無い。引き戸に手を掛けてカラカラと音を立たせる。さよならは言わないでおこう。その方がかっこいいだろう。浮遊感と頬を切る風が心地良いなって、笑ってしまった。

12/3/2024, 9:49:32 PM