『 巡り会えたら 』
帰宅ラッシュ、大都会のど真ん中
沢山の音、色、そして香りで覆われたその場所で
香りの混ざり具合に嫌悪感を抱く中
少し俯いた鼻を掠めた懐かしいあなたの香り
私をいつも包み込んでくれた、あたたかなにおい
知らないふりをして前を見据えて歩く
伝う熱が揺らぐ涙が視界を滲ます
運命のそのまた先で巡り会える
そんな香りに思いを馳せて
2024-10-03
『 たそがれ 』
夕日が眩しく煌めく海辺で黄昏た高三の夏。
果たせなかった夢の先の未来が見えず、
溢れる涙も注ぐ西日もうざったく感じたあの日。
もう着ることの無いユニフォームから着替えることもせず、
砂で少し薄汚れた白を見つめたのち、大の字に広がった。
思い出しては伝う悔し涙を拭うかのように吹いた海風は、
涙で揺らいだ背中を押すような力強い北風だった。
徐々に弱くなりつつある夕日が滲む海辺で黄昏る高三の春。
夢に向かって走り出すために未来を見据え、
子供という18年の長い年月を越え、卒業したこの日。
もう着ることの無い制服から着替えることもせず、
海辺の方向へ足を伸ばしながら、砂浜へ腰を下ろした。
思い出しては伝う寂し涙を拭うかのように吹いた海風は、
涙が出そうになるほど優しい北風だった。
2024-10-02
何度歩いても
何度やり直しても
何度生まれ変わっても
秋風が君の姿を覆い隠す
遠ざかっていくその姿に零した
愛の言葉は、何処へゆくのだろう
「こんなにも、好きなのに」
女々くて馬鹿らしい言葉
遠ざかる背中に啜り泣く秋
2024-09-27
はじめて夢中になれたの
あなたのことが愛おしくてたまらなかった
はじめて人を好きになれたの
あなたのことが誰よりも好きだった
はじめて愛したいと思えたの
あなたのことしか見えなかった
この気持ちに形がなくても
この気持ちが見えなくても
ずっと
2024-09-25
声が聞こえる
大好きなあなたの声
誰よりも大切なあなたの声
聞き間違えるはずない
もう二度と聞けるはずのないあなたの声
セピア色の、幻聴
2024-09-23