嗚呼、神さま仏さまガチャの神さま。
無課金貫いて貯め込んだ無償コイン。
全部注ぎ込んで賭けるから、どうか推しのレアカードを我が手に~!
心の中で何度も念じ、意を決してキャンペーンガチャのスタートボタンをタップした。
たかがゲームに何を大袈裟な?
いえ、至ってこちらは真剣です。
推しのイベント十連ガチャを回すため、他の魅力的なガチャを幾度と無く我慢して、必死に貯めたコインなのだからね。
やっと巡り合わせた使いどころ。これで全部外れたりしたらきっと泣く。
すがれるもの有れば何でもすがりますって。
画面はキラキラと切り替わり、ガチャを盛り上げるエフェクトとして、数多の流れ星が次々と降り注ぐ。
結果を待つ間が待ちきれなくて、無意味に星をタップしまくって何重にも願をかけ続けた。
来い。来い。来い!
星々の演出も徐々にフェードアウトし、画面の奥から順にガチャの結果が明かされる。
一枚目、二枚目、三枚目――。
「キター!」
雄叫びを上げた私に驚いて、同じくリビングに居た母がぎょっとして私を振り向いた。
念願叶い、五枚目にて待ちかねた推しとご対面。
う、うわあ。か、格好良い!
嗚呼! ありがとう、神さま仏さまガチャの星たち。
これでメインイベント終章にも立ち向かえる。
必ず世界を救ってみせるから。
最終戦まで見守っててね!
(2024/04/25 title:028 流れ星に願いを)
*** Zzz... ***
(2024/04/24 title:027 ルール)
今日は久しぶりに早起きで。
いつもより少し時間に余裕が出来たから、朝ごはんに目玉焼きをプラスで焼いてみた。
でも、ちょっと調子に乗りすぎたかも。
朝のニュースに気を取られた隙に、うっかり火を通し過ぎてしまったみたい。
幸い焦げはしなかった。
ただ、好みの半熟具合は通り越したようで、お皿に乗せた卵はぷるっともしない。
惜しかった。あの少しトロッとした黄身が好きなのに。
鼻歌交じりだった気分もしょんぼり沈む。
しょうがない。卵の出来は諦めて、次のお昼に期待しよう。
今日の私は一味違う。
何てったって、お昼の弁当の用意まで有るのだから!
休日に作ったラタトゥイユ風野菜スープ。
沢山作っておいたのが役に立った。
これを楽しみに乗り切ろう。
――まあ。お弁当頑張った日に限って、滅茶苦茶仕事が忙しい。ってジンクスみたいになっているのが、ちょっと心配ではあるけれども。
ゴールデンウィーク前の医療機関って混みがちですよね。
はあ~。気にしない、気にしない。
出勤前の短い時間の間にも、気分が上がったり下がったり。まるでジェットコースターのように変わりゆく。
玄関を出ると、空は雨模様。
駅までの道も混みそうだ。
釣られてまたもや気分が傾きかける。
いけない、いけない。
ぐずぐずしてても仕方がない。
雨ぐらい、傘があればなんとかなる。
覚悟を決めて、行ってきます!
(2024/04/23 title:026 今日の心模様)
初めて君を見かけたのは、春も盛りの四月だった。
放課後、部活へ急ぎ廊下を歩いていたとき。風に乗って、歌声が聞こえてきた。
どこからだろう。と、興味を惹かれて見渡せば、窓の向こうに、中庭を横切る君を見付けた。
掃除当番だったのだろう。
箒を抱えて運びながら、歩くリズムに合わせて鼻歌を口ずさむ。歌声の主は彼女なのだとすぐに気が付いた。
散りゆく桜の下、舞う花びらをまとって通り過ぎていく。その姿は桜の精か、お姫様のようにとても綺麗で。
風が運んだ歌声を、僕が聴き惚れていただなんて、君は知りもしなかっただろう。
あの時の軽やかな歌声が忘れられなくて。
しばらくの間、クラスメイトや演劇部の仲間に君のことを尋ねて回ったんだ。
けれども、君のことを知る者は誰も居なくって。
あれは本当に桜の精か何かだったのかな、だなんて。一度は君を探すことを諦めた。
そうして学業と部活動に明け暮れて、彼女のことも忘れかけた頃。
季節は巡ってその年の秋。
文化祭当日のステージで、漸く僕は桜の君と再会を果たしたんだ。
演劇部の準備にも目処が立ち、空いた時間を潰そうと体育館を訪れたときだ。
予定なら、歌唱コンテストの最中で、参加者が順に歌声を披露しているはずだった。
それなのに、その場に流れる音楽はなく。進まない演目に、客席の方も訝しんでざわめき出しているところだった。
近くにいたクラスメイトを捕まえて事情を聞けば、参加者の一人が舞台に上がったものの、一向に歌い出せずにいるらしい。
その件の舞台上の人物を見上げて、思わず僕は、あっと息を飲んだ。
あの時の、桜の歌姫がそこに居たんだ。
緊張で動けずにいるのだろう。
顔は徐々に俯いて、ギターをぎゅっと握り締める姿は張り詰めて。その体は明らかに震えていた。
脇に控えた進行役の生徒も、イレギュラーな出来事に、どうしたものかと考えあぐねているようだった。
やがて僕の周りからも、「あいつ、本当に歌えんの?」と、ひそひそ話が大きくなり、野次が飛ぶのも時間の問題に思われた。
咄嗟に、声を張り上げた。
「待ってましたー!」
演劇部で鍛えた声が、体育館に響き渡った。
集まっていた観客たちがぎょっとして僕を振り返る。
ざわめく声は止んで、会場が静まり返った。
舞台上の君も、驚いた様子でこちらを凝視しているのが見て取れた。
構わず僕は呼びかけた。
「大丈夫! 頑張って!」
僕の声に続いて、おそらく彼女の友人やクラスメイトたちだろう。
彼女たちからも少しずつ、「頑張れ!」とエールの声が沸き起こる。
あの声を持つ君なんだ。
巡り合わせたこの機会。
ここで 歌わないなんて、勿体ない!
頑張れ!
僕らの思いが届いたのか。
大きな深呼吸の後、怯えるようにして立っていた彼女の雰囲気がぴりりと切り替わる。
そうして掻き鳴らされたギターの音色に、先程までとは違う意味でのどよめきが体育館に広がった。
知らなかった。歌だけじゃなく、彼女はギターの腕も確かだったのか。
驚く僕らに畳み掛けるようにして、満を持して彼女が歌い始める。
その声は、あの春の日と変わらぬ歌声で。
正しく僕が探していた歌姫だった。
軽快なリズムと曲調に、誰が始めたか手拍子も加わって。
彼女が無事に歌い終わったとき、会場は大歓声に包まれた。
「あ、ありがとうございました!」
我に返った彼女は、内気な女の子に逆戻り。
吃りながら、恥ずかしそうに慌てて舞台袖へと消えていく。
そんな彼女を見送る間も、拍手はずっと鳴り止まなかった。
斯くしてお祭り騒ぎは幕を閉じ。
他の参加者に大差をつけて、満場一致のもと、彼女は堂々の一位を勝ち取った。
後に国民的歌手となる、彼女の最初のステージのエピソード。
あの体育館のライブから。
いや、皆が君に気付く前。
桜の下で歌う君を見付けたときから、僕は君に夢中なんだ。
今や大スターの君に無謀かな?
だけど、無名だった頃の君に恋をしたのだから、今更仕方がないよね。
君は僕のことをただのファンだと思い込んでいるようだけれど、そろそろこの気持ちを打ち明けても良いだろうか。
きっと君は驚くだろう。
これからもずっと輝いていて。
恥ずかしがり屋で格好良い。
桜の国の、お姫様。
(2024/04/17 title:025 桜散る)
昔から歌うことが大好きで。憧れ続けたスターダム。
歓声にスポットライト。私は今、夢の大舞台に立っている。
内気な自分には厳しい世界。ここへ辿り着くまでに、苦しみ悩む出来事も色々あった。
今でさえ、この期に及んで手が震える。ギターを握る手も汗ばんで、意識をしたら、足まですくんでしまいそうだ。
「待ってましたー!」
そんな弱気を打ち払うようにして。
歓声に紛れて、一際大きな声が、陰る心の闇を切り裂いた。
俯きかけていた顔を上げれば、目の前には大勢の観客。
それなのに、どうしてかな。
遥か向こうの客席に、手を振り私にエールを送る貴方の姿が目に映ったの。
まるで貴方の方がライトを浴びているかのように、はっきりと。可笑しな話ね。
けれどもこうして、また一つ貴方に助けられた。
貴方は覚えているかしら。
学生時代、思い切って出場した歌唱コンテスト。
人前で歌うのは初めてで。本番になってから、舞台の上で尻込みしてしまった情けない私。
けれどもあの時も、貴方は同じように励まし、勇気づけてくれたよね。
「待ってましたー!」
その一言に、どれだけ気持ちを救われただろう。
力をもらったあの日から、ずっと貴方に焦がれている。
そして、夢を追い求める気持ちにも、火がついたの。
挫けそうになるどんな時も、いつでも貴方のエールが背中を押して、立ち止まる私を導いてくれた。
ずっと見守ってくれて、ありがとう。
おかげでここまで上って来られたよ。
勿論、恋心だけで駆け上がれる道ではなかったわ。
それでも、貴方に感謝を伝えたい。
今日披露する新曲は、貴方への想いと感謝を込めたもの。
さあ、鈍感な貴方は気が付くかしら?
私の素敵なファン一号。
私を救うヒーローで、唯一無二の王子様。
精一杯歌うから覚悟して。
きっと貴方を振り向かせるわ。
(2024/04/16 title:024 夢見る心)