【自転車に乗って】
自転車を見ると君を思い出す
夏休み、君に会うために自転車に乗って何回も、何回もあの坂を上ったりした
それが懐かしいな
今はそれをしなくとも君に会える気がする
だって僕の隣にいつもいるんでしょ?
「これからもよろしく」
『これからも私を忘れないで』
【上手くいかなくたっていい】
どれだけ喧嘩したっていい
愛があればそれでいい
【蝶よ花よ】
『あの蝶々見て!』
『すごく綺麗な色してると思わない!?』
「そうだね」
僕は、無邪気にはしゃぐ君を見つめながら自分は心底
幸せな奴なんだろうなと思う
蝶々を見る君の目は、恋する乙女のようで、とても初々しく感じたのが本音だった
そして僕は一度でもいいからその目を僕だけで埋めてみたい、そう思ってしまった
しかし、その目が向けられているのは紛れもなくこの蝶々であって、僕はその蝶々が止まっている花のようなものだ
それでも別にいいんじゃないか
君に出会えただけでもう十分なのではないか
君と蝶々を見られただけで幸せなのではないか
確かに、君といられるのは僕にとって幸せなことだ
それなのに、僕の中の僕が言う
「君と一生を添い遂げたい」と
何かを決心した僕は君の視界を美しい蝶々で埋め尽くし、その唇を奪い取った
【目が覚めるまでに】
きっと今私が起きたって隣には誰も居ない
でも、もし隣に君が居たら
私はきっと、こう言うだろう
「どうして私の元を去ってしまったの?」
特に深い意味なんてない
単純にそう思ったの
『君に恩返しをしたかったからだよ』
まったく意味が分からなかった
私は何か君のとっていい働きをしたのだろうか
何も思い出せない
ところで今は何時何分だろう
もし15時を過ぎていたならお菓子を一緒に作りましょうね
今日は何が食べたい?
カヌレ?それともチーズケーキ?
早く2人で家に帰ろう
そしたらずっと2人でいようね
ねえ、もし私が君のことを忘れてしまうって分かってたなら君はどうした?
君と私の記憶が無くなってしまうの
なぜだか分からないけど、変な機械の中で私は眠らないといみたい
眠った後の私は何も覚えていない
ずっと前に君とした会話も変な機会のことも
その度に変な人たちから事情を聞かされる
最初は怖かったけど、久しぶりに君とお話をしたからもう何も怖くないの
そういえば君は少し老けていた気がしたの
シワが増えておじいちゃん見たいね
少しだけ覚えているものがある
それは君の匂いだけ
それだけは、なぜか鼻に住み着いてるみたいなの
あぁ、早く君に会いたいな
顔も名前も覚えていないのに君に会いたくなるの
目が覚めるまでに君の全てを思い出してみるよ
それまでは私のそばにいて
どうせ君のことは見えないだろうけど思い出だけは何とか思い出すよ
それじゃあ、また200年後に私を起こしてね
『神様が舞い降りてきて、こう言った。』
「僕は君が好きなの」
「でも、もう大丈夫だよ」
彼が私の頬に優しく触れる
世界は残酷ね
こんな幸せな夢を見させるなんて
もうこの世には存在しない記憶
もうこの世には存在しない愛
こんなの大っ嫌いだわ
勢いよくあなたの手を払おうとした
だけど、視覚以外の五感が全てシャットダウンされていたのかどうしようもできなかった
このまま、この余韻に浸っていていいのかな。
と考え始めもした
でもそんな考えすぐに吹き飛んだ
これは夢なの
存在しない
過去の物語
世界は、神様は残酷ね
そして神様は言う
【このまま眠りにつきなさい。君はもういい】
私は逆らうものがないかのようにそっと涙を流し、
君の腕の中でぐっすりと眠った。