【蝶よ花よ】
『あの蝶々見て!』
『すごく綺麗な色してると思わない!?』
「そうだね」
僕は、無邪気にはしゃぐ君を見つめながら自分は心底
幸せな奴なんだろうなと思う
蝶々を見る君の目は、恋する乙女のようで、とても初々しく感じたのが本音だった
そして僕は一度でもいいからその目を僕だけで埋めてみたい、そう思ってしまった
しかし、その目が向けられているのは紛れもなくこの蝶々であって、僕はその蝶々が止まっている花のようなものだ
それでも別にいいんじゃないか
君に出会えただけでもう十分なのではないか
君と蝶々を見られただけで幸せなのではないか
確かに、君といられるのは僕にとって幸せなことだ
それなのに、僕の中の僕が言う
「君と一生を添い遂げたい」と
何かを決心した僕は君の視界を美しい蝶々で埋め尽くし、その唇を奪い取った
8/8/2023, 10:16:06 AM