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3/7/2024, 9:57:34 AM

 学校から帰る前、ゲーム友達の友也にゲームを貸してもらった。
 友也は『絶対面白いから』と押し付けるように貸してきたが……

 タイトルはキズナ・クエスト。
 友人が言うには、文字通り絆を売りにしたゲームとのこと。
 これまでもたくさんゲームを貸してもらったが、外れは無かった。
 これも期待していいのだろう。
 押し付けられたものではあるけど、ちょっとだけ楽しみである。

 と言うわけで家に帰ってすぐプレイすることにした。
 そしてゲームをプレイし始めてから一時間。
 絆を売りにしているだけあって、仲間とのイベントが熱い。
 連携技も豊富で、なるほど友也が進めてくるのも分かる。
 そして、ついに初めてのボス撃破。

 一章のボスながら強すぎず弱すぎず、非常に戦い甲斐のある敵であった。
 序盤にもかかわらず、達成感がすさまじい。
 これからどんな冒険が待っているのか。 
 期待に胸を膨らませながら、ボスを倒した報告しに街へ戻る。

 すると怪しい人間が近づいてきた。
『あの強敵を倒す場面を拝見させていただきました。思わず見とれていまいました』
 初対面にもかかわらず、急にゴマをすってくる不審者。
『貴様、何者だ』
 主人公が不審者を問いただす。
 何が目的だろうか?

『私、奴隷商人でございます。単刀直入に申し上げます。あなたの仲間を売ってください。高額で買取させていただきます』
 仲間を売れだと?
 ふざけているのだろうか?
 仲間を金で売る?
 そんなの出来るわけ――
『10万GOLD出しましょう』
 その金額に心臓が高鳴る。
 え、10万?
 それだけあったら強い武器帰るじゃん。
 ちょっとボス厳しかったから、装備充実させたかったんだよね。
 じゃなくて。
 仲間を売るわけないだろ。
 選択肢は「いいえ」だ。

 俺は正気に戻る。
 まったくだ、仲間を売るなんてありえない。
『分かりました。では15万GOLDでいかがでしょうか』
 増えた。
 そして出てくる「はい」「いいえ」の選択肢。

 そこで俺は気づく。
 このゲームて、もしかして『絆が売り』じゃなくて『絆を売る』ゲームなのか?
 とんでもないゲームシステムだ。
 まったく、友人もとんでもないゲームを貸してきたものだ。
 こんな目先の
 そして俺は「いいえ」を選択した。
 …………………
 …………
 ……


 △  ▲  △

 翌朝、学校で。
「おっす、ゲームどうだった?」
「面白かったわ」
「ならよかった」
 俺の答えに、友也が嬉しそうに笑う。

「いくらで売った?」
「100万GOLDと珍しいアイテム」
「粘ったなあ」
「どうせ、売るんだからと思って、思いっきり吊り上げてやった。商人が最後泣いてたな」
 俺の言葉に友也は腹を抱えて笑う。
 これだけ笑ってもらえたなら、売られた仲間たちも満足であろう。

「それでさ、ゲームしながら思ったんだよね」
「何を?」
 友也が笑うのをやめて、不思議そうな顔でこちらを見る。
「俺と友也の友情、売るとしたらいくらかなって」
「そんなの決まってる。プライスレスだよ」
「俺もそう思った。やっぱ友也は親友だな」
 そしてお互いにがっちり抱き合う。
 世界よ、これが真の友情だ。

「こほん、盛り上がっているところ悪いが、少しいいか?」
 いつのまにか側に立っていた担任が立っていた。
「どちっかに授業の準備を手伝ってほしいんだが――」
「「こいつが行きます」」
 俺たちはお互いに指を差す。
 休憩がつぶれるのが嫌で、友也に押し付けようとしたのだが、あっちも同じことを考えたらしい。
「さっき親友といったんだから、俺のために役立て」
「は?友達は売ってナンボだ」

 言い争いする俺達を見た担任が呆れた顔で言った。
「……その友情、金をもらってもいらない」

3/5/2024, 10:18:14 AM

「たまには別の場所を通って帰ろう」
 卒業式の帰り道、隣で歩いていた彼が言った。
 突然の提案に、思わあず彼の方を向く。
 家が近所なので、付き合い始めてからずっと一緒に帰っている。
 けれど、そんなことを言われたのは初めてだった。

 もしかしたら彼にも思うことがあるのかもしれない。
 なぜなら、こうやって一緒に帰るのも最後なのだ。
 私たちは中学校を卒業し、四月から別々の高校に進学する。

 だからなのだろうか、彼は見たことのない顔で私を見つめている。
 不思議に思いつつも、私はコクリと頷く。
 それを見た彼は私の手を取り、いつもと違う道に入る。
 彼の大胆な行動に驚きつつも、素直についていく。
 いつもはは通学路から見るだけの脇道。
 緊張しながらも、彼と二人で入っていく。

 脇道に入って、急に雰囲気が変わり少し驚く。
 さっきまでいた道より狭く、どこか暗さを感じる。
 営業中かどうか分からない個人店やかすれた標識を見て、まるで異国に来たかのような錯覚に陥る。
 それでも不安にならないのは、きっと彼が手を握ってくれてるから。

「ここ」
 しばらく歩いた先で、彼は公園の前で立ち止まる。
「連れてきたかった場所」
 彼が指さしたほうを見ると、そこには見事な赤い梅が咲き誇っていた。

「きれい」
 心の中の言葉がそのまま口をついて出る。
「君に見せたくて」
「ありがとう、嬉しい」
 彼の気遣いに心が嬉しくなる。
 
 公園の中で静かに立っている梅の木。
 いつからいるのか、大きくて立派な梅だ。
 それはもうすぐ春の訪れを知らせる、幸運の花。
 でもそれは私たちの別れを知らせる、不吉の花。

 今日で最後と言うことを思い出して、急に不安になる。
 彼はどう思っているのだろうか?」
「四月から別の高校だね」
「そうだな」
 彼は素っ気なく言葉を返す。
「でも、引っ越すわけじゃ、ないし。すぐ、会えるし」
 少しつっかえながらも、彼の想いを伝えてくれる。
 別れる気が無い事に、心の底から安心する。
 私はそれが嬉しくて、顔がほころんでしまう。

 
「また見に来ようね」
「ああ」
 次に会う約束をする。
 もうこうして一緒に帰ることは無いのは寂しい。
 だけど、彼とはまた会える事が、何よりも嬉しい。

 もしかしたら、新しい学校の準備で会えるのがずっと先になって、その時には梅の花が終わっているかもしれない。
 だけどそれでも構わない。
 花の無い花見だって、彼と一緒なら乙なものだ。
 

3/4/2024, 11:10:30 AM

<読まなくてもいい前回のあらすじ>
 物語の主人公、百合子はひな祭りと言うことで、友人の沙都子の家に遊びに行く。
 目的は沙都子が飾っている豪華なひな人形である。

 だが、百合子はそこで衝撃の事実を聞く。
 その事実とは、一年前のひな祭りの時、百合子が甘酒で雰囲気で酔っぱらって暴れ、ひな人形を壊したというのだ。
 莫大な弁償金におののく百合子。
 しかし沙都子は自分がデザインした服のモデルになるなら、弁償しなくてもよいと言う。
 いやいやながらも、百合子は服のモデルを了承するのだった。

 そして今日も着せ替え人形として呼ばれたのだったが……

 ~以下本文~

「これ、私の気持ちです。受け取ってください」
 私は顔を真っ赤にしながら、手紙を渡す。
 もし何も知らない人が見れば、告白の場面だと思うことだろう。
 でも手紙を渡す相手は、親友の沙都子だ。
 色恋沙汰じゃない、友人同士のよくある手紙のやり取りだ。
 だが沙都子の反応は冷ややかだった。

「百合子、これは何の真似なの?」
「普段は言えない気持ちを手紙にしました。読んでいただければ」
「ふーん」
 私の手紙を、友人は見るからに疑わしげな顔で受け取る。

「悪口書いてるの?」
「まさか!日ごろの感謝の言葉です」
 沙都子はまるでゴミをみるようなの目で私を見る。
 あれは友人を見る目じゃないな。
 私ってそんなに信用ない?

 沙都子は大きくため息を吐いた後、折りたたまれた手紙を広げて読み始める。
 読み終えて一瞬何かを考えた後、声に出して読み始めた。

「『拝啓 沙都子様。
  突然ゴメンね。
  沙都子に言いたいことがあるんだけど、恥ずかして言えないので手紙にしました』」
 自分が書いたとはいえ、改めて書いたことを聞かされるの恥ずかしいな。

「『沙都子、いつも遊んでくれてありがとう、いつも迷惑かけてごめんね。
  沙都子はお金持ちのご令嬢で、私は一般家庭の何の変哲もないただの女の子。
  あなたと私は本当は済む世界の違う人間だっていうのに、嫌な顔一つせず遊んでくれて感謝でいっぱいです』
 沙都子の可愛い顔が、めっちゃ嫌そうな顔になる。
 『嫌な顔一つせず』というのはさすがに言いすぎたか。

「『私はそんな沙都子が大好きです。
  これからも一緒に遊んでください。

  大好きな君に。
  あなたの親友、百合子より』」
 沙都子が手紙を読み終える。
 そして沙都子は私を見てニコッと笑う。
 思いが通じた。
 私が勝利を確信したのもつかの間、沙都子は笑顔のまま手紙を破り捨てた。

「ああー。ひどい。一生懸命書いたのに!」
「百合子さん。伺ってもよくてよ、遺言」
 沙都子が笑顔を湛《たた》えながら、私に迫ってくる。
 やっべ、めちゃくちゃ怒ってる。

「やだなー、百合子『さん』なんて他人行儀。
 いつものように呼び捨てにしてよ。友達じゃん」
「心配されなくても大丈夫ですよ。友達ではありませんし」
 これは駄目だ。
 私は即時撤退を決断する。

「すんません許してください。出来心だったんです」
「嘘おっしゃい。どうせ、モデルが嫌だから、機嫌を取ってなんとか逃げようと思ったんでしょ」
 お見通しだった。
 沙都子はいつも私の企みを看破する。
「あなたが分かりやすいだけよ」
「え?私ってそんなに顔に出る?」
「うん」
 沙都子の言葉に衝撃を受ける。
 次から気を付けよう。
「無理だと思うけどね」
 だから心読まないで。

「それはともかく、私としては理不尽な要求したわけではない思っているんだけど……
 弁償するよりましでしょ」
「それはそうなんだけど、その服がね。可愛すぎると言うか……」
「似合ってるわ」
「いえ、私としてはもっとカッコいい系の服が着たいのです、ハイ」
「なるほど」
 沙都子は納得したようにうなずく。

「なら普通にそう言えばいいのに」
「えっ」
「そりゃ、嫌がられるよりは、喜んできてもらった方がいいもの。
 セバスチャン、クール系の服持ってきて」
 「畏まりました」と言って老齢の執事が部屋を出ていった。

「ありがとう。沙都子、大好き」
 私は嬉しさのあまり、沙都子に飛びつく。
「やめて、分かったから離れなさい」
 沙都子の力が想像以上に強く、引きはがされてしまう。
 私にできる最大限の親愛表現をしたのだが、沙都子のお気に召さなかったらしい。
 でもそれじゃ私の気が済まない。

「こんなのじゃ、私の気持ちを伝えることが出来ない。
 そうだ、もう一度、大好きな沙都子に手紙を――」
「それはやめて」
 沙都子に絶交されそうな勢いで拒否されたので、手紙を書くことは諦めた。
 まあ、いつか機会があると思うので、その時に改めて伝えよう。

 まったく、沙都子は恥ずかしがり屋さんなんだから。

3/4/2024, 9:47:48 AM

 私は友人の沙都子の家に遊びに来ていた。
「招待してくれてありがとう、沙都子」
 私は沙都子に挨拶をする。
「招待して無いわよ、百合子」
 沙都子は呆れなたような顔をして言い返す。

「あなた、いつもアポなしで来るわよね。連絡してっていつも言ってるでしょ」
「ごめんね」
 私は舌を出しながら謝る。
「反省してないでしょ、もう」
 沙都子は文句を言っているが、なんだかんだで追い返すような真似はしない。

「で、今日は何?」
「今日はひなまつり。
 立派なお雛様を飾っているんでしょ。見に来たよ」
 沙都子がこれ見よがしにため息をつく。
「嘘でしょ、新作のFF7が目当てのくせに」
「そんなことないよ。
 いや、それも目当てなんだけどさ、今日はお雛様がメインなの。
 お雛様、毎年楽しみにしてるんだからね」
「本当かしら?」
「でも見せる相手がいないと、つまんないでしょ?」
「まあ、それはそうなんだけど。
 仕方ないわね、セバスチャン」
「畏まりました。沙都子お嬢様」
 どこからともなく老齢の執事が現れる。
「ではこちらへ」
 そう言ってセバスチャンは私たちを案内してくれる。

 そう、沙都子の家は世界有数のお金持ちだ。
 本来なら私のような普通の家庭の子供とは関わり合いを持つことは無いだろう。
 でもそんなことを気にせずに遊んでくれる器の大きい友人だ。
 そんな期待に応えて、今日も遊びに来たのである。

 お雛さまの所に行くまでの間、沙都子とたわいもない話をしながら歩く。
 そしてしばらくしてある部屋の前で立ち止まった。
「この部屋よ」
 その言葉を合図にセバスチャンが、部屋の扉を開ける。
 沙都子に目で促されながら部屋に入ると、そこには大きなひな壇にきらびやかなひな人形がたくさん並べられていた。

「ほー。相変わらず見事なお雛様ですな。鑑定額はおいくら万円?」
「億は行くと言っておくわ」
「億……」
 ごくりと唾をのむ。
 億もあれば遊んで暮らせるなあ。
 そんなことを思いながらも、どこか違和感を感じる。
 去年見たひな人形と違うような……

「気のせいかもしれないけどさ、これ去年までのやつと違くない?」
「あら、気づいたの?そうよ新しく作ったの」
「じゃあさ、前のやつ頂戴」
 ダメもとでおねだりしてみる。
 ここに飾ってないということは、もしかしたら倉庫に仕舞っているのかもしれない
 たとえ気まぐれでもお雛様をもらうことが出来れば、メルカリで売って大もうけだ。
 メルカリで億を出せるやついるかは知らんけど。
 だが沙都子の答えは、私の予想に反したものだった。

「……やっぱり去年のこと覚えていないのね」
 私は予想外の答えに面食らう。
「えっ、去年何かあった?全く記憶にないんだけど」
「ひな祭りだからと言って、甘酒飲みまくって、酔っぱらって、暴れた」
「マジ?」
「マジ」
 沙都子が感情の無い能面のような顔で言い放つ。
 その顔怖いからやめて。

「ちなみに甘酒って、普通酔わないのよ」
「へ?じゃあ、なんで私は酔って――」
「その場の勢いで酔ってたわ」
 自分は刹那に生きる女だと自負していたが、そのせいで他人に迷惑をかけるとは……
 反省しよう。

「それで暴れて仕方が無いから、家の使用人を呼んで取り押さえようとしたわ。
 でもそれでも抑えきれないほど暴れてね。
 そのうち暴れ疲れたのかそのまま寝たから、使ってない部屋に放りこんだわ。
 それで、そのうち起きてそのまま帰ったわ」
「あーそういえば気がついたら床で寝てたわ。でも、いくら何でも床に直って扱い雑過ぎない?」
「寛大なほうよ。お雛様壊したんだから」
「記憶にありませんが、謹んでお詫び申し上げます」
 私は即座に土下座の姿勢に移行する。

「ウチの親、億のお金が払えるほど稼いでないんです。なにとぞ弁償はご勘弁を」
「あなたみたいな貧乏家庭に払えるわけないでしょ。諦めているわ」
「ありがとうございます。その代わりになんでもします」
「ん?今『なんでも』って言った?」
 背筋に嫌なものを感じ、言い直す。
「出来る範囲でなんでもやります」

 私の言葉に沙都子は満面の笑みを浮かべる。
「そう、ちょうど良かったわ。実は私、服のデザイナー目指しているの。
 百合子、あなたモデルになってくれない?」
 提案の形を取ってはいるが、有無を言わせない迫力に思わずたじろぐ。
 いつの間か沙都子の横には、メイド立っていた。
 メイドの手には、私がこれまでの人生で着たことが無いような、かわいらしい服だった。
 そしてセバスチャンの手には、お高そうなカメラが……

「沙都子、そんなフリフリのついた服、私には似合わないからやめよう、ね?」
「大丈夫。恥ずかしいのは最初だけ。それとも弁償のほうにする?
 さあ、立って。」
「ううう」
 私に選択の余地はなく、おずおずと立ち上がる。

「私に任せなさい。
 お雛様なんて霞むぐらい、綺麗にしてあげるんだから」

3/3/2024, 9:42:04 AM

 今日は期末試験の日。
 この結果次第では休み返上で補習がありうるほど重要な試験である。
 俺には休みのスケジュールはぎっしり詰まっているので、この試験だけは落とすわけにはいかないのだ。
 だが俺は答案用紙に何も書き込めないでいた。
 筆記用具が無いわけじゃない。
 純粋に答えが分からないのだ。

 これまでの試験は、授業聞いてちょっと勉強すれば何とかなった。
 それどころか、平均より上を取るのも難しくはない。
 だから今回は全く勉強しなくても大丈夫だろうと思ったのだが、この有様である。
 あと最近面白いゲームが出まくったのでそのせいでもある。
 ……いや、ゲームのせいにするのは良くない。
 すべては期末試験と言う制度が悪いのだ。

 だがそんな現実逃避をしても目の前の解答欄は埋まらない。
 こういう時、凡人ならばカンで答えるだろうが、俺はそんな無粋な真似はしない。
 秘策があるのだ。
 この絶望的な状況を切り開いてくれるたった一つの希望。
 それはサイコロ鉛筆である。
 断面が丸ではなく、六角形の鉛筆。
 これに数字をそれぞれの面に書けばあら不思議、答えを教えてくれる魔法の鉛筆に早変わりだ。

 昨晩寝る前に、『さすがに全く勉強しないというのは、いくらなんでも不味いのでは?』という不安に駆られ急遽《きゅうきょ》作ったものだ。
 使わないに越したことは無いと思っていたが、結局使う羽目になってしまった。
 反省すべきことはたくさんあるが、それは家に帰ってからの話。
 ともかくこれで合格間違いない。

 俺は鉛筆を転がし、解答欄を埋めていく。
 先生もそんな俺の様子を見ているが何も言わない。
 これはカンニングではないから当然だ。
 もしも口出ししようものならSNSで炎上待ったなし!
 最近の先生は大変ですな。

 すべての解答欄を埋めると、ちょうど試験終了のチャイムが鳴る。
 さすがに記述形式のものは埋めることはできなかったが、選択問題は全て埋めた。
 けっこう調子が良かったので、平均は堅いだろう。

 少しの休憩ののち、次の教科の試験が始まる。
 この試験もこの魔法の鉛筆さえあれば、赤点回避は確実だろう。
 配られた解答用紙を受け取り、教師の合図とともに書き込み始める。
 ぱっと見で選択問題が多い。
 これはサイコロ鉛筆の独壇場だな。
 勝利を確信し、回答用紙に名前を書きこもうとして、しかし鉛筆が止まる。
 俺は致命的なミスを犯したことに気が付いたのだ。

 さっきのテスト、名前書いてない

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