学校から帰る前、ゲーム友達の友也にゲームを貸してもらった。
友也は『絶対面白いから』と押し付けるように貸してきたが……
タイトルはキズナ・クエスト。
友人が言うには、文字通り絆を売りにしたゲームとのこと。
これまでもたくさんゲームを貸してもらったが、外れは無かった。
これも期待していいのだろう。
押し付けられたものではあるけど、ちょっとだけ楽しみである。
と言うわけで家に帰ってすぐプレイすることにした。
そしてゲームをプレイし始めてから一時間。
絆を売りにしているだけあって、仲間とのイベントが熱い。
連携技も豊富で、なるほど友也が進めてくるのも分かる。
そして、ついに初めてのボス撃破。
一章のボスながら強すぎず弱すぎず、非常に戦い甲斐のある敵であった。
序盤にもかかわらず、達成感がすさまじい。
これからどんな冒険が待っているのか。
期待に胸を膨らませながら、ボスを倒した報告しに街へ戻る。
すると怪しい人間が近づいてきた。
『あの強敵を倒す場面を拝見させていただきました。思わず見とれていまいました』
初対面にもかかわらず、急にゴマをすってくる不審者。
『貴様、何者だ』
主人公が不審者を問いただす。
何が目的だろうか?
『私、奴隷商人でございます。単刀直入に申し上げます。あなたの仲間を売ってください。高額で買取させていただきます』
仲間を売れだと?
ふざけているのだろうか?
仲間を金で売る?
そんなの出来るわけ――
『10万GOLD出しましょう』
その金額に心臓が高鳴る。
え、10万?
それだけあったら強い武器帰るじゃん。
ちょっとボス厳しかったから、装備充実させたかったんだよね。
じゃなくて。
仲間を売るわけないだろ。
選択肢は「いいえ」だ。
俺は正気に戻る。
まったくだ、仲間を売るなんてありえない。
『分かりました。では15万GOLDでいかがでしょうか』
増えた。
そして出てくる「はい」「いいえ」の選択肢。
そこで俺は気づく。
このゲームて、もしかして『絆が売り』じゃなくて『絆を売る』ゲームなのか?
とんでもないゲームシステムだ。
まったく、友人もとんでもないゲームを貸してきたものだ。
こんな目先の
そして俺は「いいえ」を選択した。
…………………
…………
……
△ ▲ △
翌朝、学校で。
「おっす、ゲームどうだった?」
「面白かったわ」
「ならよかった」
俺の答えに、友也が嬉しそうに笑う。
「いくらで売った?」
「100万GOLDと珍しいアイテム」
「粘ったなあ」
「どうせ、売るんだからと思って、思いっきり吊り上げてやった。商人が最後泣いてたな」
俺の言葉に友也は腹を抱えて笑う。
これだけ笑ってもらえたなら、売られた仲間たちも満足であろう。
「それでさ、ゲームしながら思ったんだよね」
「何を?」
友也が笑うのをやめて、不思議そうな顔でこちらを見る。
「俺と友也の友情、売るとしたらいくらかなって」
「そんなの決まってる。プライスレスだよ」
「俺もそう思った。やっぱ友也は親友だな」
そしてお互いにがっちり抱き合う。
世界よ、これが真の友情だ。
「こほん、盛り上がっているところ悪いが、少しいいか?」
いつのまにか側に立っていた担任が立っていた。
「どちっかに授業の準備を手伝ってほしいんだが――」
「「こいつが行きます」」
俺たちはお互いに指を差す。
休憩がつぶれるのが嫌で、友也に押し付けようとしたのだが、あっちも同じことを考えたらしい。
「さっき親友といったんだから、俺のために役立て」
「は?友達は売ってナンボだ」
言い争いする俺達を見た担任が呆れた顔で言った。
「……その友情、金をもらってもいらない」
3/7/2024, 9:57:34 AM