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2/8/2024, 9:50:30 AM

 『どこにも書けないこと』というお題なので、誰にも言ったことが無い話をします。

 私が3年前の事です。
 当時、私は知らない街を散歩することが趣味で、学校が休みの日にはよく出かけて散歩していました。
 
 太陽が照り付ける暑い夏の日でした。
 その日も知らない街を歩き、知らない街並みを堪能していました。
 ですが気が付くと周りの景色が変わっていることに気が付きました。
 建物が廃墟しかなく、木も枯れ木で、なんとなく地獄みたいだなと思ったのを覚えています。

 しかし私は慌てませんでした。
 稀にですが、異世界のようなところに迷い出ることがあり、今回も『またか』くらいにしか思ってませんでした。
 なのでそのまま歩いて、そのうち帰れるだろうと思ってました。

 ですが道を歩いているうちに妙な音が聞こえてくるようになりました。
 どうやら私が向かっている方向から聞こえているようで、道を進むほど音は大きくなっていきます。

 私は不思議に思いながらも歩いていると、大きく開けた場所に出ました。
 そこには二つの影がありました。
 人ではなく、鬼です。
 赤鬼と青鬼。

 じゃあその二匹が何をしていたのかと言うと、血みどろの争いをしていました。
 嫌な予感がしました。
 なぜ争っているのかは分かりませんが、鬼に見つかると大変な事になります。
 この二匹に気づかれないようにすぐさま引き返そうとすると、足元にあった枝を踏み音を立ててしまいました。
 音に気づいた二匹が私の方を見ました。
 その時の私の恐怖が分かりますか?

 私はそのまま背中を見ずに走り出し、一目散に逃げました。
 どれだけ走ったのか、いつの間にか家の前に立っていました。

 これが今まで誰にも話さず、どこにも書かなかったことです。
 こんなのどこにも書けませんよ。
 だってこれを見た鬼が私を見つけるかもしれません。

 でも皆さん不思議に思われますよね。
 なんで今頃になって書いたのかって。

 実は最近ずっと視線を感じているんです。
 ここ一年の間、ずっと誰かが見ている気がするんです。
 外にいても、家の中にいても……
 私は疲れました。
 もう楽になりたいのです。

 これを書いている間に、部屋の外から物音が聞こえてきました。
 彼らがやってきたのでしょう。
 やっと楽になれ
 

2/7/2024, 9:56:12 AM

 旅の途中で倒れたところ、近くの村の人に助けてもらった。
 そこで山賊が暴れていることを聞く。
 血も涙もなく、近くを通る人間を見境なく襲うので、みんな困っているという。

 私は自分の剣術には自信がある。
 私は助けてもらった恩義で山賊を退治することにした。
 一宿一飯の恩義に報いるためでもあるが、手柄をあげたい気持ちがあったことも否定しない。

 もちろん村の人たちは無謀だと言って私を止める。
 自分たちが我慢すればいい事、死ぬことはない、と。
 優しい人たちである。
 だが私はなんとか村人から山賊のアジトの場所を聞き出し、そこに赴いた。
 だが――
 
「観念するがいい。貴様の命もここでお終いよ」
「くっ」

 私は今膝をついていた。
 私は剣には自信があった。
 だが、山賊は私より強かった。

 始めの一振りで刀は弾き飛ばされた。
 次の一太刀で切り殺されることを覚悟したが、なぜか切られることは無かった。
 その隙に刀を拾い上げ、山賊と対峙するも再び刀を弾き飛ばされる。
 そしてその時も次の攻撃が来ることは無く、再び刀を拾う。

 何度か切り結んだあと、私は気づいた。
 山賊は私で遊んでいるのだ。
 その事実に身が震える。
 山賊との差はそこまでなのか……

「気づいたか。そうさ、俺は手加減している。
 だが落ち込むことは無い。
 何度かやれば、一度くらい剣が当たるかもしれんぞ」
 絶対そんなことは無いがな。
 そんな意味を言外に含み、山賊は笑う。

 その後も私は山賊に切りかかった。
 その度に刀を弾き飛ばされ、そして拾わされる。
 何度挑もうとも、山賊には刀が届かない。

 勝てない。
 その言葉が頭を駆け巡り、一歩後ずさる。
「終いだな」
 そう言うと、山賊は私の刀を遠くに弾き飛ばした。
 次は無いということだろう。

 恐怖が体を支配する。
「なかなか楽しめたよ。じゃあな」
 山賊は持っていた刀を振りかぶり、私を切り殺そうとした、まさにその時――

「ポッポー、ポッポー、ポッポー」
 背中から鳩の鳴き声が聞こえる。
「なんだあ」
 山賊は鳩の鳴き声に驚いたのか、動きが止まる。
「なんだ、南蛮から来た商人から取り上げた時計かよ。間の悪い」
「南蛮……時計……」

 振り返ると巨大な時計が鎮座していた。
 それは見事な鳩時計であった。
 知り合いの商人に見せてもらったことがある。
 時間を示す南蛮のカラクリであると。

 そのことを思い出すと同時に、私はこの時計に勝機を見出した。
 うまくいくかは分からないが、この手段にかける。
 私は時計に飛びつき、時計の針をもぎ取る。

「貴様!」
 山賊が危険を感じたのか、振り上げた剣を振り下ろす。
 だが遅い。
 私は山賊の剣を時計の長針で受け止める。
 重い衝撃が腕に伝わるが、耐えれないほどではない。

「何!?」
 山賊は予想外の事態にうろたえる。
 私は山賊が態勢を整える前に、もう片方に持った短針で山賊の心臓を正確につく。

「馬鹿な……」
 その言葉を最後に山賊は地面に崩れ落ち、二度と起き上がることは無かった。
 こうして山賊は退治され、村に平穏が戻り、人々から感謝されたのであった。

⚔ ⚔ ⚔ ⚔

 これが日本で使われた二刀流の最古の記録と言われています。

 このこのエピソードからも分かるように、片方で敵の刀を防御し、もう片方で攻撃する。
 この攻防一体の構えが評価され、のちの時代に多く使われました。

 例えば戦国時代、織田信長好んでこの構えを使い、日本の戦争を変えたと言われています
 また明治維新の時にも、多くの侍たちに使われ、外国から来た黒船を何隻も沈めたことは、皆さんのご存じの通りです。

 最近までこの記録は偽物だと思われていましたが、他の資料が見かったことで研究が進み、この記録は本物であることが判明しました。

 では最後に一つ。
 分かっているとは思いますが、大嘘です。
 信じないでね。

2/6/2024, 9:55:24 AM

 私は彼女を見た瞬間、体に電撃が走った。
 一目ぼれと言う奴だろう。
 あの子が欲しい。
 そんな気持ちが溢れる。

 だが私もいい年をした大人だ。
 だから私は自分に気の迷いだと言い聞かせ、その場を去った。
 しかし、家に帰り、風呂に入っても忘れることはできなかった。
 布団に入り
 きっと一晩眠れば忘れるはずさ。
 そう思っていた。

 だけど、次の朝になっても、思い出されるのは彼女の事ばかりだった。
 そこに至ってやっと私は自分の過ちを認めた。
 これは恋なんだと。

 彼女に会いに行こう。
 幸い今日は休日だ。
 朝から今から準備すれば、朝の内に会いに行けるだろう。
 急いで着替えを済ませ、家を出る。

 だが車の運転席に乗り込んだ時、冷静な部分の私がささやく。
『あれほど美人だよ。手遅れかも』
 その言葉に私は一瞬ためらう。
 しかし、ここで行かなければ、私は一生後悔するだろう。

『やらない後悔より、やる後悔』
 誰が行ったかは覚えていないが、偉大な言葉である。
 私はその言葉に勇気づけられ、車を出発させる。
 もう迷わない。
 待っていろよ――

 車で一時間、目的の場所に着く。
 目の前にあるのはホームセンター。
 彼女はここにいる。

 怪しまれないよう、でもできるだけ早く歩き店内に入る。
 昨日、彼女がいた場所はいるだろうか?
 心臓が高鳴るのを自覚しながら、その場所を見ると、彼女は昨日と変わらない姿で佇んでいた。
 私はすぐさま駆け寄り、彼女を抱きしめる。
 もう離さない。

 そして私は綺麗に咲いた『アジサイ』を抱きしめてレジへ向かう。
 会計の際、不覚にも手放してしまったが、きっと彼女も許してくれるはず、多分。

 すべての用事が終わった店から出て、車に乗り込む。
 助手席に彼女を座らせ、車のエンジンをかける。
 そしてもう一度彼女を見る。
 綺麗に咲き誇る彼女は美しい
 やはりアジサイはいい。

 これが彼女と出会った時の話。
 彼女は今もベランダにいる

P.S.
 お気づかれた方もいると思いますが、自分の実話です。
 もともとアジサイは好きなのですが、その時初めて見た品種のアジサイに心を奪われ、家に迎え入れました。
 アジサイは、いいぞ。

2/5/2024, 9:50:13 AM

 私はクレア=モンブラン。
 モンブラン公爵家の長女であり、婚約者はこの国の第一王子アレックス様がいます。
 学園では常に首位をキープし、皆からの信頼も厚く充実した学園生活を送っておりました。
 成人した際には結婚し、二人で国を盛り立て、学園で得た知識を活かし王子を――いえ、王を支えるつもりでした。

 ですがあの日、全て失いました。
 アレックス様が、平民の小娘に現《うつつ》をぬかし、私との婚約を破棄したのです。
 それだけなら、私もそういうこともあると諦めることもできました。
 アレックス様の幸せのためだと、自分に言い聞かせ身を引くこともできました。

 ですがあの小娘はアレックス様にあることない事を吹き込んでいたのです。
 その結果、私はアレックス様からは婚約破棄され、お父様からも『役に立たない娘はいらん』と家から追放されました……
 学友たちも誰も庇ってくれることはなく、地位を失った私には興味がないようでした。
 
 私は復讐を決意しました。
 すべてを奪ったあの小娘に。
 そして私を裏切ったかつての学友たちに。
 そしてあの小娘の正体を暴き、アレックス様の目を覚ませるのです

 そのためにもまず日銭を稼ぎ、生活の基盤を確保しなければいけません。
 なので今、私は平民に混じり、額に汗して働いて給金をもらって生活をしております。
 辛い事が多く挫けそうになりますげ、全ては復讐のため、アレックス様のためです。
 泣き言を言っている場合ではありません。

 決意を新たにしていると、この現場の親方がやってまいりました。
 私の境遇に泣いて下さり、仕事の紹介までしてくれた大恩人です。
 この人がいなければ、私は復讐を諦めていたことでしょう。

「よお、姉ちゃん。調子はどうだ?」
「私を誰だと思ってますの?侯爵家令嬢クレア=モンブランですわ。
 絶好調に決まっています」
「相変わらずだねぇ。
 だけどそこら辺のやつらより働いてくれるから、助かっているよ。
 貴族やめてこっちに来ないか?
 絶対向いてるよ」
「ふふふ、お世辞でも嬉しいですわ」
「お世辞じゃないんだけどな。
 ああ、姉ちゃんにお客様だ。今、休憩所で――おい姉ちゃん」

 アレックス様、やはり迎えに来てくれたのですね。
 私の助けがなくとも目が覚められたようですね。
 このクレア、あなた様ことを信じておりましたわ。

 息を切らせながら走って休憩所に駆けつけ扉を開けます。
「アレックスさ――あれ、あなたは……」

 ですがアレックス様はいませんでした。
 そこには護衛を連れた第二王子のアルバート様が待っていたのです。
「ごきげんよう、アルバート様」
「僕の事覚えていてくれたんですね」
「当然ですわ」
 アレックス様の所へ行ったとき、何度も会ってますからね。
 子犬の様に私の後ろをついてきたのを覚えています。

「ところでアレックス様は……」
「はい、そのこととで参りました」
「!」

 やはり、アレックス様は私のことを――
「実は、大変言いにくいのですが……兄上は追放されました」
「……はい?」
 ついほう?

「クレア様が追放されたあと、兄上のスキャンダルが発覚しまして……」
「スキャンダル……」
「はい、兄上は貴族令嬢を20股していました」
「ほえ」
 んん、20って何?
 聞き間違えたかな?

「どうやらクレア様追放の件、あの平民の娘が浮気されていた令嬢を唆して行われていたようです。
 もっとも婚約者の座を争い内部分裂して、流血沙汰になりました。
 関係者に聞き取り調査をしたところ、クレア様の件の全容が発覚した、ということです。
 第一王子は国を混乱させたとして追放。
 令嬢たち及び平民の娘は、これからの沙汰しだいですが、重い刑罰が課せられます」
 アルバート様から告げられた真実に言葉を失ってしまいました。
 アレックス様はずっと私を裏切っていたのです。
 涙が頬を伝うのを感じます。

「ご心中お察しします。ですが、ご安心ください。
 これからは僕がクレア様をお守りいたします」
 そういうとアルバート様は膝をつき、私の手を取りました。
「もしよろしければ、僕と婚約していただけませんか?
 ずっとお慕いしていました」

 その瞬間、心臓は高鳴り、体が熱を帯びていきました。
 そう、私はこの瞬間にアルバート様に恋をしたのです。
 先ほどまで、元婚約者の裏切りに涙したにもかかわらずです。
 そして愛を告げられ、簡単に落ちてしまう。
 なんて軽薄な女なのでしょう。

「ダメですか?」
 アルバート様が子犬の様に目を潤ませながら、上目遣いで聞いてきます。
 それはずるい。
 断れないではありませんか。
「喜んでお受けいたします」
 それを聞いたアルバート様は満面の笑みを浮かべました。

「それでは早速城に戻――」
「聞いたな、みんな。今日は宴じゃああ」
 アルバート様が何かを言おうとしたまさにその時、外で聞いていた親方たちが部屋になだれ込んできます。
 突然の事態に、アルバート様は膝をついた体制で固まり、護衛たちはアタフタしています。
 無理もありません。
 私にとっては日常茶飯事ですが、彼らにとっては初めての経験でしょう。
「よかったな姉ちゃん」
「ありがとうございます」
 親方が肩を叩きながら祝福してくれます。
 すると親方がアルバート様の方に向き直りました。

「おい坊主、姉ちゃんを幸せにするんだぞ」
 アルバート様はあっけに取られていました。
 それ不敬罪ですよ、親方。
 あとで罪に問われないようフォローしておきましょう。

 アルバート様は気を取り直したのか、表情を引き締めました。
「はい、絶対に幸せにします」
 そう言ってアルバート様は私の手に口づけをしました。

2/4/2024, 9:48:04 AM

「1000年後かあ、地球どうなってるかな」
「私は興味ない。だって推しが全員死んでるからね」
「そりゃそうだけどさ」
「でコレ私たちのベットね。もう少し可愛くできないのかしら」

 妻が、ぱっと見はハイテクな棺桶の外観をした物体に目線をやる
 その正体はコールドスリープ装置がある。
 俺たちはこれからこの装置を使い、1000年眠る。

 俺たちはこの装置を使って、遠い遠い星に行く。
 目的地は光でさえ約1000年かかる惑星。
 つまり1000光年。
 光ですら気の遠くなるほど長い時間をかける距離を、俺たちは旅する。

 目的は人類の住めそうな星の調査および、開拓。
 人類が移住するための準備をするのだ。
 別に映画とかでよくある地球が滅ぶ気配なんて全くないけど、転ばぬ先の杖と言うことなんだろう。

「ああ、誰も見たことが無い惑星。ものすごく興奮するよ」
「そんなに張り切ると眠れなくなるわよ」
「冷めてるなあ」
「そういうのが好きなのは男の人だけよ」
「そんなもんかね」

『ビービー、コールドスリープ装置の準備が出来ました』
 装置のアラームがなる。

「そろそろね」
 妻は立ち上がって、装置のほうに近づく。
 私も立ち上がるが、少し考えてずっと聞きたかったことを聞く。
「なあ、最後だから聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「後にしてよ。あなた、いつも寝る前に用事作るわよね」
「後にすると1000年後になって、忘れるかも。今聞きたい」
「はあ、何?」

 妻は胡乱げな目で私を見る。
 私は少しビビるが、はっきり言葉にする
「なんでついてきたの?」
「……どういう意味?」
「だって、家族の同行は許可されているけど、付いてくることは義務じゃない。
 離婚されるのを覚悟で行くって言ったのに、なんでついてきたの?」
 そう聞くと、妻はバツが悪そうに目をそらす。

「それ、答えるの1000年後でいい?」
「ダメ」
「はあ、あんたが浮気しないようによ」
「…浮気?独占欲ってこと?」
「そうよ!満足した!?」
「はい!」
 妻の気迫に思わずうなずく。
 あいつ、そんなに俺の事を……

「あーもう。絶対そんな顔するから言いたくなかったのに!
 じゃあ、お休み!」
 私の返事も聞かずに装置に入る。

『ピーピー装置の準備は出来ています。入って下さい』
「はいはいと」
 私は装置の中に入り、起動ボタンを押す。
 これで数分もすれば眠りに落ち、気が付いたときは1000年後だ。
 とは言えその数分間が長い。

 そういえば、これはもしもの時に通信機能が付いていたはずだ。
 すこし設定をいじって、妻の通信を繋げる。

「ちょっといい?」
『何?』
 妻が不満そうな声で答えてくる。
 まだご機嫌斜めらしい。
 でもご機嫌取りをする時間は無い。
 
「時間が無いから単刀直入に言うね。
 1000年先も二人一緒にいようね」

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