「1000年後かあ、地球どうなってるかな」
「私は興味ない。だって推しが全員死んでるからね」
「そりゃそうだけどさ」
「でコレ私たちのベットね。もう少し可愛くできないのかしら」
妻が、ぱっと見はハイテクな棺桶の外観をした物体に目線をやる
その正体はコールドスリープ装置がある。
俺たちはこれからこの装置を使い、1000年眠る。
俺たちはこの装置を使って、遠い遠い星に行く。
目的地は光でさえ約1000年かかる惑星。
つまり1000光年。
光ですら気の遠くなるほど長い時間をかける距離を、俺たちは旅する。
目的は人類の住めそうな星の調査および、開拓。
人類が移住するための準備をするのだ。
別に映画とかでよくある地球が滅ぶ気配なんて全くないけど、転ばぬ先の杖と言うことなんだろう。
「ああ、誰も見たことが無い惑星。ものすごく興奮するよ」
「そんなに張り切ると眠れなくなるわよ」
「冷めてるなあ」
「そういうのが好きなのは男の人だけよ」
「そんなもんかね」
『ビービー、コールドスリープ装置の準備が出来ました』
装置のアラームがなる。
「そろそろね」
妻は立ち上がって、装置のほうに近づく。
私も立ち上がるが、少し考えてずっと聞きたかったことを聞く。
「なあ、最後だから聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「後にしてよ。あなた、いつも寝る前に用事作るわよね」
「後にすると1000年後になって、忘れるかも。今聞きたい」
「はあ、何?」
妻は胡乱げな目で私を見る。
私は少しビビるが、はっきり言葉にする
「なんでついてきたの?」
「……どういう意味?」
「だって、家族の同行は許可されているけど、付いてくることは義務じゃない。
離婚されるのを覚悟で行くって言ったのに、なんでついてきたの?」
そう聞くと、妻はバツが悪そうに目をそらす。
「それ、答えるの1000年後でいい?」
「ダメ」
「はあ、あんたが浮気しないようによ」
「…浮気?独占欲ってこと?」
「そうよ!満足した!?」
「はい!」
妻の気迫に思わずうなずく。
あいつ、そんなに俺の事を……
「あーもう。絶対そんな顔するから言いたくなかったのに!
じゃあ、お休み!」
私の返事も聞かずに装置に入る。
『ピーピー装置の準備は出来ています。入って下さい』
「はいはいと」
私は装置の中に入り、起動ボタンを押す。
これで数分もすれば眠りに落ち、気が付いたときは1000年後だ。
とは言えその数分間が長い。
そういえば、これはもしもの時に通信機能が付いていたはずだ。
すこし設定をいじって、妻の通信を繋げる。
「ちょっといい?」
『何?』
妻が不満そうな声で答えてくる。
まだご機嫌斜めらしい。
でもご機嫌取りをする時間は無い。
「時間が無いから単刀直入に言うね。
1000年先も二人一緒にいようね」
2/4/2024, 9:48:04 AM