旅の途中で倒れたところ、近くの村の人に助けてもらった。
そこで山賊が暴れていることを聞く。
血も涙もなく、近くを通る人間を見境なく襲うので、みんな困っているという。
私は自分の剣術には自信がある。
私は助けてもらった恩義で山賊を退治することにした。
一宿一飯の恩義に報いるためでもあるが、手柄をあげたい気持ちがあったことも否定しない。
もちろん村の人たちは無謀だと言って私を止める。
自分たちが我慢すればいい事、死ぬことはない、と。
優しい人たちである。
だが私はなんとか村人から山賊のアジトの場所を聞き出し、そこに赴いた。
だが――
「観念するがいい。貴様の命もここでお終いよ」
「くっ」
私は今膝をついていた。
私は剣には自信があった。
だが、山賊は私より強かった。
始めの一振りで刀は弾き飛ばされた。
次の一太刀で切り殺されることを覚悟したが、なぜか切られることは無かった。
その隙に刀を拾い上げ、山賊と対峙するも再び刀を弾き飛ばされる。
そしてその時も次の攻撃が来ることは無く、再び刀を拾う。
何度か切り結んだあと、私は気づいた。
山賊は私で遊んでいるのだ。
その事実に身が震える。
山賊との差はそこまでなのか……
「気づいたか。そうさ、俺は手加減している。
だが落ち込むことは無い。
何度かやれば、一度くらい剣が当たるかもしれんぞ」
絶対そんなことは無いがな。
そんな意味を言外に含み、山賊は笑う。
その後も私は山賊に切りかかった。
その度に刀を弾き飛ばされ、そして拾わされる。
何度挑もうとも、山賊には刀が届かない。
勝てない。
その言葉が頭を駆け巡り、一歩後ずさる。
「終いだな」
そう言うと、山賊は私の刀を遠くに弾き飛ばした。
次は無いということだろう。
恐怖が体を支配する。
「なかなか楽しめたよ。じゃあな」
山賊は持っていた刀を振りかぶり、私を切り殺そうとした、まさにその時――
「ポッポー、ポッポー、ポッポー」
背中から鳩の鳴き声が聞こえる。
「なんだあ」
山賊は鳩の鳴き声に驚いたのか、動きが止まる。
「なんだ、南蛮から来た商人から取り上げた時計かよ。間の悪い」
「南蛮……時計……」
振り返ると巨大な時計が鎮座していた。
それは見事な鳩時計であった。
知り合いの商人に見せてもらったことがある。
時間を示す南蛮のカラクリであると。
そのことを思い出すと同時に、私はこの時計に勝機を見出した。
うまくいくかは分からないが、この手段にかける。
私は時計に飛びつき、時計の針をもぎ取る。
「貴様!」
山賊が危険を感じたのか、振り上げた剣を振り下ろす。
だが遅い。
私は山賊の剣を時計の長針で受け止める。
重い衝撃が腕に伝わるが、耐えれないほどではない。
「何!?」
山賊は予想外の事態にうろたえる。
私は山賊が態勢を整える前に、もう片方に持った短針で山賊の心臓を正確につく。
「馬鹿な……」
その言葉を最後に山賊は地面に崩れ落ち、二度と起き上がることは無かった。
こうして山賊は退治され、村に平穏が戻り、人々から感謝されたのであった。
⚔ ⚔ ⚔ ⚔
これが日本で使われた二刀流の最古の記録と言われています。
このこのエピソードからも分かるように、片方で敵の刀を防御し、もう片方で攻撃する。
この攻防一体の構えが評価され、のちの時代に多く使われました。
例えば戦国時代、織田信長好んでこの構えを使い、日本の戦争を変えたと言われています
また明治維新の時にも、多くの侍たちに使われ、外国から来た黒船を何隻も沈めたことは、皆さんのご存じの通りです。
最近までこの記録は偽物だと思われていましたが、他の資料が見かったことで研究が進み、この記録は本物であることが判明しました。
では最後に一つ。
分かっているとは思いますが、大嘘です。
信じないでね。
2/7/2024, 9:56:12 AM