ねえ、イルミネーションの色って、どうやって作られてるか知ってる?
ただのLEDだろって?
違うよ。
イルミネーションは作り方が違うのよ。
例えば、赤色のイルミネーション。
あれはサクランボの仲間が付ける実を加工して作られてるの。
嘘だろって?
本当だよ
私、バイトで収穫したことあるもん。
赤一色に光ってきれいだったよ
青色のイルミネーションは、海の青い部分を汲み取って特殊な薬品と混ぜて、綺麗に固めて作るの。
小さい頃、海で遠くに行っちゃだめって言われたことあるでしょ。
あれって、海の青いところで泳ぐと、体が青く光って幽霊にみたいになっちゃうんだって。
怖い?
でも昔は不治の病だったけど、最近治療法が分かったから安心してね
次は黄色のイルミネーションはね、驚かないでよ。
なんと、バナナの種なの。
不思議に思ったことあるでしょ。
バナナに種がないのはなんでだろうって。
あれは、お店で売る前に種を抜き取って、別々にして売っているの。
一つ偉くなったね。
あとは白色のイルミネーション。
実は私もよく知らないの。
あれは国家機密でね。
調べようとした友達がいたんだけど、行方不明になっちゃって、今も居場所が分からないの。
君も調べちゃ駄目だからね。
最後は虹色のイルミネーションね。
あんまり見たことないと思うけど、あれは虹の根本を掘ったら出てくるの。
すごくキレイなんだけど、手に入れるのがすごく難しいから、すごく値段が高くて…
だから自分で虹の根本を掘って、いくつか持ってるの。
あれ、嘘だと思ってる?
じゃあ、うちにきなよ。
見せてあげる。
他の話も教えてあげる
嘘のような信じられないような話、たくさんあるから、ね
家に帰って先ずやることは金魚の餌やりだ。
この金魚は、息子が金魚すくいでもらってきた。
もちろん息子世話に飽きて、私がやっている
金魚たちは、自分が帰ってると、待ってましたと言わんばかりに催促してくる。
こちらにも準備というものがあるのだが、全くお構いなしだ。
そして充分な餌を食べれば、用がないと言わんばかりに知らんぷり。
薄情なものである。
次にやるのは水換えだ。
金魚はよく食べるのですぐに汚れる。
なので2週間くらいで一回水換えするのが普通だが、ウチの金魚はよく食べるので、すぐに汚れてしまう。
本当は餌を制限すべきなんだろうけど、金魚の催促に負けて沢山あげてしまう。
だから割と頻繁に水換えをしている。
汚れた水を吸い上げている間、金魚は特に反応しない。
まるで、息子の部屋の掃除している時の、息子の様子そのものである。
食べ物も掃除もやってもらって当然。
熱帯魚のことを自分の子供という人がいるが、言いえて妙だ。
水換えするたびに思うことがある。
金魚はこうやって世話をしてもらっていることを、感謝することがあるのだろうか?
なんか少しだけきれいになったな―、と思ってってるだけなのだろうか?
息子に置き換えて考えたら、それであっている気がしてきた。
たまには感謝の言葉くらい欲しいが、無いものねだりだりろうか。
何だかなあとも思いつつ、カルキ抜きした水を入れようとして、あることを思い出す。
今日は金魚のために糞を分解するバクテリアを買ってきたのだ
カルキ抜きした水に混ぜる。
効くかは分からないが、メーカーを信じよう。
そしてゆっくりと水槽に注ぐ。
愛情たっぷり(?)のバクテリアだ。
じっくり味わうといい。
そんな私の気遣いも全く気づかないように、金魚は悠々と泳いでいた。
そんな様子を見てると、なんだかどうでも良くなってくる。
まあ、元気であればそれでいいのだ。
そう言えば、今日は息子のためにジュースを買ってきたのだった。
愛情たっぷりのジュースなんだけど、やっぱり感謝の言葉は無いんだろうな
そのことに不満に思うんだろうけど、美味しそうに飲む姿を見たら許しちゃうんだろう
そんな事を思っている自分が妙にだけおかしい。
少し笑いながら、私はコップにジュースを注ぐのだった。
信頼しあう二人が、心と心を重ねないと使うことが出来ない剣がある。
子供の頃にそんな事を聞いて、そんなカッコいい剣を使いたいと思った。
それを親に言うと、信頼出来る人が出来たら使わせてくれると約束してくれた。
それを真に受け、信頼出来る人を探した。
子供だったのだ。
けれど、簡単に見つからないからこそ、信頼というのは尊い。
それに気づいた大人になってからも、探し続けたが見つかることはなかった。
諦めかけたその時、彼女に出会った。
初めて会った時は、ただの知り合いの知り合いだった。
だが、何回か会い、話をしているうちに意外にも話が合い意気投合した。
そして信頼関係を築くのに時間はかからなかった。
彼女と出会った2年後、ついに例の剣を握れる日がやってきた。
そのとき、初めて剣の話をした。
馬鹿にされると思ったが、実は自分も…と言って恥ずかしそうにしていた。
似た者同士のようだ。
式は順調に進み、係の者から例の剣が渡される。
一緒に頑張ろうね。
彼女は俺だけに聞こえるようにささやく。
彼女と一緒にこの日を迎えたことを、心の底から嬉しく思った。
「次は、新郎新婦のケーキご入刀です。
皆様、ご祝福下さい」
恋人は俺のことを、よくミスターポーカーフェイスと呼ぶ。
何でもないフリがうまいと言いたいらしい。
確かに、俺は感情が薄いという自覚はある。
この前一緒に激辛カレーを食べさせられた時も、ほとんど動じなかったくらいだ。
一度彼女に、退屈だろうと聞いたことがある。
だが、クールなのがいいとのことだ。
そしていつかその表情を崩させるのが夢だとも言っていた。
道理でよくイタズラを仕掛けられるはずである。
まあ、彼女が良いならそれで良いのだ。
こんな自分にとって、よくできた恋人だと思う。
付き合ってから半年後、彼女の誕生日が近づいてきた。
付き合ってから初めての誕生日だったので、サプライズでプレゼントをすることを思いつく。
さり気なく欲しいものを聞き出し、プレゼントを買う。
だがプレゼントを買ってからというもの、気が気ではなかた。
自分にこんな感情があるということに驚いたくらいだ。
かなり挙動不審だったと思うが、特に彼女から聞かれることはなかった。
まさか自分のポーカーフェイスに感謝する日が来るとは!
そして誕生日当日、タイミングを見計らって、プレゼントを渡す。
だが喜んでいても、驚いた様子はなかった。
不思議に思って、彼女に聞いた。
「だって、何かあるって丸わかりだったもの。
気付かないフリは大変だったわ」
だが、俺は彼女の様子に全く気づかなかった。
どうやら彼女は、俺よりも何でもないフリが上手なようだ。
「ゾンビってさ、食事じゃなくて仲間を増やすために噛みむっていう説があるらしいわよ」
「それ、今言うことか?」
相棒が馬鹿な事を言い始めた。
無理もない。
今まさに、そのゾンビに建物を囲まれているのだから。
「もちろん必要なこと。敵を知ればーってよく言うでしょ」
「じゃあ自分の事も知らなきゃな…。弾は残ってるか?」
「無いわ」
「クソッタレ」
万事休すだ。
「私、思ったの。なんで仲間増やしたいんだろうって」
「何が言いたい」
思わず相棒の顔を見る。
「もしかしたら淋しいんじゃないかしら」
「あれだけいるのにか」
俺は窓の外を見る。
見渡す限りゾンビばかりだ。
「逆に、そう逆にあれだけいるからこそ、一人だと思ってしまうのよ。あなたも経験ないかしら」
そう言われて、考えてみる。
「まあ心当たりはある。知らない町の雑踏で急に一人であることを意識する、というやつか」
「そんな感じ」
「なるほど、興味深い。こんな状況でなかったらもっと聞きたいよ」
そう俺達に残された時間は少ない。
「だがどうする?俺達にアイツラの孤独を癒せってか」
「それはもちろん彼ら自身に解決してもらうわ」
「何か策はあるのか?」
「ええ、互いに互いを認識してもらうの」
「どうやって?」
「任せて」
◆ ◇ ◆
俺達は扉をタイミングよく開けて数体のゾンビを建物の中にいれる。
入ってきたのを確認して、俺達は奥へ逃げる。
ゾンビは疑うこともなく、逃げる俺達を追ってきた。
だが俺達はゾンビを迎えうつ仕掛けを用意していた。
所定の位置に同時にいないと開かない扉など、力を合わせないと進めない仕掛けを何個も作ったのだ。
初めは偶然で進めても、次第に仕掛けが難しくなっていく。
途中から進歩が悪くなり、これは駄目かと思い始めた。
だが次第に彼らはお互いを意識するようになり、難しい仕掛けを難なく突破していく。
そうして彼らはゴールへたどり着き、建物の外へとでる(一方通行)。
だか外へと出たゾンビたちは、再び建物に侵入しようとはしなかった。
当然だ。
彼らは自らが一番欲しかったものを手に入れたのだ。
彼らは手に入れた仲間たちとともにどこかへ去っていった。
「成功ね」
「そうだな」
本当に成功するとは思わなかった。
なるほど。これを繰り返せば、襲われなくなるだろう。
だが。
「この見渡す限りのゾンビ、全部やるのか…」
「やるしか無いのよ」
「まじかよ」
「てことで、あの仕掛け改良しようか。
無駄が多いし、効率化を図りましょう。
さあ、ゾンビが私達を待ってるわ」
相棒は楽しげに歩いていく。
「働くのは俺なんだがな」
俺はこれから行う労働にウンザリする
大きなため息がこぼれる。
俺は仲間にするやつを間違えたかもしれない