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11/18/2023, 8:16:50 AM

 冬になったらしたいこと?
 そうね、寒いと外で暖かいものが食べたい
 例えばホカホカの肉まんとか唐揚げとか。
 あと、ホットコーヒーやホットココアとかもいい

 寒くて体が震えている時に、暖かい物を体にいれ時の体中に熱が広がっていく感覚がいいのよ
 ホッとするというか、生きてるって感じるっていうか
 ともかくその感覚が好きなの

 でもそれは叶わないのよね
 私知ってるの
 もう長くないんでしょ
 あなたを見てればわかるよ
 隠しごとしてるのは分かるの

 そしてあの木の葉っぱが全部落ちたら死ぬの
 そうでしょ

 治る?
 でも不治の病だって
 え、科学の進歩で治るようになったの

 冬になったらって言うのは?
 え、冬になるくらいには治るからなの

 でも隠しごとしてるでしょ
 いったい何を隠してるの?

 冬になったら温泉に行きたい?
 食べ物の話ばっかりするから、言い出せなかったって、うるさいわ
 私が食いしん坊みたいじゃん
 はあ、心配して損した

 仕方ない
 冬になったら温泉行って、肉まん食べにいこうね
 
 

11/17/2023, 9:25:07 AM

「病院行ってきたよ。私、鼻レ離れだって」
 彼女は言う。
「鼻レ離れ?何だそれ」
 俺は耳慣れない言葉を聞き返えした。
「鼻歌でレの音が出なくなるんだ」
「…治るのか?」
「手遅れだって…」
「なんだと、ふざけてんのか」
「ゴメン」
 彼女は弱々しく謝る。

「いや、悪い。お前に怒っているんじゃないんだ。お前に気づいてやれなかった俺が腹ただしい」
 ずっと一緒にいた俺が気づいてやれなくて何が彼氏だ。
「ううん。私の方が悪いの。あなたが褒めてくれた鼻歌をもう聞かせてあげられないの。別れましょう」
 彼女の言葉に俺はショックを受ける。

 俺はここまで彼女を追い詰めていたのか。
 このままでは離れ離れになってしまう。
 そうあの時のように。

「待ってくれ。お前の鼻歌が聞けなくなるのは残念だが、お前の魅力が消えたわけじゃない」
「でもレの無い私なんて―」
「俺の話を聞いてくれ。昔バンドやってたの知ってるだろ」
「うん、音楽性の違いで解散したって」
「違うんだ」
 俺は強く否定する。

「あのバンドで俺はボーカルだった。ライブをを盛り上げるために、いつも死ぬ気で歌ってた」
 彼女は黙って聞いている。
「いつの頃からかシ抜きででしか歌えなくなってた。大問題さ。シが出ないボーカルに価値があるかってな」
「それでバンド辞めたの?」
「ああ」

 気持ちを落ち着かせるため、一度深呼吸する。
「追放しようとするやつと俺をかばうやつ。お互いに喧嘩し始めて、ギスギスしてそれで解散。メンバーとはそれっきり。離れ離れさ」
 涙が出そうになるのを堪える。

「そんな俺でも、お前は素敵だと言ってくれた。だから俺は、お前に言わなきゃいけないことがある」
 彼女の泣きはらした目を見ながら告げる。
「お前は最高の彼女だ。たとえ、鼻歌でレの音が出なくても」
彼女が俺の胸に飛び込んで泣き始める。
「俺にはお前が必要なんだ」
 彼女はまだ泣いたままだ。

 彼女の不安を取り除くため、勇気を振り絞る
「本当はもっと準備してから言おうと思ってたんだけど―」
 彼女が顔を上げる
「結婚しよう。お互いに足りない分を支え合おう」
「はい」

 こうして俺達は結婚した。
 おそらく俺達にはたくさんの試練があるだろう。
 でも離れ離れになることはない。
 俺たちはいつも一緒なのだから。

11/16/2023, 9:15:35 AM

 子猫は暴れていた
 彼の中の抑えきれない衝動が、彼を突き動かしていた
 彼はもはや子猫ではない
 トラと呼ぶべきだろう

 柱で爪を研ぎ、障子に穴を開け、机の上にあるものをひっくり返す
 短い時間の間に、秩序の保たれた空間は、混沌へと変わり果てた

 暴虐の限りを尽くしていると、どこからか女神が現れた
 女神は彼の名前を呼びながら、彼を捕まえようとする
 しかし彼は速かった
 女神をあざ笑うかのように、華麗に回避する
 もはや誰にも彼を止めることは出来ない

 しかし女神は覚悟を決め、魔法の呪文を唱えた

「チュール」
 それを聞いた瞬間、小さなトラは自分がただの子猫だということを思い出した

 そして子猫は女神をどんなに愛しているか、訴えながら歩み寄る
 そして女神に捕まり、説教をされたのだった

 なおチュールは出なかった

11/15/2023, 9:17:09 AM

秋風は凄腕のエンターテイナーである

自らが吹き抜けることで、様々な風景をコーディネートする
ある時は、夏の終わりと秋の到来を感じさせ、人々を歓喜させる
ある時は、木枯らしを吹かせ、寂しさを演出する
ある時は、紅葉した葉を舞い散らせて、幻想的な光景を演出する
ある時は、寒さを演出し、寒さに震えた恋人たちを寄り添わせる

私も秋風のことを尊敬している
しかし、その秋風にある噂が囁かれる

誰でも秋がもう長くないという話を聞いたことがあるだろう
その秋から、秋風が独立し、夏に移籍するという噂が飛び交ったのだ

私も是非そうであればと思う
だが根も葉もない噂だ
これまでもよく流れた噂

その度に秋風は否定した
「独立するつもりはない」
「私は秋のを切るつもりは無い」

いつも同じことを繰り返す
私はいい加減ウンザリしていた
秋風は悪くないのだが、こうも期待させて裏切られると、文句の一つも言いいたくなってくる

「私、秋風は皆さん常に共もにある」
何度も繰り返された綺麗事に、私の心には秋風が吹き始めていた

11/14/2023, 8:52:19 AM

今までお元気でしたか
最近急に寒くなりましたね
あなたのような立派な木でも、寒いと感じる事はあるのでしょうか
私は急に寒くなったので、慌てて冬服を出しました
油断していました
なんというか、毎年こんな感じな気もします
なかなか人間というものは学習しない生き物なのかもしれません

毎年あなたが紅葉してから来るのですが、今回この時期にここに来たのは理由があります
実は海外に出張が決まり、今年いっぱいは日本を離れることになりました
あなたが紅葉する様子を見れなくて残念です

日本を出る前に、あなたの見事な紅葉を見たかったのですが、今年は暖かい日が続き準備ができてないようですね

あなたの紅葉があまり進んでいないようなので、少し心配です
急激な温度変化なので、お互い体調を崩さないようにしましょう
健康が一番です

日本にまた帰ってきますが、あなたはその頃眠っていることでしょう
次に会うのは来年の春ですね
たくさんの葉っぱで生い茂っている様子を想像すると、とても楽しみな気持ちになります

また会いましょう

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