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10/13/2022, 1:31:03 PM

#子供のように

いつまでも無邪気でいられたらよかったのに。

子供のままではいられない。
皆、時が経てば大人に成り下がる。

両親に守ってもらうことも
祖父母からお年玉を貰うことも
放課後に友達と遊ぶこともなくなる。

弱みを隠し、強さを纏って
そこら辺にいる蟻のように
いつ潰されてもおかしくない世界で
僕らは生きなければならない。

ただ日が昇るまでは
夜が終わるまでは
僕はまた子供に戻ろう。

好きなゲームをしたり
お気に入りの漫画を読んだり
社会から外れた場所にある
僕の唯一の居場所にいる時だけは
子供のように無邪気でいたいのだ。

10/12/2022, 11:21:17 AM

#放課後

オレンジ色に染まる教室に彼はいた。

最初は窓越しにグラウンドでも
見ているのかと思ったが、
机に頭を伏せている。
眠っているのだろうか。

音を立てないようにゆっくりと近づいても
彼はピクリともしない。

そっと彼の体を揺すってみても
低い声が不機嫌そうに唸るだけで
目は固く閉ざされたままである。

「ねえ、起きて」
「んー、ねむい」

やっと起きたかと思えば
まだ動く気はないらしい。

「置いて行くよ」
「せっかく待っててやったのに」
「頼んでないし」

私はソフトテニス部でこいつは帰宅部。

さっさと帰ればいいのに
わざわざ律儀に放課後まで私を待っている。

「可愛い奴め。本当にそう思ってるなら
わざわざ僕を起こしに来ないでしょ」

彼はにやっといたずらに笑う。

「もういい、さよならばいばい」

図星を付かれ早口で別れを告げ
さっさと教室を去ろうとすると
その後ろで慌てた足音が聞こえてくる。

冗談だって、と焦りながら謝る彼を想像しながら
足軽に下駄箱へ向かった。

10/11/2022, 2:41:45 PM

#カーテン

カーテンの隙間から漏れる朝の声に起こされ
今日がまた始まるという絶望に苛まれるのも
今となってはルーティンだ。

瞼の上に光を遮るように腕をのせ
少しばかり抵抗してみる。

扉の奥から階段を上る軽快な足音に
気が付いた時には
彼女がいつものように
僕の部屋に無断入室したあとだった。

バッとカーテンを開けた彼女が
起きたばかりの太陽の光を凝縮したような
眩しい微笑みを浮かべ
「おはよう、朝だよ。今日も一日頑張ろ!!」
と明るく言うものだから
僕もこのまま寝ているわけには行かない。

起きた直後の絶望は彼女の微笑みに浄化された。

慌ただしく学校へ行く準備をして
ゆっくりと彼女と歩く道。
朝を好きになるには十分すぎる理由だった。

10/10/2022, 2:38:56 PM

# 涙の理由


彼女は泣き虫だ。

嬉しいときも泣く。
悲しいときも泣く。
幸せなときも泣く。
苦しいときも泣く。

何故泣くのかと
彼女の頬を流れる涙を拭う僕が問えば
自分の感情に素直でいたいからと微笑んだ。

そしてまた一滴
透明な彼女の想いが頬を伝った。

10/9/2022, 10:08:19 AM

#ココロオドル


幼い頃は何事にも心が踊って
世界が輝いて見えたものだけれど
歳が上がると共に彩度は徐々に低下して
今となっては鮮明だった世界の輪郭が
全く見えなくなってしまった。

けれどそれは私の瞳が曇ってしまったからではなく
私の瞳が肥えたからだ。

自我が成長し
綺麗なものを綺麗だと
汚いものを汚いと
認識できるようになった。

幼き私は知らなかったのだ。

世界の全てが輝いていては
目を痛めてしまう。

だからこそ
輝きを持たないモノが存在し
輝きを持つモノと中和している。

そう考えてみれば
霞んだ世界の輪郭さえも美しく感じる。

なあ、君も心踊るだろう?

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