#放課後
オレンジ色に染まる教室に彼はいた。
最初は窓越しにグラウンドでも
見ているのかと思ったが、
机に頭を伏せている。
眠っているのだろうか。
音を立てないようにゆっくりと近づいても
彼はピクリともしない。
そっと彼の体を揺すってみても
低い声が不機嫌そうに唸るだけで
目は固く閉ざされたままである。
「ねえ、起きて」
「んー、ねむい」
やっと起きたかと思えば
まだ動く気はないらしい。
「置いて行くよ」
「せっかく待っててやったのに」
「頼んでないし」
私はソフトテニス部でこいつは帰宅部。
さっさと帰ればいいのに
わざわざ律儀に放課後まで私を待っている。
「可愛い奴め。本当にそう思ってるなら
わざわざ僕を起こしに来ないでしょ」
彼はにやっといたずらに笑う。
「もういい、さよならばいばい」
図星を付かれ早口で別れを告げ
さっさと教室を去ろうとすると
その後ろで慌てた足音が聞こえてくる。
冗談だって、と焦りながら謝る彼を想像しながら
足軽に下駄箱へ向かった。
10/12/2022, 11:21:17 AM