☆お知らせ☆
いつも楽しく参加させて頂きありがとうございます
ただ自分の楽しみのために何かを綴ってみたいと始めた「書く」生活ですが、♡が増えていく嬉しさについ惹かれ拙い文章を綴り続けてしまっております
「今日も読んだよ!」とか「次を楽しみにしてるね!」という声があの♡マークから聞こえてくるようで、その声欲しさに綴るわけではなくても単純な私は「じゃあ、明日も頑張っちゃおうかな」などと勝手に気分を良くしている次第です
読んで下さっている方にはこの場をお借りして御礼申し上げます
また、皆様の素晴らしい投稿にも大変刺激を頂いておりますことも重ねて御礼申し上げます
実は諸事情がございまして、しばらくこちらへの投稿をお休みいたします
また、戻りましたら「書く」毎日を楽しみたいと思います
暑さ厳しき折、皆様お健やかにお過ごしくださいませ
また、地震の甚大な被害に遭われた地域の方々にはお見舞い申し上げます
「あ、来た!」
ドアホンのモニターから外を確認すると、郵便配達員がボストに何かを入れている姿が見えた
有紗は朝からそれを今か、今かと待っていたのだ
先月受けたデザインコンテストの発表通知が今日届くことになっていた
今時には珍しく、オンラインではなく個別に通知が来るシステムが未だに採用されている
有紗の受けたコンテストは昔からの権威あるもので、今回のテーマは国主催の大きなイベントを象徴するマークを作成するもので、このコンテストは商業デザイナーとして活躍するための登竜門として知れ渡っている
有紗もその道を目指す一人として是非ともその栄冠を掴みたいと日々努力を重ねてきたのだ
震える手でポストの扉を開けた瞬間、すべて上の方に張り付いていた内臓があるべき場所に戻った様な感覚がした
「やった… 受かった…」
その封筒は今まで何度となく涙を飲んできた薄さの封筒ではなく、しっかりと厚みのある合格を知らせる確かな重味だった
これまでの努力がようやく実った嬉しさが胸に込み上げ溢れ出す涙に天を仰いだ
まるでその様子をどこかで見ていたかのタイミングで花屋が贈り物を届けに来たという
お祝いの熨斗が大きく貼られた胡蝶蘭だった
その状況が全く理解出来ずに受領のサインをしていると
これまた絶妙なタイミングで家の中から電話の鳴る音がした
その電話は父の事務所の人間からのもので、大袈裟なほど妙にテンションの高い声がする
「いやぁ〜、この度は大変な賞を受賞されたようでおめでとうございます〜
まもなくお花も届くはずで…
えっ?もう届いた? これは、これは、本当におめでたい!
理事長様のお嬢様ですものね〜
そりゃ、これは、もうねぇ〜
いやいや、本当におめでとうございます!」
頭から冷水を掛けられた思いがした
有紗の父はこの業界では知らぬ人のいない存在でこのコンテストを主催している団体の理事長でもあった
だからこそこれまでも本名ではなく通称で、家族の誰にも内緒でこのコンテストを受け続けてきたというのに…
何故ここに来て…
落胆と失望で有紗の手から合格通知が滑り落ちた
『最初から決まってた』
「原始女性は太陽だった」平塚らいてうの名言だ
母親が一家の太陽と表させるのも、
太陽は明るさやエネルギーの象徴であり、欠かせない唯一の存在という概念から昔からそう言われてきたのだろう
ところが、ここ最近の命さえ脅かされるような暑さからはそのギラつく太陽が疎ましくさえ感じられてしまう
その恩恵がどれほどのものかを、無くてはならないものかを百も承知の上でもだ
こんな時に「君は太陽のようだね!」なんて言われたら、(暑苦しくて迷惑な存在なのかしら?)なんて思ってしまいそうだ…
地球温暖化を阻止するための特効薬のような取り組みが地球規模で行われない限り、この暑さは年々増していくと考える方が自然だろう
ならば、やはりこの夏の激しい太陽の力を生かす他はないだろう
ソーラーパネルの普及や太陽エネルギーの活用を国策として早急に全力で取り組んで欲しい
今こそ、太陽の恩恵を余すところなく活用するべきだ
むろん、そんな体力が国に残っていればの話だが…
ピンチをチャンスに!
まさにこういう時にこそ使う言葉だ
『太陽』
「こんな時間にカフェでコーヒーなんていつぐらいぶりかしら…」
時計はようやく10時を回ったところだった
まわりに目をやると、遅めの朝食を摂るすでにリタイアしていると思しき男性がゆったりと新聞を眺めていたり、パソコンに向かい、コーヒーに手をつけることも忘れて忙しなくキーボードを叩くサラリーマン風の男性
紗代子のような主婦らしき人はひとりも居ないことに、すこし後ろめたさを感じた
もちろん紗代子も、普段のこの時間は家事に追われ家中を小鳥の様に飛び回っている
ところが今朝夫との会話のふとした一言が、紗代子の家事モードのスイッチをブチ壊した
何もかもが馬鹿らしくなり、食事の後片付けもろくにせず、残す家事もすべて放り出して家を出て来たのだ
「あなた!また奥のタオルから使っちゃったの?手前から使ってっていつも言ってるじゃないの!」
何度注意しても夫はキレイに畳まれ整然と並べられたタオルの列に無造作に手を突っ込みタオルを掴み取るのだ
「そんなつまらないことにいちいち拘るなよ!タオルなんてどれも同じじゃないか! あれはこうしろ、これはああしろ!ってそんなつまらないことに何の意味があるんだよ!」
紗代子の頭の中の何かの線が、ブチッ!と音を立てた
(つまらないことですって?! 何の意味があるかですって?! そりゃ、お給料もらう貴方の仕事はさぞ意味があるでしょうよ
それに比べたら、私の毎日の家事なんて意味の無いことでしょうよ
やったって、やったって、目に見えた成果があるわけじゃなし、掃除したってすぐに汚れる、食事を作ったってあっという間に食べ終わる、私のやってることなんて、やったことも分からない様な不毛なことだらけよ!
家政婦でも頼めば済むことばかり
私じゃなくたって、お金で解決することばかりよ!
もう!やってられない!!)
そう心の中で湧き上がる思いをぶちまけた
毎日欠かさない夫の見送りにも出なかった
コーヒーのお陰で少し心が落ち着くと、たいして化粧もせず普段着で飛び出して来たことを後悔した
「これじゃ、気晴らしにショッピングなんて気にもならないわ」
紗代子はとりあえず美容院でシャンプーとセットをして貰うことにした
ヘアースタイルが整うと気分も上るし見栄えも格段に良くなる
簡単なメイクなら頼めば施して貰えるはずだ
「たまには、そんな贅沢したって罰は当たらないわよね」
予定外の美容院はリッチな気分がした
髪は整い薄く化粧で仕上げられた紗代子の顔はいつもよりスッキリとずっと若く見えたが、心は少しもスッキリしなかった
いつもなら次から次に追われる家事を恨めしく思っている時間が、今日はやけにその流れが遅い
せっかくキレイになってショッピングを楽しむはずだったが、何故が心が弾まない
こんな時だから、奮発してランチでもとも思ったが、店の看板のメニューを見てもつい、「こんなの家で作れば簡単に出来るのに、勿体ない!」なんて思ってしまう貧乏性な自分にも呆れてしまう
なんとなく時間を潰しているうちに何だかもう、あれぼどの怒りもどこかへ行ってしまった…
時計をチラチラ見ては、そろそろ洗濯物を入れる時間だわとか、夕飯の仕込みをしておかなくちゃ、なんてことを結局考えているのだ
「そうね、もうこの辺にしておきますか…結局は私は家庭の主婦なのよね
つまらないことでも結構!不毛な仕事で結構! でも、そのお陰で日々の生活が滞りなく回っているのよ、私が細かいことに気を配っているから貴方が気持ちよく生活出来てるのよ、分かってるの?」と心の中の夫に向かって言い聞かせた
「さて、夕飯の買い物でもして行きますか…」
紗代子はいつものスーパーへ向って歩き出した
その足取りは今日一番軽ろやかに感じられた
『つまらないことでも』
ねぇ、お願い
私の目が覚めるまでに、どうか私をさらって行って…
貴方の話す言葉がすべて愛の囁きに聞こえるうちに
どんな人混みにいようと貴方だけに光が差して見えるうちに
貴方への想いに何の曇りもないうちに
あばたがエクボに見えるうちに…
貴方が白馬に乗った王子様に見えるのは
貴方の香りが私を惹きつけて止まないのは
貴方以外の人が見えないのは
すべて神様がかけてくれた「恋の魔法」のせいだから
だから、お願い
私が魔法から目が覚めぬうちに…
私をあなたのものにしてちょうだい
『私の目が覚めるまでに』