フィロ

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5/9/2024, 12:11:42 PM

その店は、人々が行き交う賑やかな通りからすこし離れた場所にあった

その店を紹介してくれた友達は「すぐに分かるから」と、地図も描いてはくれなかっが、方向音痴の私は案の定迷ってしまった

と言うのも、扱っている品物から想像するイメージとは違い、いたって普通のオフィスだったからだ
あえて、人の気を惹かないようにという意図なのだろうか


店に入ると、様々な大きさの、色々な種類のリュックサックが所狭しと並べられていて、そこには優しい文字で
「貴方に相応しい重さと形をお選びください」
「お試しになりたい方は店主まで」
と書かれた札が下がっていた

いかにもこれから山へ昇ります、という感じのリュックから、サッと肩にかけてお洒落の脇役に、というファッショナブルなものまで、客のニーズには全て応えてくれそうな品揃えに、わざわざ来た甲斐があったと安堵したが、そもそも私はこの店の商品が一体どんな物なのかを理解していなかった



私には、忘れたくても『忘れられない、思い出』があった
ずっと、ずっと、心に抱えて、これまで何とか生きてきたけれど、最近ではそのことに心を囚われている自分に嫌気がさし、何とかその思いを手放せないものかとその友達に相談したのだ

すると、その友達は
「誰にでも勧めるわけではないんだけどね
君がずっと辛そうだったことは知っているからね
きっと何かの力になると思うから、この店を訪ねてごらんよ」
と教えてくれたのだ


一応目についたリュックを手に取ってみたけれど、選び方も分からなかったので早速店主に相談した
初めてであること、友達の紹介であること、を告げた

すると店主はゆっくりと頷いて、説明を始めた


「この店のリュックサックは、あなたがこれまで背負ってきた人生そのものなんですよ
悲しさや辛さや憎しみや、手放したくても心に棲みついてなかなか離れていこうとしなかった重しの数々…」
「これだ、と思う物を試しに背負ってごらんなさい
もしそれが、あなたの物であればすぐにピン!と分かるはずです
もし、背負っても何も感じなければ、ピン!と来るまで試してみてください」

店主の話はまるでおとぎ話のようで馬鹿馬鹿しくも思ったが、その目は人を騙しているようには感じられなかったので大人しく従うことにした

いくつか手に取ってみたが、4つ目を手にした瞬間、手に電気のようなものが走った
静電気かと思ったが、背負ってみてそれがそうでは無かったことが分かった
そう!これが、「私のリュックサック」だったのだ
背負った途端、私は思わずしゃがみ込み、大声を上げて泣きじゃくってしまっていた

何が起こったのか、何故泣いているのかは全く分からなかったが、その自分を俯瞰して見ている自分の存在にも気がついていた


ひとしきり泣いた後、ふと気がつくと、さっきまで背負っていたリュックの重みが全く感じられない
背負うのに苦労するほどの重みだったのに、だ

思わず振り返ってリュックを探ろうとすると店主が近付いて来た


「それがあなたの荷物だったようですね
とうですか、少し軽くなったでしょう?

1度の来店ですつかり手放せる人もいますが、皆さん何回かはお越しになりますよ
あなたの様に涙を流す人、そのままリュックを背負って山登りに行かれる人、リュックを日常使い続ける人…
そのリュックとの向き合い方も皆さんそれぞれですよ」
「どんな人にだって、忘れられない思い出はあるものです
楽しいものや幸せなものならそのまま大切に持っていたらいいが、ご自分を苦しめる思い出は手放してしまった方がいい」


私もこれですべてが解決するとは思っていない
でも、これまで私を苦しめていた
「忘れられない思い出」
を少しは手放していかれそうな気がしている


忘れられない思い出、をめぐる不思議な体験だ

5/8/2024, 11:52:50 AM

明日のことさえ分からないのに、
1年後のことなんて…



ただ、願わくは

1日にひとつは『 いい事 』を見出だして、
1年後には、心のポケットが365個の『 いい事 』でいっぱいになってくれていたら、
と思う





『 1年後 』

5/8/2024, 12:03:41 AM

今回のお題は「初恋」ではなく、「初恋をした日」でもなく
『初恋の日』


恋をすると、今までどうと言うこともなかった日常が一変する

目に映るすべてがキラキラと輝きだし、身の回りに存在するすべてを愛おしく感じたり、
もちろん見た目もハッピーホルモンであるオキシトシンがMAXに出て生き生きと輝き、目に力が宿って、端から見ても「あの人は恋をしているな」と分かる

でも、これは若い人の話よね…


No, No, No!
そんな事はありません!

対象が人である「恋」はもちろんだけれど、
それが動物であっても、食べ物であっても
はたまた物でも経験であっても、初めての「出会い」に心がトキメけば、それは恋心と呼んでも良い気がするし、ハッピーな気持ちが湧いてくるなら十分だ

「○○推し」などと言うのが良い例だ



だから、そんな初めての出会いを積極的に楽しむ『初恋の日』なんて日があっても素敵だと思う



5/6/2024, 10:53:13 AM

『 明日世界が終わるなら…
と言うより、
明日世界が終わるとしても
の方が私にはしっくりくる


明日世界が終わるとしても、いつもと変わらない1日を過ごすだろう

というのも、私は日頃から
明日の朝必ず目を覚ますとは限らない、と思いながら過ごしているからだ


かつて、心の病で苦しんでいた最中は
「明日の朝目覚めないように…」
と、呟きながら長い夜を過ごしていた

今でこそ、そういった気持ちが沸き上がるのを抑える術を身に付けたから、上手く交わせるようにはなっているけれど、
明日への明るい気持ちを持つことは未だに、無い


だから、明日世界が終わると知ったら
きっと、深いため息と共に久しぶりの安堵感を抱くのではないだろうか…と思う


もう、頑張らなくて良いんだ… 』




姉の日記はここで終わっていた


お姉ちゃん
お姉ちゃんの居なくなったこの世界は
まだ終わることなく続いているよ…




5/6/2024, 4:30:44 AM

君と出逢ったのは約 19年前

その頃の僕は、生きることに希望を持てなくなって、その僅かな命の光さえも失いつつあった

そんなある日、まだ産まれて間もない君が僕の元へやって来た
その希望しか宿していない大きな、真っ黒な瞳に見つめられた途端、僕は一瞬で君の虜になったんだ

君のような子との生活が生まれて初めてだった僕は、その日からというもの、ただひたすらに君を立派で健康な大人にするための勉強に取り組み、君の為だけに時間を費やしてきたんだったよね

君との生活が、それまで死んだように生きていた僕の毎日を一変させ、君の喜ぶ姿を見ることが僕の生き甲斐になったんだ!
生き甲斐だよ!
どうやってこの世界とお別れしよう、ということしか頭の中に無かった僕に、生き甲斐が出来たんだよ!


君との毎日は、それはそれは楽しいものだったね
君の為なら僕は何だって出来たし、君が怪我をしたり病気をした時は、僕の体の一部を分けてあげると本気で考えていたよ



そんな君との生活は、ちょうど17年を迎えた時、君は虹の橋を渡って行ってしまったんだ…

この僕をひとり残して…



ここでは、君とのことをもっともっと綴りたかったけれど、
僕の心の灯が消えてから2年
それは、君のことを語るにはとても短すぎるようだね

溢れる涙が止まらなくて、もうこの先を綴ることが出来なそうだよ…



でも、いつかきっと君との時間をしっかりと記して残すからね


今でも君を思わない日は無いよ



僕の最高のバディの愛犬へ




『君と出逢って』






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