フィロ

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5/1/2024, 11:06:36 AM

人生は良くキャンバスに例えられる

「人それぞれに将来をを思い描きながら生きていく」ことからなのだろう
私自身、人生の折り返し地点を過ぎ、実に様々な画をそこに描いてきたように思う

若い頃にはその色が相応しいかも分からずに、ただ見栄えの良さや、トレンドや勢いに任せて好き勝手に夢を散りばめた画ばかりを塗り重ねていた

試行錯誤を繰り返したかなり厚みの増したそのキャンバス地に、ナイフを当てて削ってみれば、きっとこれまで塗り重ねられてきた思い出の数々が色鮮やかに(カラフルに)浮き上がって来るに違いない


しかし、これから私が描いていくだろう画には、それまでのような色彩はもはや使われないかも知れない
以前の様に手当たり次第に描いたり、新しい色を次から次へと試したりする時間もエネルギーももうかつてほど残されてはいないし、その必要も無いのだ

これまで塗り重ねてきた経験が、自分に相応しい色や描き方をすでに教えてくれている

あとは、これからの時間で今までで一番の傑作を仕上げていくのだろう

その完成がどのくらい先になるかは分からないが、
願わくは、その画が「しあわせ」という色でカラフルに彩られて描かれていて欲しいと思う





フィロ



4/30/2024, 11:08:14 AM

「あなたを楽園にお連れします」

というメッセージが目に留まり、早速応募してみた

ほどなく、当選通知が届いた
封筒の中には、ホテルの名が書かれた紙切れと、その部屋のカードキーが同封されていた

指定されたそのホテルは無人で、すべての説明はスマホに順次送られてくる

単なる好奇心で応募したものの、余計な思考を挟ませる隙を与えないスピード感ですべてが進み、1体これは何?と疑問を持つことすら忘れていた

不思議なほどスムーズに、夢でも見ているかの様にまるで現実感は無かったが、すでに体は私の意思を全く反映させず、ただスマホに送られてくる案内通りに動き、気がつくと指定の部屋に着いていた

もちろんここに至るまで誰にも出くわしていないことにも、ようやくその時気づいた

部屋はこれと言った特色のない普通の部屋だったが、ベッドはとても寝心地が良さそうだった
ただ、テレビや鏡が無いことは少し気になった

次の指示がスマホに届いた

「これから1週間ここでお好きな様にお過ごしください
必要なものがあれば、どんなものでもお届け致します
その間の費用は一切かかりません
但し、途中でこの部屋から出た場合はすべての費用が発生します

注) 人、テレビ、鏡 はお届け出来ません

尚、これよりスマホの使用も出来なくなります
指定の箱に入れて、ドアの前に置いてください
お帰りの際にお返し致します

これより指示やご要望はお部屋の電話をお使いください 」

とあった

とんでもないことに巻き込まれたかも知れない!と、一瞬血の気がひいたが、ここまで来たら最後まで楽園とやらを楽しませてもらおうじゃないの、と半ば諦めの気持ちでベッドに腰を下ろした

でも、こんなところに閉じ込められることのどこが楽園なのか…

すると、ベッドサイドのテーブルにそっと置かれた封筒が目に入った

「ようこそ楽園へ

貴方の毎日は幸せですか?
あなたの心に影を落とす、悲しみや、焦りや、憎しみや、ひがみや、劣等感はどこから来るのでしょう…

それは、他者との比較から生まれるのです

もし、比べるものが無ければ、自分が優れているのか、劣っているのか、上なのか、下なのか分からないし、考える意味すら無くなるのです

ですから、ここで過ごす時間は誰とも接することなく、目からも耳からも情報を入れることなく、自分の姿さえ見ずに過ごしていただくのです

ようこそ、幸せの時間、楽園へ」







フィロ

4/29/2024, 11:13:24 AM

うわ~!もっと右、右! おっとっと!

はぁ~、危なかったぁ~
もうちよっとで、欠伸してる猫さんの口の 中に着地するところだったよ~

あ、こんにちは!
僕はタンポポの綿毛のフワットです
今ちょうど、お気に入りの風をつかまえて、その風にのってここに無事に到着したところです

僕らタンポポの綿毛の運命はまさに風次第
うま~く風を見極めて、タイミング良くエイッ!て風に乗せてもらうことが大事なんだ

その風はどこから来てどこに行きそうか…
どんな匂いか…
どんな色合いか…
それらをよ~く観察して、そして何より僕自身がどこへ行きたいか

もちろん、行き先は風次第なんだけど、すべてを風任せにしていちゃあいけない
自分の意思で自分の運命は切り開く!ていう意気込みが大事なんだよ

たかがタンポポの綿毛だけどね

でもね、僕らにだって志はあるんだよ






フィロ

4/28/2024, 9:42:58 PM

その男は、ある日突然店にふらっとやって来た
表に貼られた求人広告を見たらしい

「3ヵ月だけ働きたい」と言う

見るからにやる気の無さそうな、掴み所の無さそうな、まるで生気を感じさせない雰囲気が、かえって強烈な個性となって彼を包んでいた

私のポリシーからはおよそかけ離れた彼を、今までの私なら
「ごめんなさ、丁度決まったところなの」
とやんわり断っていただろう

でも、ひょろっと背の高い彼に見下ろされ、その顔の半分は覆っていそうな前髪の奥にある彼のその瞳に強く惹かれるものがあった

色彩をほぼ感じさせない暗い瞳だったが、どこまでも澄み渡るようなその眼差しが私の嘘を見透かしているようで、私は言葉を詰まらせた

次の瞬間頭とは真逆の言葉が口を突いて出た
「今日から働いて」


この瞬間、私と彼との激しい刹那的な恋が始まっていた






フィロ

4/28/2024, 12:56:20 AM

「生きる」ことに、そもそも意味なんて無い

生きることに、意味を見出だしたがるのは人間だけだ

動物たちは、過去を悔いることもなく
未來を憂うこともなく、
ただ、その一瞬一瞬を懸命にただ生きている

2度と訪れない、その一瞬を


そのひとつひとつに燃やした点の集まりがが、振り返ると線になり歩いてきた軌跡となる
その軌跡がそれぞれの命の意味を持たせることになるのかも知れない


だから、「生きる意味とは?」
ではなく
この一瞬が意味を持つかもしれない、と丁寧に命を実感することだ






フィロ

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