「あなたを楽園にお連れします」
というメッセージが目に留まり、早速応募してみた
ほどなく、当選通知が届いた
封筒の中には、ホテルの名が書かれた紙切れと、その部屋のカードキーが同封されていた
指定されたそのホテルは無人で、すべての説明はスマホに順次送られてくる
単なる好奇心で応募したものの、余計な思考を挟ませる隙を与えないスピード感ですべてが進み、1体これは何?と疑問を持つことすら忘れていた
不思議なほどスムーズに、夢でも見ているかの様にまるで現実感は無かったが、すでに体は私の意思を全く反映させず、ただスマホに送られてくる案内通りに動き、気がつくと指定の部屋に着いていた
もちろんここに至るまで誰にも出くわしていないことにも、ようやくその時気づいた
部屋はこれと言った特色のない普通の部屋だったが、ベッドはとても寝心地が良さそうだった
ただ、テレビや鏡が無いことは少し気になった
次の指示がスマホに届いた
「これから1週間ここでお好きな様にお過ごしください
必要なものがあれば、どんなものでもお届け致します
その間の費用は一切かかりません
但し、途中でこの部屋から出た場合はすべての費用が発生します
注) 人、テレビ、鏡 はお届け出来ません
尚、これよりスマホの使用も出来なくなります
指定の箱に入れて、ドアの前に置いてください
お帰りの際にお返し致します
これより指示やご要望はお部屋の電話をお使いください 」
とあった
とんでもないことに巻き込まれたかも知れない!と、一瞬血の気がひいたが、ここまで来たら最後まで楽園とやらを楽しませてもらおうじゃないの、と半ば諦めの気持ちでベッドに腰を下ろした
でも、こんなところに閉じ込められることのどこが楽園なのか…
すると、ベッドサイドのテーブルにそっと置かれた封筒が目に入った
「ようこそ楽園へ
貴方の毎日は幸せですか?
あなたの心に影を落とす、悲しみや、焦りや、憎しみや、ひがみや、劣等感はどこから来るのでしょう…
それは、他者との比較から生まれるのです
もし、比べるものが無ければ、自分が優れているのか、劣っているのか、上なのか、下なのか分からないし、考える意味すら無くなるのです
ですから、ここで過ごす時間は誰とも接することなく、目からも耳からも情報を入れることなく、自分の姿さえ見ずに過ごしていただくのです
ようこそ、幸せの時間、楽園へ」
フィロ
4/30/2024, 11:08:14 AM