【雨の香り、涙の後】
「先輩…泣いてますか?」
『うるさい馬鹿。泣いてない』
「…すみません。俺…」
『別に、お前がその人と幸せになれれば』
『私はそれで…満足だよ』
私は後輩に振られた。
『好きな人がいるんなら、仕方ない…か』
1人での帰り道、そうポツンと呟いた。
『私が、幸せにしてあげたかったぁ…』
空気が雨で生臭い。
今日が雨で良かったのかもしれない。
そんな天気の日のお話。
【系】
今日、彼と電話をした。
これからについて、ちゃんと話したかったから。
連絡の頻度も減って、9月過ぎても会えないと分かった。
彼はまだ、私のことを好きなんだろうか。
はっきりさせたかった。
話した結果、
まだ私の事を好いている、
連絡の頻度も見直してくれるとのこと。
この先どうなるか分からないけど、
貴方との赤い糸が切れませんように。
そんな私のお話。
【届かないのに】
この世は無慈悲だ。
私のこの想いは、死んだ妻にすら届かないのか。
天に手を伸ばそうと、叫ぼうと、
妻に届いているか分からないのに。
この世は無慈悲だ。
私の返事は、決して貴方に届くはずないの。
見えてるよ、聞こえてるよって声をあげても、
貴方に聞こえるはずないのに。
そんな夫婦のお話。
【記憶の地図】
「ここをみぎにまがって」
「つぎはここをひだりでしょ?」
「あとはまーっすぐいったら…」
「ほら!ここぼくのおうち!」
『わぁー!おうちおっきいね!!』
「でしょ?」
「ぼくにあいたくなったら、いつでもきてね!」
『わかった!!ありがとう!!』
幼少期の頃の記憶を頼りに、
15年ぶりに君の家を探す。
幼稚園を卒園してから、会っていない君。
でも何故かずっと頭から離れない君。
もう、声すら覚えているか曖昧だけど
君なら私だって、分かってくれる。
そんなお話。
【マグカップ】
今日は2人でデートする日。
ちょうど記念日だった事もあり、
お互いプレゼントを用意して向かった。
甘党な彼に、私は手作りのケーキを。
彼から貰ったのは、私の好きなキャラのマグカップ。
使うのがもったいなくて、
最初は、人形を入れて飾った。
次は、ペン立てに。
そして今は、スープや飲み物を入れて。
ガラス製だから、主に使うのは冬かな?
家族にも使われたくないから
自分の部屋にいつも置いてる。
私だけのプレゼント。
そんなお話。