〜いろんなお話〜

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7/4/2025, 3:17:50 PM

【青い風】

「あっつーい!!」

『ちゃんと水飲んでる?』

「飲んでるよーーけど暑いのーー」

プール掃除中、彼女はそう嘆く。

「…あ、そうだ」

ニヤリと笑って何処かへ行ってしまった。

(何してるんだか)

ブラシで床を磨く。

次の瞬間、

背中にバッサァ!と水がかかった。

『冷た!!!!』

後ろを振り返ると、ホースを持った彼女がいた。

「えへへ、やり〜」

『…やったなー!?』

俺もバケツを持って参戦する。

お互い子供みたいにキャーキャー叫ぶ。

プールも空も、一面青に染め上がった気がした。

そんな夏の日のお話。

7/3/2025, 1:41:23 PM

【遠くへ行きたい】

「ねぇ待ってよ」

『離して、もう見たくもない』

「俺が悪かった。俺変わるから」

『…私は』

『嫌な事だって怖かったけどちゃんと伝えた』

『そう言う不満は誰にだってあると思うから』

『その事にちゃんと向き合って話し合って欲しかった』

『俺だって、お前だって、ばっかり』

『言い訳じゃなくて、改善しようとは思わなかった?』

『好きだから我慢してきたけど』

『昔の想い出が、私の気持ちを押し込めてたみたい』

『残念だけど』

『私の事を大事にしてくれない人には用は無いの』

『どれだけ伝えても話しても、向き合ってくれなかった』

『男って、気づくのが今更すぎるのよね』

『一刻も早く、貴方のことを忘れたい』

そんな女のお話。

7/2/2025, 11:00:51 AM

【クリスタル】

「綺麗…」

ガラスケース越しにうっとりする男性客。

『いかがなさいましたか?』

「ああ、すみません」

「このネックレスがとても綺麗で…」

彼が見ていたのは、アメジストのネックレスらしい。

『どなたかにプレゼントなさるんですか?』

「…はい。彼女の誕生日のお祝いにいいなって」

「まぁ、あと半年先ですけど…」

へにゃっと彼は笑う。

「出来たらでいいんですけど…」

「僕が買いに来るまで取っておくことって…」

『可能ですよ』

半年前から悩んで決めたプレゼントなんて、

彼女さんはきっと喜んでくれるはずです。

思わずそう言いたくなった。

そんな場面のお話。

7/1/2025, 12:35:30 PM

【夏の匂い】

登校中の湿度高めの生臭い空気の匂い。

学校の付けたてクーラーのカビっぽい匂い。

体育後の汗と制汗剤の混ざった教室の匂い。

虫除けスプレーのツンとした匂い。

夏は嫌な匂いが多い。

けど

放課後、皆んなで寄った海の潮の匂い。

この匂いだけはなんか好きなんだよね。

そんな思い出のお話。

6/30/2025, 12:46:55 PM

【カーテン】

「結婚式にはやっぱりドレスよね」

「真っ白い綺麗なウエディングドレス」

『着てみたいの?』

「着せてくれるんでしょ?」

『…もちろん』

私がそう言うと、彼女はふふっと笑った。

正直、確証は無かった。

この世の中が、私たちの事を受け入れてくれるのか。

白いレースのカーテンに身を包む彼女の姿が、

私には恋しくて痛くてたまらなかった。

そんな2人のお話。

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