【どうしてこの世界は】
私の世界は暗闇が広がっている。
人間としての機能で使えるのは
聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
私は目が見えない。
この事を聞いた人は、皆口を揃えて
「可哀想」と言う。
この事を聞いた人は、皆揃って
「助けになるから」と言う。
私は普通の人より可哀想な存在らしい。
普通の人に助けてもらわなきゃ何も出来ないみたい。
そんな自己暗示を他人から擦り込まれる日々。
この世界は私にとって、
あまりにも窮屈だった。
そんな思いを持つ子のお話。
【君と歩いた道】
放課後、用事があった私を
彼はいつも教室で待ってくれていた。
電車があるからそろそろ帰ろう。と、
皆んなが荷物を持ち始める中
「もうちょっとだけ居たい」
彼は私にだけそう呟く。
結局教室に2人だけ残って、
7.8時ぐらいまで沢山話して、
暗い線路沿いの道を、手を繋いで歩く。
寒い日はポケットの中で繋いだり、
誰も見えないところでキスをしたり。
この道は思い出が多すぎて
当分1人では歩けないなぁ。
そんなあの頃に戻りたい子のお話。
【夢見る少女のように】
大人になったら、おっきいお城に住む!
可愛いピンクのお部屋にして、
可愛いワンピースいっぱい着て、
可愛いわんちゃんと一緒に暮らす!
朝ごはんは毎日パンケーキ食べて、
お外で本読んだり、
あ、髪の毛クルクルにしてお姫様みたいにする!
その為に今から伸ばしておかないとなぁ
ママとパパが許してくれるかわからないけど…
いいなぁ
僕もこの絵本のお姫様みたいに、可愛くなれたらな。
そんな少年のお話。
【さあ行こう】
「さぁ!僕の手を取って!」
『ダメよ!落ちて怪我しちゃうわ』
「大丈夫!僕を信じて!」
『うぅ………』
『……えい!!!』
少女は少年の手を掴み、勢いよく窓から飛び降りた。
少女の身体は、重力を無視し空中に浮いた。
「ほら、僕の言った通りだろ?」
少年は明るく微笑み、少女は優しく笑った。
2人は風の様に、滑らかに飛んだ。
子供の2人なら、
きっと何処へだって、飛んでいけるだろう。
そんな2人のお話。
【水たまりに映る空】
「あ、やっと晴れた」
私は刺していた傘を閉じる。
「よかった、お花濡れちゃダメになっちゃうもんね」
今私は友達の居る病院にお見舞いに行く途中だ。
「…確かこの館の7階だったよね」
高く聳え立つ建物を見上げる。
ぴちゃ、ぴちゃ、
水たまりを踏みながら歩く。
ふと、水たまりの反射した世界に目を奪われた。
そこには空中に浮かぶ空が映っていた。
「え」
私の戸惑いを覆い被すように
ドシャッと鈍い音が前の方で聞こえた。
そんな空くんのお話。