【まだ続く物語】
「思えば…楽しい人生だったなぁ…」
白いベッドの上で呟いた。
愛する家族、妻、娘、友人。
沢山の想い出が男の頭を駆け巡る。
「これが…走馬灯ってやつなのか…」
「ちょっと終わるには早すぎるけど…」
「家族に見守られながら終わるのも…悪くない…」
手探りで言葉を並べて呟く男を
妻と娘は優しく見ていた。
ーーーーーーーーーー
『はーい!お疲れ様でしたー!』
突然の大きな声で男は目覚めた。
『いかがでしたか?チュートリアルの方は』
混乱する男を置き去りに、白衣の人間は話を続ける。
『ある程度の操作方法は分かりましたでしょうか』
『ではこれから、本編をどうぞお楽しみください』
そんな男のお話。
【渡り鳥】
「明日、ほんとに行っちゃうの…?」
『…うん。ごめんな』
「ううん、事情なんでしょ?仕方ないよ」
「でも、もうちょっと一緒に居たかったな」
『俺も』
「…あぁダメだ、泣きたくなんてなかったのに…」
『…大丈夫。離れても俺ら親友だろ』
『約束する。何があっても、どれだけ忙しくても、』
『年に一回はお前に会いに行く。必ず』
「…分かった。僕、待ってるね」
そんな渡り鳥みたいな君のお話。
【さらさら】
そう言えば、今の空めっちゃ綺麗だよ。
んー、ここからじゃよく分かんない。
なにが綺麗だったの?
ほし。これが天の川って言うやつなのかな。
しらなーい。私そう言うのはわかんないよ笑
のってるんじゃない?ネットとかに。
おー、めっちゃ綺麗…流れてるみたい。
話聞いてないな…。
。ま、いっか。
【これで最後】
「ほら、お姉ちゃんにばいばいしようね」
『なんで?ばいばいなの?』
「そう、お姉ちゃんにはもう会えなくなっちゃうの」
『とおくにいっちゃうの?』
「体はここだけど、心はもうお空に行っちゃったの」
『ふーん』
その後、父がお姉ちゃんの体に蓋をした。
父の顔は汗と涙でいっぱいで、
母の身体は微かに震えていたのを覚えている。
『おねえちゃんはここでおねんねするの?』
「そうよ」
『だったらぼくがおねえちゃんをおこしてあげる!』
その瞬間、お姉ちゃんを埋める父の手が止まった。
母も血相を変えている。
そんな純粋無垢で何も知らない僕のお話。
【君の名前を呼んだ日】
人の名前を呼ぶ時って、どんな時だろうか。
自分に気づいてもらう時?
自分をちゃんと見てもらう時?
話す相手を限定する時?
抽象的だけど、まだまだいっぱいあると思う。
名前を呼んだ人は、その人と向き合おうとしている。
けど、呼ばれた人はそんな事しなくてもいいみたい。
だって何度読んでも、何度叫んでも、
あの日、君は立ち止まって振り向いてくれなかった。
私の何がダメだったのかな。
そんな呼び止める為に君の名前を呼んだ私のお話。