【やさしい雨音】
「あれ、もうこんな時間…」
ふと、勉強する手を止めて顔を上げる。
没頭し過ぎて、いつの間にか空が暗くなっていた。
「そろそろ家に帰らなきゃ…」
荷物をまとめて図書館を出る。
街灯を頼りにしばらく歩いていると、
ポツ、ポツ、と雨が降ってきた。
「げ…傘持ってないんだけどなぁ」
走り出した私に雨が降りかかる。
少しほてった私の顔を、冷たい雨が冷やしてくれる。
街は静かで、歩くたびに水の跳ねる音が聞こえる。
パチャ、ポツ、ザバ、ピチャ、
響き渡る雨音。
私の足はいつの間にか、走るのをやめていた。
「雨は嫌いなんだけどな…」
そんなちょっぴり嘘をついた私のお話。
【歌】
僕は歌が好きだ。
辛い時、落ち込んでいる時、
唯一味方になって慰めてくれる。
ドライブ中は、一緒になって盛り上がる。
気分によって、いろんな歌を聞く。
歌は、その時に欲しい言葉をメロディに乗せてくれる。
1人で、2人で、皆んなで、
あの時こんな歌聴いたな〜
今日は一緒に歌って忘れちゃお!
そんなふうに記憶になって、想い出になって、
ゆっくり、着実に、僕の人生に絡んでくる。
いつの間にか、とても身近な物になっている。
そんな歌が好きな僕のお話。
【そっと包み込んで】
「ねーねー」
『ん?』
「そっち行って、一緒に寝てもいい?」
『しょうがないなぁ、おいで』
「えへへ、やった〜」
彼の隣に寝転び、目を見つめた。
『どうしたの?』
「んーん、なんでもない」
顔を布団に埋めながら、彼の腕を腰に回した。
「寒いからこうして寝たい、」
『じゃあもうちょっとこっちおいで』
彼のしっかりした腕が私の身体を引き寄せる。
そっと包んで、でも離さなくて。
さりげない幸せを感じられた。
そんな私の彼氏のお話。
【昨日と違う私】
遠距離恋愛して1ヶ月経った。
遠距離といっても、県を一つ跨ぐだけだ。
でも彼は大学やバイトで忙しくって、
夏休み1日も会えないらしい。
初めの頃はビックリするぐらい愛してくれた。
けど今は彼からLINEが一切来ない。
私にお疲れ様も言ってくれない。
忙しいからだよね。冷めてないよね。
私ばっかりLINE送っちゃってさ。
「今日はもう送らなくていいや」
離れているからこそしたいLINEを、送らなかった。
意地を張った訳じゃない。
彼からのLINEを待ってるだけなのに。
そんな私のお話。
【Sunrise】
1月1日。私の誕生日。
その日の日の出だけは、特別なの。
山の隙間から光り輝く太陽を見た時、
私はこの世に産まれたと実感する。
「誕生日おめでとう」
世界がそう言ってくれてる様な気がして、
この日の出は私の為にある様な気がして、
この世の誰よりも、この日の出を大事にしている。
そんな私の誕生日のお話。