【やさしい雨音】
「あれ、もうこんな時間…」
ふと、勉強する手を止めて顔を上げる。
没頭し過ぎて、いつの間にか空が暗くなっていた。
「そろそろ家に帰らなきゃ…」
荷物をまとめて図書館を出る。
街灯を頼りにしばらく歩いていると、
ポツ、ポツ、と雨が降ってきた。
「げ…傘持ってないんだけどなぁ」
走り出した私に雨が降りかかる。
少しほてった私の顔を、冷たい雨が冷やしてくれる。
街は静かで、歩くたびに水の跳ねる音が聞こえる。
パチャ、ポツ、ザバ、ピチャ、
響き渡る雨音。
私の足はいつの間にか、走るのをやめていた。
「雨は嫌いなんだけどな…」
そんなちょっぴり嘘をついた私のお話。
5/25/2025, 12:09:22 PM