まさに今だよ。
他人の予定がずっと割り込んでて、
割を食った実用の用事がいつまでも消せなくて、
安い楽しみでやらなきゃいけないことの時間潰して、
立ち止まりたいのに立ち止まれないでいる。
【やるせない気持ち】
契約により、彼の記憶は拭い去られた。
何も覚えていないのではない。
なかったことになったのだ。
いや、彼にとってもこの時間にとっても、それは起こったことではない。起きることもない。
完全な消失。
だから、彼の反応も当然なのだ。
『若い身空で通うようなところではないよ』
『君は聖職ではないのだろう? どうして――』
『祓魔の術は浄化ではない、均すだけなんだ。……君は賢いからわかっているはずだよ、姑息な手段にすぎないと』
それでも
それでも
どれほどあなたに訝しがられても、
『育ての親にもらったのです』
――頭の中まで、手放せはしない。
【いつまでも捨てられないもの】
満月の日には、お月さまの路ができるよ
岸からさらに果まで、白く長くたゆめく
たぷたぷ たぱたぱ
魚がひょいとはねて
船はため息のように汽笛を鳴らす
【夜の海】
始まりは愛しさだけが満ちていた。
心の器に。
何も混ざらないくらいに。
裏切り。
傲慢。
無理解。
食い違いに、見当違いの「優しさ」。
一滴、一滴、落とされては溶けて、愛は空しさに変わっていく。
歪んだプライド。
ままならない現実。
焦熱を吐く支配欲。
……反応を早めるとも知らずに。
「――! ――……!」
ああ、もう音にもならない。
【終点】
上手くいかなくたっていい。
割り切れると、笑みすら浮かんだ。
処刑はできない。
追放はままならない。
相手が最高権力者だろうと、ううん、最高権力者だからできないこともある。
そうなるように動いてきたんだから。
「お前はなんと悪逆非道を重ねてきたのか! このような者を今の地位に留めるなど、国家の罪というものだ!」
今日もなんてありきたりな言い回し。
さあ、最後の茶番を楽しんでやりましょうか!