mizuki

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12/19/2024, 4:31:01 PM

「寂しさ」


去年は、あなたと一緒に見ていたのにね。
今年は、1人だ。

「来年も、一緒に来ようね。」
そう、約束したのに結局来ることは無かった。
イルミネーションはあたたかい光なのに、私の心は冷たく凍っているようだ。

イルミネーションから背を向け、一人歩き出したところに、小さな公園を見つけた。
「なんだか、寂しいな。」
そう思うと、涙が出てきた。

去年の今は、幸せな時を過ごしていた。
ねぇ、あなたはどこに行ったの?
そんなに苦しかったの?
なんで、頼ってくれなかったの?

そう、私の友人は自ら命をたった。
あの日から、私の心の時間は止まったままだ。

明日も、明後日も、1年後もずっと一緒にいると思っていたのに。
そんなのは約束された未来じゃなくて、ただの私の願望である。

小さい頃から家が近くて、姉妹のようにずっと一緒だった私たち。だけど、今は私の隣にはいないあなた。

もし、あなたにもう一度だけ会えるなら、私はなんて声をかけるのだろう。
分からない。だけど、寂しくても歩いていかなければならない。
それが、私の使命。

12/15/2024, 2:51:46 PM

「いつになったら、ここから出られるかな」
雪を見ながら、青白い顔をした彼女はそう言った。
去年の今頃は、一緒に遊んでたのにね。
来年は、一緒に遊べるといいね。
そう、約束したのに。


「あなたの余命は、持ってあと…」
私は、余命宣告を受けた。
原因は、癌。前々から体調の悪さは感じていたけど、大したことないと思っていた。だけど、この前道で倒れて救急車で運ばれた。

「やっほ〜!調子はどう?」
「うん。いまいちかな。」
「なんかあった?元気ないけど。」
そう言うと、彼女は突然泣き出した。そして、彼女から聞いた言葉にショックを受けた。本当は、泣きたかったけど、辛いのは彼女の方だから、我慢した。初雪が降った今日、彼女の死へのカウントダウンがはじまった。

「なんで、私なのかな?私まだ高校生だよ。まだまだやりたいこと沢山あったのに。」
彼女の言葉に、何も返すことができなかった。何か言ったところで、彼女を苦しめるだけだと思ったから。

でも、彼女はやっぱり強かった。
「来年、一緒に雪を見ようよ。」
彼女はそう言った。そんなこと無理な確率の方が高いのに、彼女は言った。
「うん。約束ね。」
それから雪を待つ日々が始まった。

数ヶ月後…
彼女はお空へ行った。
結局、約束は守れなかった。
だけど、彼女は言ってくれた。

「一緒に雪を見ようね。離れた場所にいても、心は繋がっているから。1年後も10年後も。約束だよ。」と。

12/10/2024, 10:26:42 AM

「おっはよー!」
大声で俺に話しかけてくるのは、やつしかいない。
いつも元気で馬鹿で…、誰よりも仲間想いだ。
落ち込んでいる奴が入れば元気づけていて、1人のやつがいればすかさず輪の中に入れてくれて。

前に、なんでそんなに周りに優しくできるのかを聞いたら、小さい頃にいじめられていて辛い経験をしたらしい。

だけど、そんなあいつにも一つだけ欠点がある。
それは…

「一生のお願い。勉強教えてくれ。次のテストで1科目でも赤点だったら、俺、留年なんだ。」

そう、勉強が大の苦手。

でも、あいつを見ていると、勉強よりも大切なことを沢山気付かされる。勉強は出来なくても、常に誠実な心を持って、仲間を大切にする。それが人が生きていく上でいちばん大切なことなんだと思う。

12/8/2024, 6:52:58 PM

「ありがとう」「ごめんね」
その言葉だけを最後に残して、彼女は星になった。

彼女は、勉強ができて可愛くて真面目で努力家で、いつも笑顔で…。
まるで、物語の主人公のような人だった。
みんなが憧れるような人で、多分、彼女のことを嫌いな人はいないと思う。だからこそ、彼女の心の叫びをみんな知ろうとしない。いや、気づいていても知らないフリをする。

きっと、心の中ではみんな気づいていたはず。
彼女が無理していたこと。我慢していたこと。

ある日の放課後、誰もいない教室で泣いている彼女を見た。きっと今までもこうして一人で抱えて、泣いていたんだと思う。

みんなの前では笑顔でも、心は限界だったんだと思う。

それは突然だった。
冬、雪の降った日、屋上で授業をサボっていたら、屋上のドアが開いた。最初は先生だと思って隠れていたが、ちょっと覗いて見たら、先生ではなく彼女だった。だけど、そこにはいつもの彼女の笑顔はなく、何かから開放されたような、そんな顔をしていた。一歩ずつ一歩ずつ歩く度に、泣きそうな、でも嬉しそうな、そんな雰囲気を出しながら歩いていた。

その様子を隠れながら見ていた。あと一歩踏み出したら…。そう思ったら、いてもたってもいられずに彼女の元へ走っていった。腕を掴んだ途端、驚いたような顔をしてこっちを見た彼女。だけど、すぐに目線を元に戻して、
「ありがとう」そして「ごめんね」
そう言って一歩を踏み出した。

絶対に行かせない、そう思って腕を最後まで掴んでいたけど、ついに限界を迎えた。

彼女は星になった。
いつも誰かを支えていた彼女は、誰にも支えてもらうことが出来ずに…。
大人になった時、彼女がいた事を覚えている人は、どのくらいいるのだろう。

この世界は、不公平だ。そう思ったらなんだか、涙が出てきて止まらなかった。


彼女が居なくなったのは、冬の寒い日だったはずなのに、時間は止まることなく、あの日から10年もたった。彼女のように、一人で抱える人が少なくなるように、今はカウンセラーとして働いている。

カウンセリング室の扉が開いた。そこには、彼女そっくりの笑顔をした少女がいた。外では笑顔でも、心の中はきっと笑顔ではないのだろう。この少女をしっかりと支える。それが今できること。彼女のように星にならないために。

12/6/2024, 2:43:37 PM

砂時計を逆さまにすると、新たな時間が始まる。
それが全部落ちると、また逆さまにして新たな時間を作る。
そうやって時間が過ぎていく。

過ぎていく時間の中で、私は何ができたのだろう。いや、これから何ができるのだろう。
そんなこと誰にも分からない。

だけど、きっと楽しいこと、つらいこと、悩むこと、落ち込むこと、
色々な感情を持ちながら時の流れを感じるのだろう。

逆さまにした砂時計。過ぎていく時間。
砂時計を逆さまにした私は、過去の自分を背負いながら歩いていく。

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