ほんの出来心だったんだ。
「どーこ。どーこ。」
俺は布団の向こう側から女の声を聞く度、非日常のスリルを味わいたかった彼女と二人で噂の心霊スポットへ肝試しした事を後悔していた。
ごめんなさい。ごめんなさい。
「……。」
必死に心の中で懺悔する俺の願いが届いたのか、女の声が近くでやんだ。良かった助かったようだ。
ホッと胸をなでおろすと、ふと視界が少し月明かりで明るくなった。
「みいーつけた。」
「あ、あ、本…当においていってごめんなさい。」
《スリル》
わたしはあなたと向き合うタイミングをずっと探している。
照れくさくて、勇気がないからあなたの背中に寄りかかるのが精一杯。
あなたの顔が見たくて頭だけふりかえると、わたしの耳があなたの背中に当たった。
ああ、わたしの音とおんなじだ。
少し勇気が出た気がする。
《あなたとわたし》
自分の思いは一生届かないと思っていた。
赤く頬を染めて笑う君の背中ばかり見つめては、いつも自分を誤魔化してきた。
君の視線の先に嫉妬して、噛みついて。笑顔の君が見たいのに泣かせて、矛盾してばかり自分に何度も嫌になった。
けど今の君は後ろを向いて涙を流している。俯いた視線を上げれば、自分と目が合う。
ああ、ズルいな。
君が振り向いてくれた今、どうしようもなく期待してしまう。
《一筋の光》
アフタヌーンティーの時間に合わせてメイドが紅茶を入れている。
ポッドに注がれる湯から湯気と共にダージリン特有の甘い香りが私の鼻を掠める。
私は紅茶の香りが嫌いだ。
この甘い匂いは私に厳しい令嬢教育の過去を思い出させる。
美しいウエストを維持する為に肋骨が変形するまで巻くコルセット。
主人となる男を立てる為に与えられる知識は女の自立に役立たない。
飲食のマナーの時間には、いつもこの紅茶を出されていた。
「ご主人さま、アフタヌーンティーです。」
「ありがとう。」
私はカップの取っ手を摘み、鼻先に近づけより香りを堪能する。
私は負けない。
不敵な笑みを浮かべて私は紅茶を飲み干した。
《紅茶の香り》
テーマ《愛言葉》
「愛してます。…
そう言う俺に困った笑顔で答える貴方。
分かっている。
俺は今でも貴方の心に居続ける彼には勝てない。
自分がどんなに頑張っても綺麗な思い出には一生勝てない。
だけど勝てなくていい。
だって俺は彼が心にいる貴方が好きになったんだから。
だから俺は最後にこの言葉を言うんだ。
…貴方の最後までずっと一緒です。」
これが俺の愛の言葉。
mixエース